表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/79

第一章【旅の行方】予期せぬ大物

二ノ扉へ向かい、結菜の仇と闘う······その前に前哨戦として闘う相手を決める黒街彰。


一ノ扉に現れるモンスター、危険度Dに設定された3体、その全てと闘う事で最終調整を行う事にした。


先ずは討伐経験のある牛鬼からだ。

(前に闘った牛鬼は、上位個体だったのか?)

上位個体の可能性を考えたのは、魔力の流れが牛鬼の出現場所に集まっていたからだ。


上位個体であれば危険度Cと言ってもいいだろう、仇のブラックコングが危険度B、前哨戦には丁度良い相手だ。

出来ればと、上位個体の出現を望む黒街彰であった。


準備も万端に、一ノ扉へ入って行く、此処から7日かけて遺跡へと向う。

今回は、直ぐに牛鬼が出現するとは限らない為、食料はひと月分用意していた。


寄り道せずに遺跡へと急いだ事で5日で遺跡へとたどり着く。

(素早さが上がった効果だよな、2日も短縮出来たぞ)

遺跡へと入ると、中にはモンスターの姿があった。

(やっぱり、前回は上位個体の可能性が高いな)

これまでの経験で、上位個体の出現時には、他のモンスターの姿が居なくなるとゆう現象が起きていた。

遺跡でも他のモンスターを確認した事で、前回が上位個体だったという予想が高くなったのだ。


モンスターを倒しながら、前回出現した場所まで来た。

(う〜ん、居ないか······牛鬼自体の出現率が低めだって話だからな、しょうがないか)


一週間が立った、根気強く遺跡の中や周りでモンスターを狩りながら牛鬼の出現を待つ。


期待はしていなかったが、奥の間へ入ると、牛鬼の姿がある。

(おっと、牛鬼が居るぞ、前より一回り小さいか? 武器も一ランク下った感じだな)


黒街彰は、牛鬼に近づいて行く。前回と同じような攻撃が来ると予想していた。

予想通り、上段から叩きつけるような攻撃が来る、横向きで躱し斬撃を繰り出す。


簡単に首を落とす事に成功した。

(ふぅ、冷静に出来れば何てことはない相手になってるな······一安心だ)


黒街彰は、一度戻る事にする。

上位個体が出現するまで粘るか悩んだが、攻撃方法は解っている相手だったので、他の相手で経験を積む事を優先しようという考えに至ったのだった。


(次は、棘巨体蜂だ······)

次の相手は、最初の地点から、東に向かった先にある森で、出現が確認されていた。


扉へ戻り、一度地上へ行く。食料を補充すると、また扉の中へ入った。

ここ最近の黒街彰は、結菜を失った頃のように探索に熱が入り過ぎていた。

理由は、結菜に早く会いたいと思う気持ちが黒街彰を急かしていた。それと、人と繋がりがない事も精神を蝕む原因であろう。

時坂家族と別れてからも、他の探索者とは関わりを持っていない、信用出来る者とは何なのか判らないのだ。


目的の森へと到着すると、棘巨体蜂を探す。

見つけたのは巨体蜂であったが、かなりの数が居る、近くに巣があるのかもしれない。


討伐しながら巨体蜂が向かって来た方向へ進んで行く。

(ずっと先の方に、嫌な気配がするぞ)

魔力感知が、嫌な予感を伝えている様であった······


谷を越え、かなりの距離を進んでいくと、巨大な蜂の巣が見えてくる。

(巣の情報は何処にも書いて無かったな、女王蜂みたいなのが居るのか?)


