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第三章【異世界からの願い】当たり前の時間

少年の姿を見た瞬間、黒街彰が視線を変える。視線の先には、手に持っている宝玉が輝いていた。


(あの人は、時坂さんと闘って居たのに······)


頭の回転が早い黒街彰は、それがどうゆう事なのかを瞬時に思い付く。思いついた考えが間違っている事を願って、まだ効果も判らない宝玉を自身に取り込むのであった。


「お、おい、彰くん。あいつは······」


「さ、最悪の結果を覚悟しなくちゃいけないかもしれない······でも、それでも、諦めない。諦めませんよ」


その場から動かないのは、銅谷京之介からも此方を見られていたからだ。もし見られていなくとも、2人は身体が上手く動かなかった可能性もあった······


銅谷京之介が現れるとゆう事は、それだけ衝撃的だったのだ。


「やぁやぁ、その顔は見た事あるよ。僕に刺された異世界人だよね? それと、一緒に居るのは黒街くんだったかな」


普通に話し掛けて来た銅谷京之介だったが、衣服はボロボロで激しい闘いの跡が伺える。


「俺の事、知ってるんですね······」


「勿論だよ。僕も放送は見ていたからね、有名人なんだよ君は。あぁ話は変わるけど、少し前までちょっと熱くなり過ぎちゃっててさ、人質が欲しかったのに異世界人を皆殺しにしてしまったんだ。隣の人を貰っても良いかな?」


銅谷京之介は少し興奮しているのか、段々と早口になっいく。その話は、とても許容出来る内容ではない。聞いていた2人は、許容どころか意味を理解するのに時間を要する内容であった。


「ふ、ふざけるなっ。仲間をどうしたか、もう一回言ってみろっ」


ビグラウト・テラネウスは、我に返ると刀を構えて怒りを露わにする。ずっと冷静にと、自分を抑えていたその意志は、もう何処かに消え去ってしまった。


「安心しなよ、君は殺さない。人質にしたいと思ってるからね」


銅谷京之介が喋り終わる前には、刀が振られていた。速さを武器にしているビグラウト・テラネウスの、限界を超えた一閃が放たれる。


ビグラウト・テラネウスの刀が到達する頃には、銅谷京之介の姿が自身の後ろにある。そこまでの差があるのかと、だが諦めないと振り向く。


『諦めない』その思考を最後に、ビグラウト・テラネウスは意識を失った。


「おっと、人質は大事にしないとな」


倒れ始めたビグラウト・テラネウスを、優しく抱える銅谷京之介。人質を腕の中に抱え、黒街彰に質問をし始めた。


「君達以外に2人、いや3人か、此処に居た筈何だけど。知ってるかい?」


「お、俺達が来た時は、此処には銀色の大きな人しか居なかったけど······」


「ディグだけ? ふ〜ん······」


カブラル・ディグしか居なかったと聞くと、その理由を考え始める。黒街彰の話が真実だと疑わないのは、残りの2人が居なくなる可能性も銅谷京之介の中にあったからだ。


「あ、あの、時坂さんは、時坂さんはどうしたんですかっ?」


「あぁ、そりゃ聞きたいよな。あの人は強かった。純粋に一対一で闘ったら、僕よりも強かったんじゃないかな······」


銅谷京之介は、此処に来る前までの死闘を思い返していた。其れを黒街彰に話し始める······


✩✫✩✫✩


もう既に、何日か前の話になる。3箇所に別れた闘いが、それぞれ結末を迎えようとしていた。


クレイス・ファーナと創真晴人、この2人の闘いは、強力な魔法と多彩な魔法が衝突し合う、魔法の撃ち合いから始まった。


出会い頭から、クレイス・ファーナは炎の玉を連続して撃ち、仕留めに掛かっていた。


それに対する創真晴人の魔法は、土魔法から始まった。向かってくる炎の玉と同じ数の土塊を創り出すと、炎の玉を撃ち落とす。


その勢いのままに、得意技を繰り出していく。土魔法で創り出した土塊を特殊スキル性質変化で水球に変えて撃ち出していく。


今度は、クレイス・ファーナが撃ち落としていく番になる。大小様々な水球が、止めどなく向かってくる。


その水球は、大きさだけではなく速度もまちまちなのであった。


(此奴、妾に魔法の撃ち合いを挑んできておるのか······)


