表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/79

第三章【異世界からの願い】転移した先

時は少し遡る。


佐久間仁が郷倉未知瑠にとどめを刺される瞬間、最期の望みを掛けて魔導具を起動させていた。


(また両腕を斬られちまった······くそっ、顔で起動出来るかな)


起動した魔導具は、佐久間仁を転移させる。転移先は、対となるもう一つの魔導具が設置された場所、銅谷権兵衛の屋敷内であった。


「おっ、おっ、仁が来たぞ。小夜、直ぐに回復してやってよ」


少年は、佐久間仁に会いに行った時から、こうなる事を予見して動いていた。理由は単純だ、水元茜以上に佐久間仁の事を仲間に加えたかったからである。


そして、少年に声を掛けられたのは、桜井小夜(さくらい さや)。彼女は回復の特殊スキルを持っている。その能力は、欠損した部位も治す事が出来る強力な回復魔法であった。


「はぁ〜い、『全ての傷を癒し復元させよ』新しいお仲間さん、大丈夫かな?」


(うっ、此処は······)


「仁に魔導具を渡しておいて正解だったね、僕がわかるかい?」


「こ、この間の少年か······う、腕が、治ってる」


佐久間仁の腕も、火傷の跡も戦闘など無かったかの様に元通りになっている。意識も段々とはっきりとしてくると、少年との再会になぜだか安堵しているのに気が付いた。


「思ったよりも良い顔をしてるじゃないか、もっと闇の深くに沈んでしまってるかと思ったんだけどね」


「何故だろうな、全力を出しても完敗だったからか······少年にまた会えて嬉しい、嫌、安心してるのかもしれないな」


「其れは、僕としても会いに行ったかいがあったってもんだ。なぁ仁、単刀直入に言うけどさ、僕の仲間になってよ」


少年が強い者と出会った時に考えるのは、闘う事か仲間にしたいかの二通りであった。特に将来有望な者は、仲間に加える事を選ぶ傾向にある。


佐久間仁は、久しぶりに仲間に加えたいと強く思った有望な人材だったのだ。


「有り難い話だけどよ、先ずは名前を聞かせてくれないか?」


以前別れ際に、次に会った時は名前を聞くと言ったのを思い出しながら、佐久間仁は名前を尋ねた。


「そうだった、まだ名乗ってないんだったね。僕の名は、銅谷京之介(どうや きょうのすけ)だ」


銅谷京之介。彼は、銅谷権兵衛の一人息子であった。


組織的には大まかに2つに別れる、銅谷権兵衛が政治面での活動に重きをおいているのに対して。探索や戦闘に関しては唐代一心が仕切っていた。


銅谷京之介は、何方かというと唐代一心が仕切っている組織に所属する、探索者という立場であった。


「銅谷京之介か、良い名だな。俺の方こそ、此れから宜しく頼むよ」


「宜しくなっ、それじゃ他の仲間も紹介するか、皆っ自己紹介してよ」


最初に自己紹介したのは、桜井小夜。小柄で可愛らしい女性である彼女は、このパーティーの回復役を務めていると話す。


次に自己紹介したのは、創真晴人(そうま はると)。目を覆う位の髪が暗い印象を与えていた。魔法使い担当だと話した創真晴人は、光、風、土の魔法を得意としている。更に性質変化という特殊スキルを持っている彼は多彩な攻撃手段を使い熟す強者であった。


次に自己紹介したのは、九部大吾(くべ だいご)。2メートルを超える身長から発せられる言葉は、それだけで人を萎縮させてしまう威圧感がある。特殊スキル硬化を持つ彼は、パーティーのディフェンス役だ。


最後に自己紹介するのは、銅谷京之介。このパーティーのリーダーを務めている事を話すと、得意技を披露した。


雷の化身、仲間の間ではそう呼ばれている。速度の向上と電撃効果が付与された剣舞を見せて佐久間仁に一言伝える。


「俺の趣味は、強い者と闘う事だ。仁もしっかりと着いて来いよ」


この4人に佐久間仁が加わり、5人での活動が始まるのだ。そして、最初の目標が銅谷京之介の口から伝えられる。


「北で五ノ扉が開放されたのは知ってるか? 俺達も五ノ扉を開く、当面は楽しく探索者をやろうじゃないかっ」


この後は、西の地で探索者として異界に向かう日々が続いていく。五ノ扉の鍵を手に入れるのが最初の目標だが、北の地に潜む間者からの情報を元に動いている為、目標達成までは時間が掛からないであろう。


