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第四章【託された希望】再会を信じて

結界までは、急いでも10日は掛かる。来た道を戻るのだから正確の筈だ。


(抜け穴に幻術を掛けてたから、時間稼ぎが出来たんだよな······)


銅谷京之介が来たのは、自分達より遅かったが、出せる速度が違う事と、目的地が判ってる事で比較が出来ない。


(直ぐに見つけられたのか? 奴らは一度抜けて来てるから、発見するのは容易だよな)


「彰、何か考え事?」


黒街彰は考え事に夢中で、自分の世界に入っていると、舘浦喜助に心配を掛けていた。


「あぁ、ビャヌさんが結界を抜けて、こっちに来てる可能性ってあるのかなって。行き違いになったら嫌だと思ってさ」


黒街彰と舘浦喜助が会話をしながら歩いていると、ミクレリア・ピグが2人に質問してきた。


「ねぇねぇ、ビャヌさんとは連絡とれないの? 皆は魔導具で連絡とってるじゃない」


「ん? そうだ、あるじゃないか。翔太っ、ビャヌさんと連絡出来る魔導具あったよな?」


北の扉で、時坂純也が北の面々と五ノ扉の鍵を手に入れる為に探索した時だ。その時に、高ランクの連絡用魔導具を預かっていたのだ。


皆、一年は立っていないと思うが、随分と使っていなかった事で忘れていた。


「あっ、これかっ。繋がるかな?」


起動するのが、少し恐いと感じる。それでも、時坂翔太が勇気を出して起動させる。


「······繋がったけど、出ない」


「ビャヌさんの異界に仕舞ってるからかな、翔太、異界に入れてたら気付くのか?」


黒街彰の問には答えられず、試してみる事になった。だが、低ランクの連絡用魔導具だと繋がらないのだ。


「判らないか、それじゃ魔導具は出しておこう。それと、魔石の消費が激しい筈だから、一日2回、短時間だけ繋げようか?」


ミクレリア・ピグのお陰で大事な事に気付いたが、期待だけでダ・ビャヌと会話する事は叶わなかった。


✩✫✩✫✩


ダ・ビャヌと郷倉未知瑠、銅谷京之介から逃げ出した後の2人は、悲しみに暮れているだけではなかった。


「追って来ませんでしたね······」


闘いから逃げ出し、遠く距離を離す事が出来ると、一度立ち止まって色々と考える。


時坂純也の事は、悲しい事実であったが、此れから起きる事も耐え難いものだろう······


ダ・ビャヌと郷倉未知瑠の2人が、あの場から去るとどうなるのか、考えるだけでも恐ろしい結末が待っているのだ。


(出来る事と出来ない事があるんです。そうですよね、尊様······)


「翔太、何処へ、助け、に行く」


ダ・ビャヌは、息子との再会で頭がいっぱいの様子だ。郷倉未知瑠は、自分がしっかりしなくては生き残れないと、弱気な自分を圧し殺した。


「ビャヌさん、先ずは私達が生き残る事です。私も愛の事が心配ですけど、信じましょう。彼等も優秀な探索者なんですから」


何とかダ・ビャヌを説得出来たが、どう行動する事が最善なのか、全くもって思いつかない。考え事をしている内に、日が暮れ始めた。


「今日は休みましょう、私も色々と考えてみますが、ビャヌさんもいい案があったら教えてくださいね」


(西の扉から来たなら、此処には中央の扉があるかもしれませんね······中央じゃなくても、扉はある筈ですが、それを探す事に納得して貰わないと······)


他にも色々と考えた事はある。西の扉を見つけて強行突破する事や、敵を1人捕まえて情報を聞き出す事、ファリアンス・レミアノが扉と共に突然現れ、全てが解決する。そんな事も、頭に過ぎる。


時坂翔太との合流は、居場所が判らないと難しい。可能性があるとしたら、敵の跡を付け、敵と同じ道を行く事になるのだ。


夜が明け始める、郷倉未知瑠がどんな決断をしたのかをダ・ビャヌと共有しなければならない。


「一度戦場へと戻ってみましょうか、翔太くんの居場所もそちらの方面でしょうから······」


色々と悩んだ結果、ダ・ビャヌが納得する行動を選択した郷倉未知瑠。


朝ご飯を少し食べ、出発する。数時間掛けて戻って来た戦場は、とても直視出来るものではなかった。


食べた食事が逆流し、口の中に嫌な味が拡がってくる。


「ビャヌさん、時間が出来たら埋めてあげましょうか······」


ダ・ビャヌは、時坂純也の亡骸へと足を進めていた。左手に嵌っている指輪を取り、郷倉未知瑠へ願いを口にした。


「未知瑠、凍らせて、お願い」


幾つにも別れた身体を集め、魔法で凍らせると、自身の持つ異界へと入れるのであった。


(ビャヌさん、まだ諦めてないのですね。そうですね、最後まで諦めずに進みましょう)