クレイス・ファーナの考えた事は間違いであった。創真晴人の得意技は、この後に本領を発揮するのだ。


水球の大きさが、大きい物だけになり、速度は全てを最速で発射させる。流石のクレイス・ファーナも、急激な変化に対応が少しだけ遅れてしまった。


正面からきた水球も、真上からきた水球も、炎で蒸発せずに残った水分が石へと性質が変化したのだ。


水の飛沫ならダメージなど無い筈が、石が降り注ぐ事によって攻撃力を増すのであったのだが。


(あれ? あんまり効果がなさそうだな······)


クレイス・ファーナは、変化に気付くと自身の尾で石を全て払ってみせた。


闘う相手が剣などであったならば、斬った水球は、鋭利な石の塊となって襲いかかるのだが、相手が炎を使うと効果が薄いのだと、創真晴人は、今回始めて知ったのであった。


(此奴、面白い技を使うようじゃな。だかのう、小細工で妾の炎に勝てると思うでないぞ)


続いて放たれる水球は、一段回火力を上げた炎で蒸発させ、今度は距離を詰めて行く。クレイス・ファーナは接近戦も人並み以上には闘えるのだ。


創真晴人は、クレイス・ファーナが近づいてくると、炎の熱と圧力に押されている自分に気付く。その圧力に負けたかのように、風魔法で距離を保った。


竜巻や突風を駆使してクレイス・ファーナの接近を阻む。最初は距離を保てていたが、クレイス・ファーナが慣れてくると、鉄扇で風魔法を斬り裂くとゆう芸当を見せられる。


そして、一気に距離を詰められた。


クレイス・ファーナと創真晴人の距離が、接触するまであと一歩程になると、今度は光魔法を使って時間を稼ぐ。


(此れって、ただの目眩ましなんだよな。次はどうするか······)


✩✫✩✫✩


創真晴人が押されていると同様に、銅谷京之介も時坂純也に押されていた。


(あ〜ぁ、普通に闘ってたら突破出来ないのかな······)


時坂純也の二重に張られた魔力膜を崩す事が出来ない事と、動きを制御されて一方的にダメージを与えられている事。


そんな状況が長く続いている事に、最強の名よりも目的を優先させるべきかと考える。


(あっちも対策してるよな、でもペースを変えなきゃ始まらないよね)


銅谷京之介がやろうとしている事は、結界内に居る異世界人への攻撃だ。目的も含まれるが、今のまま一対一で集中させるよりも、注意を分散させた方が勝機が高くなる。そう判断したのであった。


最初に結界を破った時と同様、突っ込んで行き刀を突き刺す。そして、最大の電撃を放ってみる。


(ちっ、やっぱり対策してるか······二重にでもしてるのかな?)


結界を破るのは一枚が精一杯の様で、中に居る人間へは電撃が届いていないのが見える。


「俺が相手だと言った筈だぞっ」


時坂純也が銅谷京之介に追いつくと、又も蹴り飛ばして自分を見る様に仕向けていた。


向かって来ると思ったが、銅谷京之介は結界の周りを回り始めた。其れを追う時坂純也、まるで鬼ごっこが始まったみたいだ。


銅谷京之介が加速する、最大の速度に達すると刀を結界に当てる。すると、結界に亀裂が入り硝子の様に亀裂が拡がっていく。


(くっ、あいつは好き勝手動かしたら駄目だっ。動きを予測しろ······)


時坂純也は、追いかけても追いつく事が出来ない事は判ってた。やらなければならないのは、動きを止める事だとゆう事も判ってはいる。


亀裂が結界全体に拡がると、一瞬視界が奪われ互いに見失う。其れは一瞬で、結界は砕け散ったのだが······


考えた事の違いが優劣を左右した、時坂純也は、一枚目の結界が破られ二枚目も破られれば危険だと仲間の事を心配する。


銅谷京之介は標的を変更し、即座に時坂純也へと向かっていたのだ。


時坂純也は、余りの速度に近づくまで気が付く事さえ出来なかった。それも、気付いたきっかけは視覚ではなく、嗅覚であった。


銅谷京之介も、こんな速度まで達したのは初めてで、肉体が耐えられなくなり皮膚が焼けていたのだ。それでも、しっかりと狙いを定め刀を振るう······先程まで届かなかった刀を、届ける為に限界を超えて。