「やっぱり仁の能力は最高だな、威力が高い上に範囲もカバー出来るし」


銅谷京之介が褒めているのは、鍵の守護者との戦闘で佐久間仁が活躍した内容だ。


「俺なんかまだまだだって、小夜さんもめちゃくちゃ強いからびっくりしたぜ」


モンスターが桜井小夜に接近するのを初めて見ると、危険度Aのモンスター翅蛇を一撃で葬っていたのだ。


「これでも、長く探索者をやってるんだからね。それに、あれぐらい出来なきゃ京ちゃんには着いていけないのっ」


守護者を見つけるのに2ヶ月程の時間が掛かっていたが、その間に佐久間仁はパーティーに馴染む事が出来ていた。


「次は、いよいよ五ノ扉だ。どんな強敵が居るか楽しみだな。其れに北の地では、五ノ扉が開かなくなったらしいから、面白い事が待ってそうじゃないか」


銅谷京之介によって、西の地でも五ノ扉が開かれる事になった。こうして、問題の起きている『アリスフール』に地球から別のパーティーが参加する事になったのである。


✩✫✩✫✩


「そんなに警戒しなくても大丈夫だよ、僕はね案外嘘は言わないから」


銅谷京之介が、返事のないフォンス・カーリルに言葉を続けていた。


ファリアンス・レミアノをおいて逃げても、又この世界を彷徨う日々に戻ってしまう。其れに目的の人物にも遠ざかる、そんな思いから、着いていくしか選択肢がないと悟る。


「わかったよ、着いていこうじゃねぇか。罠だったらただじゃおかねぇからな······」


精一杯に虚勢を張ってから、着いていく。その後ろからファリアンス・レミアノもトコトコと歩いて来た。


(この人達は、地球の人だっ。きっと西の扉から来たんだね······)


ファリアンス・レミアノは、地球の人間を何人か把握していた。能力の高い者だけ、数人だったが、銅谷京之介もその一人に入っていた。


(同じ地球人でも何だか雰囲気が恐いな、愛ちゃん達とは全然違う······)


明るい雰囲気で、飄々とした態度の銅谷京之介。それに少年の見た目から、取っつきやすい様にも思えるが、目の奥が笑っていない様な、本心が解らない表情にファリアンス・レミアノは警戒心を強めていた。


瓦礫を越えて歩いて行くと、城があった場所に辿り着く。クレイス・ファーナが居た場所と同様に、崩れた城跡は瓦礫の山と大して変わらない様子だ。


瓦礫の山、そのてっぺんにどっしりと腰を下ろして居る人物が視界に入った。その人物こそカブラル・ディグである。


カブラル・ディグは、シルバーアングという魔物と融合した人間だ。シルバーアングは、かなり希少な魔物で別種族を従える事から、魔物の王という別名で呼ばれる事もあった。


(銀色の体毛、あの特徴はカブラル・ディグで間違いなさそうだな······)


「ディグ、君のお客を連れて来たぞ」


「俺の事を覚えているか? 2回程会っているんだが······」


「あれか、お前は悪魔と行動していた人間だろう。何で俺の元に来た?」


フォンス・カーリルは、自分がこの世から去った後を知る人物を捜していた事を話し。該当していて、蘇っているならばカブラル・ディグだろうと思った事を正直に話した。


「お前がいつ死んだのかは知らないが、知ってる事は話してやろう。この世界の同胞だ、この憎たらしい小僧に比べれば、かわいく思えるからな」


✩✫✩✫✩


銅谷京之介が五ノ扉へ入り、探索を開始してから数日が立った所で、崩れた街を発見していた。


そこはカブラル王国の王都。カブラル・ディグが蘇った場所でもある。


銅谷京之介が、最初にカブラル・ディグを発見した時は、人型の珍しい魔物を見つけたと思い有無も言わさず斬り掛かっていった。


見た目が、銀色の体毛で覆われ、3メートルは有る巨体に、鋭い眼光は赤く光っている。地球人からは、魔物だと思われても仕方がないのであった。


無言のまま、戦闘が長引く。銀色の体毛が斬撃を防ぎ、速さで上回る銅谷京之介が攻撃を躱していたからだ。


銅谷京之介は、普段スキルの使用を控えていた。


圧倒的な力は戦闘を楽しむのには邪魔になる、だがカブラル・ディグになら使用しても良いかと思い「今迄で一番強いモンスターだったよ」と一声掛けてからスキルを発動させた。


