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第三章【異世界からの願い】強敵と相性

ビグラウト・テラネウスが近づき、声を掛けると、カブラル・ディグが立ち上がった。


瓦礫に腰掛ける様も、生前の威厳を放っていたが、立ち上がった姿はビグラウト・テラネウスの足を止める程に威圧感を放っている。


3メートルの巨体に強靭な肉体、銀色に光が反射している姿にビグラウト・テラネウスは、足を止めるに留まらず、膝をつきそうになる程であった。


(おいっ俺、怖気づいてんじゃねぇよ)


自分を鼓舞していると、カブラル・ディグが口を開いた。


「誰だてめぇは? 先ずは名乗るのが礼儀だって、教わらなかったか」


「申し分ない、俺はビグラウト・テラネウスです。あの、人を捜しているのですが······」


(どう見てもただの人だな、てことは女を捜しに来たって所か。あの小僧がこいつ等にやられたって事はねぇだろうし、別口か?)


カブラル・ディグは、銅谷京之介の実力だけは高く評価していた。目の前に居るビグラウト・テラネウスは少し震えているのだ、こんな男に負ける訳がないと判断していた。


「捜してるのは女か?」


「はい、背丈の小さい少女なんですが、ご存知ですか?」


「多分な、俺が思っている人物と同一人物なんだろうよ。そうなると、俺はてめぇの敵って事になるぞ」


「そ、其れは、どうゆう事だ······」


敵とゆう言葉がカブラル・ディグから出た瞬間、全員に緊張が走る。そして何時でも動き出せる様に態勢を整えていく。


「先に手を組んだ奴らが居てな。嫌な奴だが、てめぇみたいな雑魚じゃねぇ。俺様の野望を叶えるには力が必要だ、だから悪く思うなよ」


カブラル・ディグは喋り終わると、突然ビグラウト・テラネウスへ襲いかかってきた。


3メートルの巨体から振り下ろされる拳、気迫と圧力は凄かったが、ビグラウト・テラネウスは余裕を持って躱していく。


そして、ビグラウト・テラネウスが居た場所に拳が突き刺さると、大きなクレーターが出来るのだった。


「おっ、何だ思ったよりやるじゃねぇか。楽しませてくれそうだな」


黒街彰は、立ち上がり一歩踏み出した位置で踏み止まっていた。他の皆も同じ感じで止まったのは、ビグラウト・テラネウスが余裕を持って躱せたからだ。


速さで言えば、ビグラウト・テラネウスが他の仲間より大分上なのだ。飛び出せば足でまといになる可能性がある。折角闘いに参戦するなら、助けになるか、奇襲を成功させるぐらいの効果は見せたい。


「凄いパワーですね、もう会話をする気はないんですか?」


「俺にいい話が出来るのか? 出来ねぇだろうが、それじゃ話す必要はねぇって事なんだよ」


カブラル・ディグが暴れ出すと、ビグラウト・テラネウスに当たる事はなかったが、周囲が破壊されていく。


ビグラウト・テラネウスも今度は避けるだけで終わらず、反撃もしていたが銀色の体毛が斬撃を全て弾いていた。


「ちょこまかと、最近の人間は速さに優れた人種ばかりかよ」


カブラル・ディグが苛立つのは、銅谷京之介の時も速さで圧倒されたからだ。度重なる素速い相手が苛立ちの原因であった。


(一撃でも貰ったら終わりだけど、黒い靄を操る奴に比べたらまだマシだ。この速さなら、俺と翔太も参戦出来そうか?)


黒街彰は、今闘って居る相手は、ガブロの上位交換の様に考えていた。


まだ闘い始めて序盤な事から、その判断に自信は持てなかったが、闘い方を想定出来るのは有り難かった。


黒街彰が考えてる間も、カブラル・ディグの攻撃はとどまる事を知らず続いている。全て躱しているビグラウト・テラネウスだったが、何故か口から血が流れていた。


(風圧か、それとも他の何かがあるのか······)