その刀は、時坂純也の腕を奪っていく。それでも止まらない銅谷京之介は、切り離された腕を細切りにしていく。


此処で一旦動きが止まった。銅谷京之介も限界がきたのだ、桜井小夜が掛けた回復魔法も追いつかないほどダメージが蓄積し、命まで燃やし始めたからだ。


全身黒焦げの銅谷京之介と、片腕を失くした時坂純也が睨み合う。


少しづつ黒く焦げた皮膚が肌色を取り戻す。其れを見た時坂純也が、攻勢に出た。


(こいつ正気じゃない、俺も命を賭ける覚悟をしなくちゃ勝てないな······)


相手の命を削り切る様に、攻撃を繰り返す。この時の銅谷京之介は、防戦に徹するしか出来なかった。止まった後は、ダメージの深刻さに意識まで持っていかれそうだったのだ。


それでも致命傷だけは避けるのが、強者としての誇りだったのか、身体は動いてくれる。


だが、運命はこの時に決まってしまった。時坂純也が攻撃に魔力を絶え間なく使うと、魔力切れを起こしてしまったのだ。


その隙を見逃さないのも、銅谷京之介が強者であったからだ。瞳に力が戻り、意識まではっきりとしていく。


全身に電撃を纏い、刀が何度も振られていく。


動きを阻害される事が無い刀は、何度目かに一枚目の魔力膜を斬り裂き、更に二枚目も斬り裂く。


(翔太を、ビャヌ······翔太を頼む)


その後は直ぐに、時坂純也の命を斬り裂いてしまうのであった。


「あぁぁ、はぁはぁ。僕の勝ちだっ」


✩✫✩✫✩


この少し後に、悲劇は続いてしまう······


「ぐっ、貴様······」


悲痛な声を発しているのは、ディガルド・グリザハルだ。


それは、クレイス・ファーナと創真晴人の闘いを見守りながら、身体を休めていた時であった。


「悪りぃな、少しは手柄を上げとかねぇと、後で立場が悪くなっちまいそうだからよ」


戦線から離脱したかと思われていたフォンス・カーリルが、時坂純也の最後を見て動き出したのだ。


フォンス・カーリルは、全体の動きを見ながら、自分がどうするかを考えていた。特に銅谷京之介の勝敗でこの場が、この先が変化するだろうと、より注目をしていたのだ。


「貴様まだ居ったのかっ、絶対に、ゆ、許さぬぞっ······」


クレイス・ファーナが言葉を発した時には、ディガルド・グリザハルの首元に黒い鎌が当てられ、もう命は消える寸前であった。


そして、命を奪った黒い鎌を消し去ると、影に潜りまた戦線から去ろうと動き出す。


「僕は休憩させて貰うから、好きに追ったらいいよ」


創真晴人は、押し付けられた仕返しなのか、クレイス・ファーナに自由に行動する様に言う。


そして、クレイス・ファーナは追って行く。罪を重ねた復讐の相手、フォンス・カーリルを今度こそは逃さないと······


✩✫✩✫✩


「······純也」


胸が痛む······突如として、悪い予感がダ・ビャヌに襲いかかった。


郷倉未知瑠のサポートに徹し、佐久間仁を自由に動かさない事がダ・ビャヌの役目であった。現在まで、2人の連携は上手く機能し、決定打に欠ける物の有利に闘いを進めていたのだ。


(ビャヌさん? 何かがあったのですかね)


援護が途切れた事に気付くと、郷倉未知瑠はダ・ビャヌを気に掛け、少し距離をとって様子を見る為に振り向いた。


ダ・ビャヌは、別の方向を向いていた。そして何も告げる事無く、何処かへ向かって動き出す姿が視界に入る。


(向かったのは、時坂さんが闘っていた方角ですね。まさか、時坂さんの身になにか······)


桜井小夜と佐久間仁の2人を相手に、此処で足止めしても良い。2人を同時に相手出来る自信はあった。だが、ダ・ビャヌを1人にする方が危険だとゆう予感が郷倉未知瑠に別の選択肢を与えていた。


