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第三章【異世界からの願い】激突

時坂純也が、結界に空けられた穴を通っていく。それに続いて、他の仲間も全員が結界の穴を通り過ぎるのであった。


「まだ発見出来た訳じゃないが、一歩前進したのは確かだな。この何処かに居るのか、更に結界を通り抜けたのか、それも判らないからな。慎重に行動して行こう」


拠点にしていた水辺から、結界の穴まで移動している間に、幾つか今後の予定は話し合っていた。


それは、プロテラス・ガディの探索術が全てにおいて鍵を握っている。


ファリアンス・レミアノの捜索を優先した案でも探索術が重要になるが、拠点を探している間、安全を確保するのに探索術が必要となっていた。


先ずは、全員で拠点になりそうな場所を探す事にする。ファリアンス・レミアノを捜している間に別の人間が捕らわれてしまえば、救出の手間が増えてしまう。ましてや、他に犠牲者が出てしまっては救出成功とは言えないのだ。


今回の拠点にする場所は、抜けて来た結界から反対の位置にある結界まで行き、其処に造る予定だ。


その理由は、結界に沿って捜す予定を組んでいたので、一周回れば拠点に戻って来れるからだ。


前回の様に水辺を必要としないのは、ダ・ビャヌの異空間に、ある程度確保したのと、黒街彰のお陰で手に入れる手段が出来たからであった。


もう、どれだけ歩いたのだろうか。大人数での移動は思ったよりも時間が掛かっていた。


この日も大人数で移動しているのだが、その中で黒街彰は、仲間達の近くを歩いていた。


(あの男に会うんだよな······)


黒街彰は、フォンス・カーリルに手も足も出なかった事を考えていた。


マクリーク・フルムの回復術がなければ、命を失っていてもおかしくなかった状況を今度は変えなくてはならない。無策で挑む訳にはいかないのだ。


(速さも、力も圧倒的だった。能力だって凄かったし、多分、時坂さんレベルだよな······)


実力の差を痛感しているが、諦めないのが今の黒街彰であった。自分だけでは敵わないのならと、仲間との連携で実力の差を埋める事を考えるのだった。


(仲間を危険には晒したくはないけど、万が一の事は考えておかなくちゃな······)


この数ヶ月で、黒街彰は2つの宝玉を取り込んでいた。能力の向上は足りていないが、格上相手の連携は上達していた。


(愛ちゃんの風魔法で牽制して、俺と翔太が注意を引く。予想外の攻撃は、喜助の契約紋だな、とどめは、フィオルか······)


モンスター相手に効果的な戦法を思い浮かべていた。だが、人間相手には同じ様にはいかないだろうとイメージを広げていく。


(喜助の攻撃が一番有効だよな、ポチを出現させるタイミングが重要になりそうだ。喜助にはチャンスを活かせるように話しておこう······)


(後は、相手を自由に動かさない為に、攻撃の手は緩められないよな。速さが低い愛ちゃんと喜助は、距離をとったほうが良いか······)


