第一章【旅の行方】人を超えた存在
時坂達の家族と別れ、地上に帰って来た黒街彰。
(二週間ぶりに帰って来たぞっ、やっぱり安心するなぁ)
家に帰り、ベットに横になる。直ぐに意識は夢の中にのまれて行く。
長い時間の眠りから目覚めた黒街彰は、今回の探索を振り返った。
「危険度Dでも一人じゃ勝てなかったな······」
調べられるだけのモンスターの情報は調べていた。勿論仇となるモンスターもだ。
危険度Bブラックコング、結菜の仇となるモンスターの名称だ。
「もっと宝玉を取り込まないと、それか武器や防具を手に入れるかだけど」
武器や防具も、装備者の能力を上げてくれる物がある。だがそれは、Bランク以上の装備からであった、一ノ扉の中では中々出ないうえに、買うと数千万円〜数億円の値段だ、手に入れるのは容易ではない。
後は、装飾品と言われる物で、一ノ扉でも確認されている。
低ランクでも能力向上の効果が付いているが、買うとなると数千万円はするようだ。
「やっぱり、コツコツやるしかないよな。良しっ、効率の良いモンスター狩りの方法でも探すか」
今回の目標は、危険度Eのモンスターをより多く狩る事にする。
調べた情報では、砂トカゲの巣で戦闘を行う事が数を熟せそうだ。
「砂トカゲなら戦闘経験もあるし、出来そうだよな、他には······」
森に出現する巨体蜂も、数は多い。だが機動力が高い分、危険度が上がる。
山へ向かえば、影狼も群れで襲ってくる。此方も連携が高く危険度が上がるのだった。
「他は、もっと宝玉を取り込んだら挑戦するか、リスクは減らして行かなきゃ」
やる事が決まったら次は準備だが、ふと時坂純也の話を思い返す。
「時坂さんの話、やっぱ凄い話だよな······」
探索者は、寿命が延びると言われてはいたが、黒街彰は都市伝説だと思っていた。
「200年前から探索者って事は、200歳以上だもんな······此れもやばい情報だろ」
異界の民、ダ・ビャヌさんの存在は、異界についての仮説の一つに、滅んだ世界を神が再利用しているという物がある。それの裏付けになるかもしれない情報だ。
「こうゆう話は、結菜が好きだったなぁ······秘密の話しだけど、結菜になら話しても怒られないかな?」
生き返らせる事が出来たら、話す事が一つ増えた。結菜の為にも、色々な情報を集めてみようと思う黒街彰であった。
探索者協会へ向かい、今回の探索に必要な準備をする。食料と、金塊を売ったお金で癒やしの薬を手に入れる。
(癒やしの薬を買うと金がかかるよな、貯金もして良い防具を手に入れる事も考えなくちゃいけないし······)
探索者協会の建物内を歩いていると、魔導具の案内が目に入った。
(ステータス鑑定の魔導具か、自分の能力は知っておいた方が良いよな?)
探索者協会には、探索者に必要な魔導具が二つある。一つは、道具を鑑定してくれる魔導具。もう一つが探索者のステータスを鑑定してくれる魔導具だ。
ステータスの鑑定機の前まで来る。
(一般人の成人で、ステータスの平均が10程度だったよな)
アカデミーで習った内容を思い出す。ニノ扉へ挑戦する為の能力は、100を超える事、他にも戦闘経験やスキルを入手出来たかでも変わってくる。
案内板を確認すると、一律10万円で機動に必要な魔石は自己負担となっていた。
能力が高い、スキルの保持等で必要な魔石の量は変わるらしく、宝玉を取り込む前で小魔石10が必要とされていた。
使用時は、多めに魔石をセットして、使われなかった魔石を後で回収するのが基本のようだ。
(今俺が持ってる魔石は、15個か······宝玉を5個取り込んでるんだよな、足りるのかな?)