少しでもと、氷魔法を足止めに使い、ダ・ビャヌの後を追って行くと······銅谷京之介に斬り掛かるダ・ビャヌの姿と、時坂純也の無惨な姿が視界に入った。


(時坂さんが······不味い、ですね)


激戦を終えた銅谷京之介は、襲いかかってきたダ・ビャヌを軽くあしらう。


唯の斬撃は、時坂純也に比べると物足りない。今は反撃すら、する気にならない程に満足していた。


郷倉未知瑠が後ろを振り向くと、桜井小夜と佐久間仁が追って来ているのが判る。更にもう一人、創真晴人までもが合流を果たして向かって来ていた。


止めどなく剣を振るうダ・ビャヌを、無理やり抱え相手から距離を取ると、今は撤退しかないと説得を始めた。


「今は逃げましょう、戦況が悪すぎます。相手は4人です、時坂さんが勝てなかった相手も居る、残念ながら勝ち目はありません」


「闘う、未知瑠、1人、行け」


「駄目です。ビャヌさんは、まだ助ける相手が居るでしょう。翔太くんが······」


郷倉未知瑠は、結界内に時坂翔太や黒街彰の姿が無い事に気付き、説得の材料に使う。


「······翔太、何処へ」


「黒街さん達も居ないので、レミアノさんを救出しに向かったのでしょう。ビャヌさん、まだ諦める訳にはいきません」


息子を救う為に、この場から撤退する事を決意すると、急ぎ敵が居ない方向へと走り始める。


ダ・ビャヌと時坂純也、2人が共に過ごした時間は200年近くに達している。この長い時間、当たり前の様に一緒に居た時間はもう返って来ないのだ。


半身を失った悲しみは、ダ・ビャヌにゆっくりと近づいてくる。走り去る跡には、涙が光を反射して煌めいているのだった。


その姿を、銅谷京之介は見つめるだけで動く事はしない。仲間と合流した後も「ほっとけばいいよ」この一言で済ますと、復讐の為に動き出す······


✩✫✩✫✩


銅谷京之介が語った真実は、素直に信じる事を脳が拒否していた。とても、直ぐに受け入れられる内容ではないのだ······


立ち尽くし、言葉に詰まる黒街彰の横を、誰かが横切った。


話を聞いて居たのは、黒街彰だけではない。仲間達も聞いていたのだ、ビグラウト・テラネウスが捕らわれたのを見て、幻術を使い距離を詰める。そう距離を詰めた事で、会話を聞く事が出来たのであった。


「キミの気持ちは良く判るよ、僕も母様を殺されているからね」


飛び出して来たのは時坂翔太だ、父の仇をとる事だけが、頭の中を巡っていた。


時坂翔太の思いを汲んだのだろう、双剣の一本が、銅谷京之介の腹部へと突き刺さっていた。


「僕と違うのは、キミのが強くて勇気があるってことかな。其れは、父親の血だろうね······時坂さん、キミの父親は強かったよ。僕よりも強かったけど、優しくて真っ直ぐだったから······覚悟が上回っていた僕が生き残ったんだろうね」


銅谷京之介は、悲しみと覚悟を含んだ言葉で語り掛ける。時坂翔太の思いを受け止め、もう次に進む事を考えていた。


時坂翔太の返事など関係なく、言葉を発する前に意識を刈り取る。そして腹部から剣を抜き取ると、来た道へと戻ろうとして······


「あっ、黒街くん。地球へ帰るなら西の扉は止めたほうがいい、他にも方法はきっとあるから、諦めないでね」


銅谷京之介が、一言残して去って行く。黒街彰は、その後ろ姿を見て、何も出来ずに立ち尽くしていた。


ファリアンス・レミアノの願いは叶えられず、更なる不幸を呼び寄せる結果となってしまった。


家族を失い、悲しみに暮れる。それでも『アリスフール』に残された黒街彰は、立ち止まる事も許されず、前に進まなければならないのであった。

此れにて、第三章は完結になります。


三章は、物語が大きく動く展開になりましたが、楽しんで頂けたでしょうか?


未だに感想を頂けてないので、今なら初感想ゲットのチャンスですよ······


第四章の投稿は、少し時間を貰う事になります、詳しくは作者マイページから活動報告をご覧ください。


此処まで読んでくださった皆様、有難う御座います。引き続き、読んで頂けると嬉しく思います。



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