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第三章【異世界からの願い】共存する意識

北の地で、五ノ扉がファリアンス・レミアノの手で閉じられた頃。中央では、記憶を取り戻す為に異界へと向う女性の姿があった。


「一ノ扉じゃもう物足りないだろ、能力的にも次の段階に進めると思うぞ」


1ヶ月も立たないうちに、山岸徹が海野結菜に二ノ扉へ向う事を勧めていた。


「そうですね、自分の中で能力が一段回上がった気がしますので······」


最初の内は座学の方も行っていたが、本を読む速さが異常であった事から、直ぐに新城静の知識量を超えてしまい座学は修了となっていた。


早速、今日から二ノ扉へ向かう事にした海野結菜と山岸徹。準備も行わず扉へと入って行く。


(最近、変な声が聞こえる気がするんですよね······)


異界でモンスターを狩り始めた頃は、ノイズの様な音が頭の中に響いていたのだが、最近はノイズが小さな声なのではないかと思い始めていた。


まだ何を言っているのかまで、聞き取る事は出来なかったが、明らかに誰かが喋る声なのだと、認識出来るのだ。


「そろそろモンスターが出て来るぞ、能力的には厳しい闘いになるから、気を抜くなよ」


山岸徹が、集中していない海野結菜を見て注意をしていた。気を抜くなとは言ったが、二ノ扉で出て来るモンスターなら山岸徹が苦戦する事は有り得ない。助ける事も簡単な事からたいして心配はしていなかった。


少しすると、ブラックコングが木々の間から顔を出す。


「ほら来たぞ。こいつは案外格闘が上手いからな、足を止めるなよ」


海野結菜は「はい」と返事をしてブラックコングと向き合った。


睨み合いの時間はほんの少しだ、ブラックコングの拳が海野結菜を破壊しようと向かってくる。


(速いですね、一ノ扉で出て来るモンスターとは全然違う······)


ブラックコングの拳を躱してから、思考する。反撃はせずに、動きに慣れる事から始めていた。


(私の能力も大分上がったのが判ります。速さは互角ですか)


ブラックコングを中心にして、海野結菜は動き回る。山岸徹のアドバイスを忠実に守り、実戦している。


(何なのですかね、拳が近づく度にゾクっと背中辺りがするんですよね······)


過去の体験が魂に刻まれているのだろうか?恐怖など感じていないのに、自分の中で何かが反応を示している。


自分では解りようがないのだが、記憶を無くしても反応があるのは、過去を魂が覚えているのかもしれない。その感覚は、大事な人と会った時にとても重要になる筈だ······


(そろそろ私も、攻撃に移りましょう。大体の動きは理解しました)


一度目の拳を避けると同時に、下げた腕をゆっくりと上げていく。二度目の拳を紙一重で躱して腰をひねると、三度目の拳に合わせてカウンターで刀を振るう。


見事な一撃が振るわれる。その刀の軌道は、硬い毛に覆われたブラックコングの首を、一刀両断にしているのであった。


「いい一撃だったな、今迄で最高の一撃だろ」


山岸徹も見惚れてしまう程の、綺麗な太刀筋。それは、オートマタの能力と海野結菜の才能、それと高ランクの刀が合わさった結果であった。


「少しずつですが、コツが掴めてきました。次の相手を探しましょう」


この後、何度目かのモンスターを倒すと。その直後に異変が起こる。海野結菜は、何処からか大きな声が響いてきたと思い、辺りを見渡していた。


「そんなに周りを気にしてどうしたんだ?」


(えっ? 聞えてないのですか、あんなに大きな声が······)


[反応してる? 聞こえてるなら返してよ、この身体は、私のなんだから]


(此れは······そうゆう事ですかね?)


海野結菜は、誰の声なのか気が付いた様子だ。自分にしか聞こえない、頭の中に直接語り掛ける声。それは、この身体の持ち主である事に。


(オートマタに、元々存在していた意識ですかね? 御身体お借りしてます)


[正解なんだけど。何なのよ、その冷静な返しは······]


人間と人形、喋り方が反対になっている気がする。その理由は、座学が終わった後に読んだ漫画が影響しているのかもしれない。


(冷静ですか、知識と照らし合わせれば想定出来る事なので、そんなに驚きはしませんよ)


[まぁ、そ、そうよね。うん、判るわよ。それで身体を返す件はどうなのよ?]


(ごめんなさい、その知識はないので。これから、2人で協力して方法を見つけて行きましょうか)


海野結菜とオートマタが、頭の中で会話をしているのを、山岸徹が怪訝な目で見つめていた。


「おいっ、海野。何か起きてるのか?」


「あ、すいません。ちょっと取り込み中なので静かにしていて貰えませんか」


海野結菜はオートマタを優先する。関係を崩しては、今後の人生に悪影響があるとわかっていたからだ。


[この男、私嫌いっ。命令口調なのが腹立たしいのよね······私に命令出来るのは、マスターだけなのにっ]


(そうですね、私から口調を変える様に言っておきます。それと、あなたの事は話しても良いですか?)


[どうしよう······どう思う?]