鑑定を失敗すると魔石は返って来ない、ステータスの鑑定は、次回に見送る事にする。
この日は、家に帰ってゆっくり眠る事にする。翌日から、また二週間程度モンスター狩りをする予定であった。
一ノ扉に入り4日目、目的地の砂地が広がる地形までやって来た黒街彰。
(翔太と出会ったのがこの辺だったな、とことん砂トカゲを狩っていくぞ)
一回の遭遇で3体〜5体の砂トカゲが現れる。
順調に発見したモンスターを倒す事が出来た。夜になり休息の時間は、魔物除けの魔導具のお陰でしっかりと休息がとれている。
(砂地に来て3日立つけど、宝箱はゼロか、魔石は8個だからプラスではあるけど······でもな)
焦っても仕方がない、理解っていても気持ちは抑えられない。早く会いたいのだ······
4日目の探索を行っている時であった。
(何か感じる?牛鬼と闘う前のような、異様な雰囲気というか、流れのような······)
流れに従って歩いて行くと、一体の砂トカゲが居るのが見えた。
(砂トカゲだっ、行くぞっ)
何時もと同じ勢いで近づき、頭部に妖剣を突き刺す。今迄は、決まれば一撃で倒す事が出来ていたのだが、今回は硬い頭皮に弾かれてしまう。
(硬いっ、それに······いつもの砂トカゲより大きいよな?)
思考した瞬間、砂トカゲの尻尾が襲いかかってきた。
脇腹に直撃を貰い吹き飛んでしまう。
(痛った、腹の中が······うぷっ)
血を吐き、目の前が白く感じる。内蔵にダメージを負ってしまったようだ。
急いで離れ、癒やしの薬を飲むと、痛みが引き視界も正常になる。
だが、目を離した隙に砂トカゲの位置を見失ってしまった。
(砂の中に潜ったのか? でも絶対に近くに居るぞ、集中するんだ)
地面に振動を感じる、近づくタイミングに合わせて横に飛ぶと、地面から口を大きく開けた砂トカゲが飛び出して来たのだった。
飛び出した砂トカゲの腹を、妖剣で斬り裂くと、頭部よりはダメージが通る。
(ダメージを与えられるなら、大丈夫だっ)
此処から先は、時間をかけてダメージを蓄積させていく。
何度か切り裂いた腹に、再度合わせた妖剣が砂トカゲを完全に切り裂いた。
(やっと倒せた······危ない闘いだったな、稀に出るという上位個体だったのかな?)
倒した砂トカゲの後に、今回初となる宝箱が出現する。
「やった、銅の宝箱だっ」
宝箱を開けると、念願の宝玉が入っていた。
長く闘っていた為に、もう日が暮れ始めていた、この場は離れて今日は休む事にする。
魔物除けを機動させると、考えを巡らせる······
(ステータスを鑑定してから、宝玉を取り込めば次のステータス鑑定で効果が何だったか判るよな······どうしようかな?)
(薬も使っちゃったし、帰るほうが良いか。魔石は、今日2個手に入れた分だけプラスか、せめて20個になるまで頑張るか······どうしようかな?)
考えた結果、癒やしの薬を使ってしまったので、無理はしないように、帰りながら魔石を集める事にしたのだった。
地上へ戻った黒街彰、結局魔石が余り出なかった為、帰りの魔物除けの魔導具に使った分でプラス1個になってしまった。
(全てが上手くはいかないよな······ステータスを鑑定するまで日帰りで探索しよう)
それから、二週間の日帰り探索で魔石が20個に到達した黒街彰は、探索者協会に向う。
ステータスの鑑定所へ入ると、受付がある。流れは道具の鑑定と同じだった。
違いがあったのは中に入ってから鑑定をする時だ、両手を鑑定の魔導具にかざす必要があるので、係りの人がスイッチを押してくれる。
スイッチを押して貰うと、魔導具が機動した。
痛みはないが、身体に電気が流れるような感覚が有り、5分程で収まる。
魔導具からプレートが出てきた。鑑定が無事終わったようだ。
プレートを確認する黒街彰。
【名 前】 黒街彰
【性 別】 男
【命 力】 12
【魔 力】 0
【攻撃力】 42
【防御力】 8
【素早さ】 46