予想外だったのは、モンスターが返事を返してきた事だ。


「すばしっこいだけの小僧が、俺をモンスター扱いした事を後悔させてやるわ」


返事に驚きながらも、スキルを発動した状態で斬り掛かる。すると、カブラル・ディグは全身を無数に斬り裂かれ、更に電撃により身体中が焦げついて、肉の焼ける匂いが自身の鼻に襲いかかる。


即死ではなかったが、電撃による痺れもあり、身体を動かせないまま倒れるのであった。


本来ならば、とどめを刺して終わる所であったが、最期に言葉を発した事がカブラル・ディグの命を救う事になる。


桜井小夜に回復するよう指示を出すと、カブラル・ディグが目覚めた後、会話を試みる事にしたのであった。


カブラル・ディグが、銅谷京之介を「憎たらしい小僧」と言ったのは、この後の会話が原因だ。


勝者の言葉なので間違いとは言わないが、王であった者に「配下に加えてやる」と銅谷京之介が言ったのである。


この時はまだ、喋るモンスターだと思っていた事もあり、仲間ではなく配下として誘ったのだ。


口喧嘩を繰り返す内に、カブラル・ディグが人間であった事を理解すると、一応の和解が成立したのであった。


「憎たらしい小僧か······それは俺も同感だな。それじゃ先ずは、それぞれの王国がどうなったのか聞いてもよいか?」


カブラル・ディグが知る限りでは、7つの王国の内、自国を除いた5つの王国は、国どうしの争いで滅んだとの事であった。


「俺も詳しくは知らないが、残ったのはクレイス王国と、連合国みたいなのになってたな······」


「クレイス王国が存続してんかよ、女王は、その時の女王は誰だ?」


「クレイス・レーシア、この女がクレイスを引き継いだ、新たな女王だ」


クレイス・レーシア。精霊種であった彼女は、幼少期に孤児院から引き取られ、クレイス王国で教育を受ける事になった。


勤勉な性格から、多くの技を取得すると、若くして将の地位まで上り詰める。そして、クレイス・ファーナの仇を取ったのもこのクレイス・レーシアなのであった。


「はっはっはっ、俺の命で王の座を手にしたのか、そりゃいいじゃねぇか」


フォンス・カーリルは、自分の命を奪った人間の行く末を聞いて満足していた。クレイス・レーシアを恨んでもいなければ、逆に好意的な感情を持っているのだ。


「因みに、最終的に覇権を握ったのは誰かは知らねぇよな?」


「其れは俺も知りたい情報だ、俺は三種体の若き王にやられちまったからな······」


昔話に一息つくと、1人の少女へと話題は切り替わっていく。


(こいつの事は話したくねぇんだけどな、いざという時の切札にもなるからよ······)


フォンス・カーリルが言葉を濁している間に、ファリアンス・レミアノが直接問い詰められ、目を泳がせていた。


「そんなに隠さなくても大丈夫だって、そこの2人よりは確実に善人だからさ」


銅谷京之介が、この世界の住人である2人を横目で見ながら、何者なのかを話す様に促していた。


ファリアンス・レミアノがフォンス・カーリルへ目線を送る。今現在もファリアンス・レミアノの命はフォンス・カーリルが握っているのだ。


(カブラル・ディグの元には、約束通り案内されたしな······まぁいいか)


フォンス・カーリルが、話す事を許可する意味を込めて頷いてみせる。


「あの、私は他の世界から来たんです······」


「ふ〜ん、そこは何処の世界かな?」


「貴方達とは違う、また別の世界······」


「別の世界か、何をしに来てるんだろうね?」


なぜだか、場の空気が重くなった様に感じる。その空気のせいで、ファリアンス・レミアノは上手く喋る事が出来ていなかった。


「おいおい、なんだか歯切れがわりぃなぁ。お前は仲間を助けに来たんだろ。自分の能力でよ」


フォンス・カーリルの言葉を聞いた銅谷京之介は、明らかに顔付きが変わっていた。


今迄の飄々とした態度は隠れ、目付きは鋭く顔は笑っていないのだ。


いったい何が、彼の感情を動かしたのであろうか······

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