「あ、彰っ、ちょっと彰ってば」


黒街彰が考え事に夢中になっている所へ、舘浦喜助が声を掛けてきた。プロテラス・ガディの探索術に、何かが引っ掛かったのだ。他の人達も、騒がしくしている······


「結界を張れ、此処で迎え撃とう」


ビクサス・ガイが指揮をとる。相手が何者か判らない状況だったが、先ずは迎え撃つ姿勢をとっていた。


「相手は5人です。ゆっくりと近づいて来てます」


プロテラス・ガディの探索術に映るのは5人。5人なら、まだ危機的状況とは思えない。此方の戦力なら互角以上に闘えると皆が思っていた。


「闘えない者は結界から出ない様にな、俺達は外で迎え撃つ、翔太も大人しくしとけよ」


時坂純也、ダ・ビャヌ、郷倉未知瑠、クレイス・ファーナ、ディガルド・グリザハル、ビクサス・ガイ、ビグラウト・テラネウスの7人が結界の外へ出て対応する。


一方、向かって来ている人間は、丘の上から歩いて来る。黒街彰達が、平原で見つかったのは運が悪かった。


✩✫✩✫✩


「時坂さんに、郷倉さんまでいるじゃないか。思ったより厄介な相手が揃ってるな」


銅谷京之介が相手を見て、一筋縄ではいかない事を悟り面倒に思う。予定では、発見次第殺戮が繰り広げられる筈だったと······


「それは地球人か? 有名な実力者って所かよ。でもな、一番つぇのはクレイス・ファーナだと思うぜ」


フォンス・カーリルが意見する。それは、過去に勝利した者とは思えない意見であった。


「確か、前世はキミのが強かったんだよね? それなら、その一番強い相手は任せるよ」


「まじかよ、時間稼ぎなら引き受けてやってもいいが、やばくなったら引くからな······」


フォンス・カーリルが、まともには闘いたく無いと思う程に、クレイス・ファーナは『アリスフール』で最強の1人であった。


「急に弱気じゃないか? まぁでも、時間稼ぎが出来るなら良いとするか」


銅谷京之介が佐久間仁の方を向くと、「どうしたい?」と問いかける。


「まさか此処にも居るなんてな、因縁の相手ってやつかよ······悔しいが、勝てないのはいい加減理解してるぜ」


「うん、再戦の期間が短過ぎるな。それじゃ小夜と組んで闘いなよ、それなら勝機はあるからさ」


「京之介、僕はどうする?」


創真晴人が問いかける。銅谷京之介がリーダーだが、他の仲間との関係は上下のない良好なものを築いていた。


「晴人には、時坂と郷倉、あとクレイス・ファーナって奴以外を相手にして貰うよ。出来るでしょ?」


「出来るって言いたいけど、相手の情報少なすぎじゃない? 僕はまださ、生きていたいんだけど······」


小高い丘を下る途中で足を止め、銅谷京之介と創真晴人の会話に参加したのは、フォンス・カーリルだった。知ってる情報と、自分の考えを話し出す。


「如何にも将軍って見た目の女が居るだろ、あれは、グリザハルって名でクレイス・ファーナの腹心の1人だ。そこそこ強いぜ」


それと、知った顔はビクサス・ガイとビグラウト・テラネウスだ。捕らわれていたのを知っているフォンス・カーリルは、大した事はない相手だと言う。


「残りは、時坂さんの奥さんかな。あの人もそれなりには強いけど、晴人なら大丈夫だよ。それと、他は人数には数えないよ、狩りの獲物みたいな存在だからね」


役割が決まると、止めた足を動かし始めた。互いが接触するまでは、後僅かである。


銅谷京之介を先頭に、会話が出来る程の距離まで近くに来ると、最初に口を開いたのは時坂純也であった。


「悪いが少し止まってくれないか。それと、何者なのか教えて欲しい」


時坂純也は、銅谷京之介達の事を知らなかった。殆どを中央の拠点で活動していたとはいえ、実力の高いパーティーを知らないのは、銅谷京之介が表に出て来なかったからだ。


「僕は、銅谷京之介だ。西で活動している探索者だよ。時坂さん、地球の人間には選択肢を与えたい、僕に協力するか敵対するかだ」


時坂純也の優しい問に対して、無茶苦茶な選択肢を突きつけた銅谷京之介。時坂純也は、返事に困ってしまう。


(あら、こんな所に佐久間仁が居るのですね。この少年が銅谷と名乗った事といい、公雄さんが言っていた組織が、姿を現したみたいですね)


郷倉未知瑠は銅谷京之介の苗字に反応を示していた。謎の多い組織に、良い印象は持っていない······この後の展開に、嫌な予感がする。


「それは、貴方達の目的にもよりますよ。話して頂けますか?」


銅谷京之介が郷倉未知瑠の問に答る為に、言葉を発しようとした瞬間、肌を焼く様な熱気を全員が感じる事になった。


「くそっ、あちぃじゃねぇかっ」


「妾の目を何度も誤魔化せると思うでないわっ、生前の借りを返してくれる」


(ちっ、すんなり見つかっちまったか。しょうがねぇ、このまま離れれば良いか······)


フォンス・カーリルが、ゆっくりと離れる素振りを見せる。もう一度影に潜ると、「逃さぬわっ」と言いながらクレイス・ファーナが炎で攻撃してきた。


(熱いんだっての、このまま着いて来やがれ)


フォンス・カーリルの目論見通り、速度を上げて離れて行くと、クレイス・ファーナは追って行くのであった。


「あいつだ。レミアノを攫ったのは、今姿を現した奴だったぞ」


ビグラウト・テラネウスがフォンス・カーリルの姿を見て興奮していた。大分時間が掛かってしまったが。やっと捜していた手掛かりに辿り着く事が出来たのだ。


「お前らは、あの男とどういった関係だ、一緒に居るって事は仲間って事だろ?」


更に、ビグラウト・テラネウスが言葉を続ける。


ファリアンス・レミアノを助けたいという想いが、この中で一番強いのは間違いなくビグラウト・テラネウスであった。なぜならば、特別な感情を抱いているのだから······


「そうだよ、最近だけど手を組んだんだ。因みに、レミアノってのは少女の姿をした異世界人かな?」


銅谷京之介の挑発とも取れる言葉を聞くと、ビグラウト・テラネウスが刀を抜いた。まだ攻撃する気はなかったが、情報を聞き出す事は絶対にしなければならないのであった。


「レミアノは返して貰う。何処に居るのか話せ、話さないなら力尽くで聞くことになるからな」


ビグラウト・テラネウスの言葉が途切れたと同時に、銅谷京之介が動き出していた。一瞬の内に、刀がビグラウト・テラネウスの腹部を貫いていた。


次に動いて居たのは、時坂純也だ。銅谷京之介に強力な蹴りをくらわせる。


銅谷京之介はしっかりとガードして、後ろへ下がった。


「良い蹴りだね。でも、その蹴りは敵対するって事で良いのかな?」


銅谷京之介の話を無視して、ビグラウト・テラネウスに結界に入る様に言う。致命傷になり得る傷だが、マクリーク・フルムが居る結界に入れば傷は元通りだ。


「敵対したのは、お前だろう。闘いたいなら俺が相手になってやるよ」


「闘いたい訳じゃないんだよ。ただ、異世界人は許さないだけだ······時坂純也、貴方みたいに楽しんでいる人間ばかりじゃないんだよ」


時坂純也に返事をしながらも、銅谷京之介は周囲の状況を見る余裕があった。


(ふ〜ん、あいつが回復役か。先ずはあいつからだな······)


銅谷京之介は考え事をして、更に言葉を続ける。


「まぁいいか。時坂純也、守り通せればお前達の勝ちだよ」


話し合いなどする余地もなく、闘いが始まろうとしていた。時坂純也と銅谷京之介、日本の実力者が激突する······

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