ビグラウト・テラネウスの動きが少し止まると、その隙をカブラル・ディグが逃す筈もなく襲いかかる。


カブラル・ディグが拳を振り上げると、瞳に衝撃が走り、更に左右から人影が現れる。


「こいつの攻撃は、魔力を纏っている時があるみたいだ、躱す時はぎりぎりだと危ないかもしれないっ」


黒街彰が飛び出しながら、気が付いた事を皆に伝える為に叫ぶ。


「なんだ、なんだ、他にもこんなに居やがったのか」


瞳を擦っているカブラル・ディグを、3人で取り囲む。因みに三日月愛の風魔法、突く様な風で瞳を狙い撃ちしたのだ。だが、距離が離れていた事もあり、瞳を潰す事は出来なかった。


(ふぅ〜、集中だ。あの時みたいに、簡単にやられるなよ)


フォンス・カーリルにやられてしまった事を思い出し、気合を入れ直して立ち向かう。明らかな強敵を必ず倒すと意気込んで。


黒街彰が最初に仕掛けた。距離を縮めた瞬間にカブラル・ディグの拳が襲ってくるが、それを躱してみせる。だが、躱した位置は結局ぎりぎりだ。自分で言った様に、余裕を持って躱す事は速度的に出来なかった。


それでも、まだ引かない。二度、三度と躱してみせる。四度目は、拳に魔力が纏っていた。其れは、篭手でガードしながら避ける事で耐えたのだった。


(時折魔力を纏っても、俺には通用しないぞ。威力は今迄見た中で一番高いかもしれないけど、当たらなければ何とかなる)


速度もカブラル・ディグの方が速く、一対一では勝てる要素は何処にもない。


現状、渡り合えているのは、魔力感知のスキルに、相手の動きを読む事が得意な黒街彰にとっては相性の良い相手だったのだ。


(俺が中心で囮をやろう、何度か翔太とテラさんが攻撃してくれた後がチャンスだぞ)


五度、六度、七度と躱している間に、時坂翔太もビグラウト・テラネウスも攻撃を仕掛けては、弾かれる。背中は特に銀の体毛に隙がなく、防御が高いのだけは判るのだった。


「攻撃力が高いだけでは、俺に当たらないぞ」


周りも気にしているカブラル・ディグに、あえて挑発して注意を惹いてみる。


「てめぇこそ、避けてるだけじゃ勝てないんじゃねぇのか、おっ」


八度目は、フェイントを混ぜての攻撃であった。やっと工夫する気なったのかと、黒街彰も絶妙な気分だ。


身体の動きから、フェイントは見抜いていたが、威力が下がった事とフェイントに引っかかった様に見せる為に篭手で受ける。


この判断は、成功とはいかなかった。篭手で受けた一瞬で身体ごと吹き飛ばされ、石柱へおもいきり衝突してしまった。


(不味いっ、ククノ頼む)


カブラル・ディグに、時坂翔太とビグラウト・テラネウスが攻撃を仕掛けるが、物ともせずに黒街彰へ向かって来ている。1人ずつとどめを刺していく気の様だ。


(癒やしの薬を飲まないと······)


石柱にぶつかったダメージもそうだが、篭手のしたにあった腕は、骨が砕けてしまった。


突如出現した蔦が、カブラル・ディグの両足に絡みつく。それに反応出来ずに、盛大に転んでくれた。


「んだこりゃっ、あぁ、うっとおしい」


蔦を、手で簡単に引きちぎる。それでも、命を繋ぐ時間が出来た事は黒街彰を救っていた。


まだ戦闘に参戦していないのは、館浦喜助とディガルド・フィオル、それとプロテラス・ガディとミクレリア・ピグの4人だ。あと三日月愛を含めた5人が作戦を立てていた。


この中で高い威力の攻撃が出来るのは、ディガルド・フィオルだ。ガブロ戦の様に攻撃を当てる為、黒街彰の闘いを見て、攻撃の隙を狙ってはいたが、距離がネックなのだ。


「彰くんの後ろへ移動しよっか? 幻術で姿を隠すから、近づいて来たらチャンスだよ」


性格からなのか、カブラル・ディグが闘いの中で下がらずに前に出続けるのだ。そうなると、黒街彰の後ろで控えているのが一番チャンスが巡ってくると考えたのであった。


ゆっくりと、後ろへ移動する。その間も戦闘が再会されており、またも黒街彰がぎりぎりで躱して凌いでいた。


(攻撃が激しくなってきたな、やばい躱すのも限界かも······)