✩✫✩✫✩


黒街彰の様子を、遠くから見ている者達が居る。


「あの小僧、こないだの奴と同じですよ。何か勘付いてるんじゃないですか?」

「牛鬼との戦闘を見た限りだが、勘付いてはないだろう。良くても、将来に期待ってだけのルーキーだったからな」


この二人は、水元家の裏組織の人間であった。

水元家とは、中央で力を持つ財閥の一つで、表の顔は、探索者の支援、異界の攻略に力を注ぐ組織として名が通っていた。


だが裏の顔は、異界を攻略する為なら非人道的な事も平気で行う。

更には国家にも顔が利く水元家は、犯罪行為も揉み消す事が出来ると噂される危険な組織であった。


「それにしても、今回はいい成果が出ましたね、あいつらで大丈夫ですか?」

「ちょっと危険かもしれないな、あの巣の中には危険度Bは潜んでいるぞ······それに、数も合わせれば危険度Aに近いかもな」


二人が行っていたのは、公には知られていない、魔吸石と名付けられた石を使った実験であった。


魔吸石とは、四ノ扉で最近になって見つかった物だ。周囲の魔力を吸い寄せる効果を持ち、限界まで魔力を取り込むと砕けてしまう。

砕けた跡には大量の魔力溜りが出来、そこから強力なモンスターが発生するというのが自然の流れであった。


水元家は、砕けた欠片を回収し、欠片から一度魔力を取り除く事を成功させたのだ。

その欠片を使った実験が、黒街彰と時坂翔太が闘った牛鬼の上位個体であった。

今回は、複数の欠片を使用した事でより強力なモンスターを発生させたのである。


✩✫✩✫✩


巣に近づくにつれて、肌がざわつくような感覚が強くなってくる。


「これは、本格的にやばいかもしれないな······こんな感覚今迄になかったぞ」

一人呟いていると、後ろから人の気配が近づいて来た。


「先に誰か居るぞっ、源治」

「ホントだね、こんにちはぁ」

「······誰、なの、邪魔するの?」

三人組のパーティーで現れたのは、水元家が育成に力を入れている、新人探索者であった。


「こっ、こんにちは、あの······此処は危険かもしれません」

黒街彰は、現れた三人が自分と歳が近い事から新人だと思い、危険だと注意をする。


「新人にはキツいだろうなっ、此処は俺様に任せておけよっ」

強気な青年は、高屋真(たかや しん)。水元家の支援で攻撃力の宝玉を取り込むアタッカー。


「一ノ扉なら負ける事はないよねぇ、僕は、鈴木源治(すずき げんじ)で〜す。宜しくねぇ」

のんびり喋る青年は、鈴木源治。水元家の支援で防御力の宝玉を取り込んでいるディフェンダー。


「邪魔しない? 邪魔じゃん? 敵じゃん??」

この頭のネジがぶっ飛んでいる女性は、吉井碧葉(よしい あおば)。水元家の支援は、魔力の宝玉と治癒魔法の宝玉。このパーティーのヒーラー役であった。


「て、敵じゃないですよ······」

(この人、怖いって······)


黒街彰達が会話をしていると、10体程の巨体蜂が襲い掛かって来た。


高屋真は、近づいた巨体蜂を、大剣の一振りで真っ二つにする。

鈴木源治は、吉井碧葉を守りながら闘っていた。


(言うだけあって、大剣使いの人は強いぞ、けど蜂の数が多くて女性を守りながらじゃ大変だよな、どうしよう?加勢したら怒りそうだけど······)

黒街彰が悩んでいる間に、鈴木源治と吉井碧葉が巨体蜂に囲まれる。

それを見て、加勢したほうが良いと判断した黒街彰は、巨体蜂に攻撃を仕掛けた。


10体の巨体蜂を討伐すると、全員此処で一息つく。此れからが本番だと、皆が気づいていた。


「碧葉ちゃ〜ん、数が多い時は攻撃してもいいんだよ、てか攻撃してよぉ」

「雑魚じゃん、魔力勿体ないし······分かる? 此の後が大変なんだって」


黒街彰の闘いを見た高屋真が声を掛ける。

「お前って一般の探索者なの?」

「一般? 俺はソロでやってますけど、あの······俺は、黒街彰といいます」

「俺は、高屋真。俺達は、水元家の探索者だからよ、所でお前いくつ?」

「20歳です、けど」

「探索者歴2年でソロか、ふ〜ん、とりあえず協力して、あの巣をぶっ壊すぞ」

高屋真は、黒街彰の実力を認めると同時に、ソロでここまで強く成れるものなのかと疑問に思ってもいた。


(なんの質問だったんだよっ? この人の横暴な感じ苦手かも······てか、この人達癖が強い)


巣の前までやって来ると、巣から蜂が出てくる。今度は棘巨体蜂3体だ。


「危険度Dが3体か、やっぱり可怪しいな。彰っ1体頼んだぞっ」

言うと棘巨体蜂に突っ込んで行く高屋真。


(何か返事しにくいんだよなぁ······まぁ目的の棘巨体蜂と闘えるから良いか)

「はいっ」

全身から生えた棘が接近を戸惑わせる、タックルを貰っただけで危険そうだ。


黒街彰は、相手の攻撃を待ってカウンターを仕掛ける。棘巨体蜂の針での攻撃を躱すと胴体を斬り落とす。


(良しっ、速さで勝ってればどうって事無いな)


黒街彰は、魔力感知が反応して空を見上げた。

上空には、一際大きい蜂の姿が見える。

そして翅を高速で動かすのが見えた瞬間であった。


「皆、避けろっ」

黒街彰は、魔力が渦巻いて向かって来る感覚を捉えて叫ぶ。


黒街彰と高屋真は、攻撃範囲から脱したが鈴木源治は、持っていた盾で吉井碧葉を守るため動けない······そして、圧縮された風を身体中で受けてしまった。


「癒やしを、ヒール」

吉井碧葉が回復魔法を唱える。

「がぁはっ、死んだかと思ったってぇ。モンスターの魔法なんて聞いてないよぉ」


いつの間にか手に弓を構え、吉井碧葉が狙いを定める。

「お返し、死ねっ」

高ランクの弓から、魔力の矢が放たれる。


現れたモンスター。その正体は、巨体蜂の王であった。人類にとっては、新種となるモンスターだ。


魔力の矢が翅を掠め、蜂の王は地面へと降り立つ事となった。そこへ高屋真が突撃する。


大剣での攻撃は、針で受け止められてしまう······だが、背後には黒街彰の姿がある。


「ここだぁっ」

胴体で細い部分に狙いを定め、両断する勢いで妖剣を振り抜く、背中の翅を切り裂き、胴体へ到着した妖剣は、金属音を立てて弾かれてしまった。

(手が痺れるっ、くそっ狙うなら腹だったか)