【幸 運】 17
【スキル】 魔力感知(極小)
【魔 法】
(おっスキルが有るじゃん、魔力感知か······)
「あっ、有難う御座いました」
考えるのは後にして、係りの人にお礼を言い鑑定所を後にする。
帰り道、ファミレスへ寄って食事をしながら、能力について確認することにした。
(魔力感知が有ったから、牛鬼の時も、砂トカゲの時も変な流れを感じたのかな? あれは、魔力が集まる流れだったのかもしれないな)
(それと、攻撃力と素早さが高いから、宝玉が二つずつ振られたのかな、後スキルで合計5個だもんな)
(魔力は0なんだな、魔法を覚えれば遠距離攻撃が出来るんだけど······魔法って、ロマンだよね)
「ごちそうさまでした」
ファミレスで支払いをすると財布の中が寂しい事に気づく。
(やばっ、金欠だっ、魔石も無いし売る物も無いから癒やしの薬も買えないぞ)
当面は、日帰り探索を続けて資金を稼ぐ。そしたら遠出して狩りをするのだ。
今残っているのは、手に入れた宝玉だけだ。だけどそれで良い。宝玉を取り込めば、一歩でも前進出来ていると感じられる黒街彰であった。
✩✫✩✫✩
黒街彰は、半年の間、探索へ出掛ける日々を続けていた。
「良しっ、斑熊の上位個体討伐っと」
自身の能力に魔力感知を発見してからは、魔力の流れを探す事も日課になっていった。
魔力の吹き溜まりには高確率で上位個体が現れる、そして上位個体からは宝箱の出現率も高いのだった。
(やっぱり上位個体は、宝箱が出現し易いな)
銅の宝箱を手に入れる、中を確認すると、宝玉が入っていた。
(これで10個目だ、良しっ目標達成)
ステータスを鑑定した日、次にステータスを鑑定するのは、合計10個の宝玉を取り込んでからとした黒街彰。
この宝玉で10個目だ、一ノ扉での宝玉を手にする数として、半年でこの数は驚異的なスピードであった。
(帰ったら、ステータスを鑑定しよう······やばい楽しみで仕方ないぞっ)
心を踊らせながら帰路を急ぐ。黒街彰は、帰り道で半年を振り返っていた。
最初は金欠で苦労したが、宝玉を取り込んだ事で戦闘が楽になっていき、怪我が無ければ癒やしの薬を使わないので、無駄な出費を抑えられていく。
それと、手に入れたアイテムがあった。銅の宝箱から出た指輪だ、装着すると身体が軽くなった気がする。鑑定していないので、予想にはなるが、素早さを上げてくれるアイテムを手に入れたのだ。
地上へ戻ると、その足で探索者協会へ向かった。
今では金欠を脱して、魔石も40個程持っている、ステータスの鑑定は問題なく出来るだろう。
受付を済ませて、ステータスを鑑定してもらう。
「お願いします」
ステータスの鑑定は無事に済んだ、魔石の消費量は30個であった。
「有り難うございます」
簡単な言葉で鑑定所を出る、今回はプレートをまだ見ていない。前回にも行ったファミレスでじっくりと見る予定だ。
食事を注文し終えると、半年頑張った効果が反映されているだろうプレートを確認する。
【名 前】 黒街彰
【性 別】 男
【命 力】 41
【魔 力】 0
【攻撃力】 73
【防御力】 34
【素早さ】 106(30)
【幸 運】 17
【スキル】 魔力感知(小)
【魔 法】
(おぉっ、前より上がり方が大きいぞっ)
前回の宝玉は木の宝箱から出た物、今回は全て銅の宝箱から出ていた。
(銅の宝箱からだと、30前後の効果があるのかな? となると······命力1、攻撃力1、防御力1、素早さ2かな?)
魔力感知にも変化がある、表記が極小から小に変わっていた。
(魔力感知も効果が上がってるよな、素早さの(30)は指輪の効果で、それが反映してるのなら魔力感知が宝玉で上がった? う〜ん解らない······)
指輪を外して鑑定すればよかったと後悔する。それでも、素早さが100を超えたのだ、これで人を超えた存在に成れた事になる。
結菜の仇討ちに向う日も近いと、緊張した面持ちになる黒街彰であった。