早く何か手を打たないと保たない、そう考えていると、景色に違和感を覚える。薄っすらと、魔力が混ざる景色に変わっていってるのだ。


(後ろに回ってくれてる? それなら、仲間に合わせればいいだけだな······)


大振りの魔力が纏った拳を避けると、その瞬間。黒街彰から見たカブラル・ディグの視線が、上へ動き、更に首ごと上に向かっていった。


上空には、ジャンに掴まれた舘浦喜助が突如として現れたのだ。


その間に、幻術で姿を隠しながら近づいて来たディガルド・フィオルが、黒街彰の背中へとそっと手で触れた。


幻術の中で、ディガルド・フィオルの身体が変化していく。手には大きく鋭い爪が現れ、踏み込む足も爪が地面に刺さる程に踏ん張っている。更に身体中から熱気が放たれていた。


舘浦喜助が空から落ちて来ると、同時に黒街彰が一歩下がる。黒街彰が一歩下がったのは、ディガルド・フィオルに場所を譲る、それと助走をとる為だ。


カブラル・ディグが、舘浦喜助を迎え撃つ姿勢になった。この瞬間が最大のチャンスになる、地面を削る音と共にディガルド・フィオルが飛び出した。


狙ったのは、カブラル・ディグの首元だ。人の胴体程に太い首であったが、体毛は薄い様に思える。其処へ吸い込まれる様に、ディガルド・フィオルの爪が向かっていった。


その瞬間に、黒街彰も行動に出る。ククノには使えるだけの魔力を込めた蔦を創って貰い、カブラル・ディグの腕を拘束する。黒街彰本人は、助走をつけて高く飛び上がった。


ディガルド・フィオルの爪は、首に傷を与える事に成功し、鮮血が飛び散った。其処へ舘浦喜助が鎚矛を振り下ろすのだ。更に、ピタリと合わせて黒街彰が篭手のスキルを解放する。


攻撃は見事に決まり、結果を見守る事になる。鎚矛のスキルで爆発した煙が晴れるのを待つのだが、攻撃した3人が思った以上にダメージがある事に三日月愛が焦っていた。


煙が晴れ始めると、巨体のシルエットが現れる。まだ立っているシルエットに、戦闘が終わっていないと全員が身構えた。


動きはない、首元が露わになると皮一枚で後ろへと吊るさがっていたのだ。


そして、カブラル・ディグは立ったまま、段々と黒くなり魔力へと変わっていくのであった。


「か、勝った。でも、情報は手に出来なかったな······」


黒街彰がボソっと呟く。其処へ三日月愛が駆け寄って来た。


「彰さん、先ずは治療しましょう。って、あれ、フィオルが一番重症かな?」


ディガルド・フィオルが攻撃した際、カブラル・ディグの体毛へと触れていた。そう、触れただけで、全身を切り刻まれた姿にされていたのだ。


闘いが終わった後に、本当に恐ろしい敵であった事に気付き、身震いする。


(ははっ、本当に勝てて良かった······其れに凄い物が現れたしな)


凄い物。黒街彰が見つめる目線の先には、金の宝箱が出現しているのだ。


時坂翔太が幾つか持っている、癒やしの薬も使い傷を治すと、金の宝箱を開ける事にする。情報が手に入らず振り出しに戻ってしまったが、今だけは喜んでも鉢は当たらない。


「良し、開けるよ」


黒街彰が宝箱を開ける。こんな所で、目標の1つにあった黒街彰が特殊スキルを手に入れる、そのチャンスが巡って来た。


海野結菜と手に入れた時の事を思い出して手が震える、その手で宝箱が開かれた。


「······良しっ、宝玉だ」


黒街彰が宝玉を手で持った瞬間、プロテラス・ガディが声を荒らげた。


「だ、誰か近づいて来るぞ。ど、どうするっ?」


黒街彰が、直ぐに幻術で隠れる様に指示を出す。誰なのか判らない相手は、直ぐに此処へ来てしまう。


情報が無い今、接触する事に異論はない。とりあえず、黒街彰とビグラウト・テラネウスが2人で接触する事にする。


もうすぐ向かって来る人間が視界に映る、それを2人は固唾をのんで見守っていた。


そして、視界に映ったのは······少年が歩いて来る姿であった。

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