「いいぞっ、飛べなけりゃこっちのもんだろっ、俺が倒すぜ」

実際、空から魔法を使われる事が一番厄介であった。早々に翅を失った状態に出来たのは運が良い。


高屋真の猛攻が始まった、大剣とは思えない速度の連撃が蜂の王を襲う······だが蜂の王も負けていない、翅を失っても手や足、尻の針。それを高速で動かし連撃を防ぐ。


黒街彰も参戦する、二人の連続した攻撃に追い詰められていく。蜂の王も奥の手を使うまで来たのだろう。


魔力が高まり、蜂の王の雄叫びが真空波と共に

響き渡る。


黒街彰は、魔力の高まりを感じると「何か来るぞ、離れろっ」と叫ぶ。

だが、高屋真は、蜂の王の動きが一瞬止まった事を好機と捉え、とどめを刺す為、全力の一撃を放つ事を選択した。


高屋真は、真空波を諸にくらい血だらけであった。同時に蜂の王の脳天に直撃した大剣の一撃は、弾かれる。

だが凄まじい衝撃が脳を揺らしていた。


黒街彰は、離れた事で軽症で済んでいた。

このチャンスを活かさない訳にはいかない······そして狙いを定める。一撃で決める為に、選択した狙う部位は首の関節の隙間だ。


黒街彰の渾身の斬撃が首を目指す。阻む為に蜂の王の腕が動いた。

その動いた腕は、吉井碧葉の魔力の矢が弾き飛ばす。

そして······見事に首を刎ねる事に成功したのだった。


(良っしゃぁ、碧葉さんナイスフォローです)

「高屋さんっ、癒やしの薬を飲んで下さい」


「ぷはぁ、まだ頭がふらふらするが、傷は塞がったか······有難うな」


一息つくかと言う間に、巣から蜂の大群が現れる。蜂の王が放った雄叫びは、仲間を呼ぶものであったのだ。


「今はキツいな、皆一回固まれ」

吉井碧葉の魔力がもうない事を、分かっていた高屋真は、防御に徹する様に指示だす。鈴木源治の防御力で乗り切る作戦であった。


蜂の大群は、巨体蜂と棘巨体蜂だと気が付いた黒街彰は、逆に蜂へと向かった。速さで勝っている事は先程の戦闘で判っている。


今迄に無いほどに集中力が高まっていた、そして数時間は闘っていただろうか、黒街彰が大群の大半を倒すのであった。


「流石に終わりだよなぁ、いやぁ疲れたねぇ今回はあっきぃが居てくれて本当助かったよっ」

「はぁはぁ、此方こそです。一人じゃ命がなかったですよ」

今度こそ、一息つく事が出来るが、それよりも探索者が求める物が目の前に現れていた。


「おいっ、初めての銀だぜ······銀の宝箱」

「凄っ、これは私のじゃんっ」

「どうするのぉ、今回はパーティーじゃない、あっきぃも居るからね?」


「······ちっ、そうだな、貰えるのは、一番活躍した奴だよな。彰、今回は······お前のもんだ」

「え、いいんですか?」

「私だって活躍したじゃん、彰が要らないなら貰うって」

「うるせぇな、パーティーのリーダーは俺だぞ、俺が決めんだよっ」


(横暴な人かと思ってたけど、凄い良い人? 銀の宝箱は、初めてだな)

「有難うございます、じゃぁ早速開けますね」


銀の宝箱を開ける、中に入っていたのは二対の小さな鏡であった。


「鏡?何だろう······銀だし、特別な効果があるのかな?」

「武器じゃねぇのかよ、すげぇの期待したんだけどな」

少しの間、皆でこの鏡は何だと話したが、見当もつかなかった。

そして、少しすると解散する事になった。


「今度は俺が一番活躍するからよ、また会おうぜ」

「あっきぃは、もっと強くなってそうだよねぇ、じゃぁまたね」

「今度会うときは、フォローした礼するじゃん、じゃ」


「うん、何か、有難うございました。また会いましょう」

黒街彰は、一人でいる時間に心に暗い影が広がっていたのかもしれない······三人のお陰で心が少し晴れたような気がしていた。


(やっぱり人と関わりを持つのも大事かもしれない、結菜だったら、どうしてた?)


✩✫✩✫✩


「随分成長してるんじゃないですか? 水元家の期待の新人より強いよ、どうです? 勧誘します?」

「最初に見た時、後から合流したのは時坂だった、奴との接触は禁止されているからな······成長速度といい、関係を持っているかもしれん、勧誘はなしだ」


「それより、中々良い結果が出たじゃないか、報告書をしっかり纏めておけよ」

「は〜い、銀だったら僕も欲しかったな······それに、あの新種との戦闘も楽しそうでしたね」


(こうゆう急成長する人材は、水元家にとって害となるかもしれないな。早めに芽を摘んでおいた方が良いかもしれん)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