「向かうならば、あちら。奴らが来た方角です、どうします?」


郷倉未知瑠が指差す方角を見て、ダ・ビャヌは頷き、そして歩き出した。


少し進むと、遠くに人影が見える。そして、今は会いたくなかった、銅谷京之介の姿が目に入った。


(まさか、まだ此処に居るなんて、思ってもみませんでしたよ······)


郷倉未知瑠は足を止めたが、同じ様に止まる筈の姿が、隣にはない。


(ビャヌさん? どうする気ですか)


ダ・ビャヌの後ろ姿を見ると、昨日とは違う気迫を感じる。


(やる気なんですか、しょうがないですね。私も付き合いますよ)


一度冷静になり、改めて惨劇を見た事で怒り以上の感情が揺さぶられていた。生き残る事も大切であったが、それ以上に大切な物があるのだ。


「あれ? 戻って来たんですか。僕達がこんな所に居るのも悪いんだけど、近寄って来る事はないんじゃないかな」


銅谷京之介は2人に興味はない。自身の目的の為に、動いているだけだ。


それなのに、向かって来た2人が手負いの獣に似た気迫で迫ってくる。昨日とは違い、一筋縄ではいかないと察していた。


「仇討ち、違う。息子、守る」


ダ・ビャヌの下した決断は、銅谷京之介を時坂翔太と会わせない事。自身の命と引き換えにしてでも、銅谷京之介を道連れにする気であった。


「私も、一緒に命を賭けますよ。覚悟してくださいね」


一度戦闘が終わった後だ、銅谷京之介は熱が冷めている。対して、昨日よりも高く、最高潮に気持ちは仕上がっているのだ、気迫では確実に上回っていた。


そして闘いが開始されると、上回ってるのが気迫だけではない事が証明される。数回打ち合うと、ダ・ビャヌの槍が、銅谷京之介の肩に突き刺さっているのだった。


此処で動いたのは、佐久間仁であった。銅谷京之介とダ・ビャヌの間に炎を割り込ませる。


「ちょっと待ってくれ、もう殺し合うのは辞めにしてくれないか······」


距離をとった両者に、暫しの沈黙が訪れる。


「京之介は、本当に悪い奴って訳じゃないんだ。さっき息子を守るって言ったよな? 手を出さないって約束する、俺の命を賭けてもいいから。なっ、京之介もそれでいいだろ?」


佐久間仁が必死に説得しようとするのは、銅谷京之介が傷を負ったからではない。相手の2人を心配してだ。


疲れと、気持ちで負けている今だから傷を負っただけで、桜井小夜の魔法もある。闘いが続けば、勝敗が何方に微笑むのか佐久間仁でも理解していた。


現に、会話をしている内に傷は塞がっているのだ。ダ・ビャヌの命と引き換えでも、銅谷京之介には届かないだろう。


「何故貴方が止めるのですか? 敵を今の内に倒しておくのも、賢い選択ですよ」


佐久間仁の命を狙った敵、郷倉未知瑠はまさに敵なのだ。


「そっちを侮ってる訳じゃないけど、京之介は強いし小夜が居れば無敵みたいなもんだ。結果が見えてるのに······」


佐久間仁の優しさに、銅谷京之介は心が休まる気がする、仲間に迎えて良かった、そう思いながら口を開いた。


「良し解った。交渉と行こうじゃないか? 息子くんに会ったら、こっちに戻るように言ってあげる。その代わり、仁を狙うのは無し。仁を自由にしてあげてよ」


(信じて良いか解りませんが、この交渉に乗る方が翔太くんにとって一番良いでしょうね。ねぇビャヌさん)


郷倉未知瑠がダ・ビャヌの肩に手を触れ、頷くとダ・ビャヌから出た言葉は「解った、交渉、お願いする······でも」「許さない」であった。


「私からも条件があります、佐久間さんを自由にするのは、翔太くんと無事に再会出来たらにしましょう。本当に叶ったら、私の命を賭けて尊様に懇願する事は約束します」


佐久間仁のお陰で、殺し合いをせずに済む。きっと、一番良い選択が出来たと佐久間仁も胸をなでおろした。


その場を離れたダ・ビャヌと郷倉未知瑠は、惨劇が起きた現場へと足を運ぶ。


一緒に過ごした時間は長くはないが、守ってあげられなかった無念を悔やみ、弔いをする。その後は、息子達の無事を祈り、再会を信じて待つ事にするのであった。



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