(話しても悪い事は起きないと思いますよ。それと予想なのですけど、あなたが話せる様になったのは能力が上がったからだと思うので、此れからも出来る事が増えるのなら、一緒に行動している人には認識して貰った方が良いと、私なら判断しますね)


[わ、私も同じ事思ってたわ。あ、貴女とは気が合いそうね]


(そうですね、では友達になりましょう。山岸さんに説明しますので、少し待っててくださいね)


海野結菜は、会話を繰り返す中で思う事があった。オートマタの性格が、まだ子供なのではないのかと······


「オートマタの人格が機能し始めたのか、そりゃどうなんだ、都合の悪い事とかあったりするのか?」


山岸徹は、オートマタとの会話について説明を受けると、海野結菜の考えを聞いてみる。


戦闘に関してはセンスを発揮する山岸徹だが、物事を考える事は得意としていない。まだ短い付き合いであったが、海野結菜の知識と決断に任せる事も少なくないのであった。


「不都合はありませんよ、とても良い子なので仲良く出来そうです。ですが、山岸さんにはお願いがあります」


オートマタが言っていた、命令口調を辞めて貰いたい事をお願いする。そして、オートマタにも身体を動かす権利を与えたい事を話すのだった。


「私が思うに、能力が今より上がるか、マスターである茜様に協力して頂けたら、オートマタが身体を動かす事が出来るのではないかと思うのです」


「そうか、じゃ茜様に会う事になったら頼んでみろよ。今は能力を上げる事に集中しようぜ」


山岸徹は、海野結菜の成長に不満は無い。むしろ、満足する程に速い成長を見せているのだ。それ故、自分と力を合わせなくては超えられない壁に、速く到達したいと期待を寄せていたのであった。


オートマタの人格とコンタクトが取れるようになってから1ヶ月程が経過した。


この1ヶ月は、モンスターと闘う事と、モンスターを探す間にオートマタと会話をするのが日課になっているのだった。


(良い名前は思いつきましたか?)


オートマタと会話をする様になって直ぐ、海野結菜がオートマタに名前がない事を知ると、名前をつけようと提案したのだ。


その提案に対してオートマタは、自分で名前をつけると言い出した。だが中々決められずに、1ヶ月が立ってしまったのだ。


[うぅ、中々良いのが思いつかないんだよ。名前って大事なんだよね······]


オートマタの悩みに応えるべく、海野結菜がヒントになりそうな言葉を並べていく。


その1つに、オートマタが良い反応を示していた。


[うんうん、茜色は夕焼け色とか濃い赤で、真紅とか朱色とか似た色があるのか······]


マスターの名前から連想させる言葉に、手応えを感じた海野結菜は、人間の名前として良さそうな言葉を勧めてみる。


(マスターから名字は頂くとして、水元真紅だと合いますね。朱だけだとちょっと語呂が良くないので、私の名前も一文字使った朱菜なんてどうです?)


水元朱菜、その名前を聞いたオートマタは、小さな声で何度かその名前を呼んでいた。


[うん、水元朱菜。この名前が凄くいい、此れからは朱菜と結菜で頑張って行こうよ]


やっと命名された名前、水元朱菜。その水元朱菜には、この1ヶ月で2つだけ出来る事があった。


「海野、大量の獲物が現れたぞ。俺も手を貸そうか?」


「大丈夫です。私と朱菜に任せてください」


山岸徹が、朱菜?と疑問に思っていると、海野結菜はモンスターに向かって走り始める。


近づいて行くと、モンスターの数が100体は超えるている事に気付く。


(朱菜、本気で闘いましょう。準備は良いですか?)


[準備はいつでもオッケーだよ。この程度のモンスターなんて私と結菜なら楽勝でしょ]


刀を構えてモンスターの群れに突っ込んで行くと、一体一体を一撃で仕留めて群れの中央まで進んでいく。


モンスターの群れの中に入れば、当たり前だがモンスターに囲まれる。それでも余裕で対峙しているのは、朱菜の力があるからだ。


正面から襲って来るモンスターは、海野結菜が一撃で仕留めていく。そして後ろから襲って来たモンスターは、朱菜が朱い炎で撃ち落としていくのであった。


これが、海野朱菜が出来る様になった事だ。


オートマタの能力が上がり、火の魔法を習得すると、試しに朱菜に発動させて見る。すると、上手く発動させる事が出来たのだ。


身体を動かす事は出来ないままであったが、魔法を発動させる事が出来る。しかも、視界以外の方法でモンスターを感知出来る事も判ったのであった。


そのお陰で、海野結菜に死角がなくなる。背中は朱菜が守ってくれるのだ。


モンスターの群れを全て倒しきると、肩で息をする海野結菜の姿があった。


(この疲れは、魔法の使い過ぎですかね······)


[ごめん、張り切って使い過ぎちゃったかな?]


まだまだ課題は残るものの、危険度Cのモンスターなら群れでも圧倒する力を手にしていた。


「お疲れ、これだけ闘えれば三ノ扉に行ってもいいかもな。まだ2ヶ月で三ノ扉に行けるとは思わなかったぜ。所で、朱菜ってなんだよ?」


「朱菜はオートマタの名前ですよ、素敵な名前でしょう。三ノ扉へ行けるのは、朱菜のお陰ですから、感謝の言葉を掛けてあげてくださいね」


「お、おう。しゅ、朱菜も強くなったな······」


[ん? 終わり? それだけなの、もっともっと褒めていいのにっ。ほんと、この男は気が利かないのよね]


(ふふ、照れ屋さんなんですよ。でも朱菜、褒めて貰えて良かったですね)


オートマタに宿った海野結菜は、周りの協力も含め探索者として異常な程に順調に進む。そして、黒街彰へ追いつく様にと凄い速さで力をつけていくのであった。

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