第三章【異世界からの願い】生きる為に
捜索に急いで向かいたいとゆう意見が大半であったが、それを止めたのはクレイス・ファーナであった。
クレイス・ファーナは、男の実力を
自身と大差がない程の実力者であったと言う。更に、自身が知らない時間で強くなっている可能性も考えられると······
「妾以外で闘えるのは、先程闘った2人位であろう。他の者では、見つけたとしても返り討ちじゃ」
手分けして捜索する事は、断念せざる負えなかった。変わりに、捜索の精度を高めるしかないのだ。
「ガディの探索術に頼るしかないだろ、他に人探しに向く能力がある奴は居るか?」
ビクサス・ガイが提案したのは、仲間の1人プロテラス・ガディの探索術で探し出す事だ。
探索術は、術者が設定した物を探し出す事が出来る。人間を設定すれば、直径300メートル程度の範囲に居る全ての人間の位置が判る能力だ。
ビクサス・ガイが、探索術の性能を知らない者へ説明する。
「それは、便利な能力だな。俺達の中では、彰の魔力感知ぐらいだが、そこまで人探しには向いてないな······」
捜索方法を話し合っていると、ディガルド・フィオルとディガルド・グリザハルの2人が戻って来る。
警戒して近づいていたが、クレイス・ファーナが会話に参加しているのを見て警戒を緩めた。
2人は、水と植物の実を手に入れて戻って来た。それをクレイス・ファーナに見せると、必要としていた者へと渡すのであった。
「何があったかわからんが、受け取れ。口にして問題がないか判らんがな······」
腹を壊してもマクリーク・フルムの回復術がある為、感謝して水と植物の実を受け取ると、試しに口にしてみるのであった。
「植物の実は、かなりすっぱいな······まぁ栄養が有りそうでなによりだ。水は、味もおかしい所はないぞ」
改めて感謝を伝え、手に入れた場所を訪ねる。
食料問題が解決した訳ではなかったが、飲水を確保出来れば、生存時間が大幅に延びるのは確かであった。
この後も作戦を話し合うと、ある程度の行動が決まっていくのだが、人の配置が決めきれない······
問題は幾つかあるが、大きくは2つであった。闘える者が少ない事と、互いに異世界人を信用しきれない事。
戦闘に長けた者は、時坂純也、ダ・ビャヌ、郷倉未知瑠、ビクサス・ガイ、ビグラウト・テラネウス、クレイス・ファーナ、ディガルド・グリザハルの7人だ。この7人を二手に別けていく。
先ずは、捜索する人間を決める。時坂純也、ビグラウト・テラネウス、クレイス・ファーナ、それと探索術を使えるプロテラス・ガディの4人に決まった。
そして、拠点を水源の近くに移動させ、此処に残りの者が配置され、食料確保に務める事となった。
お互い異世界人を信用しきれない為、分散して配置する事にしたのである。
行動を開始するが、先ずは全員で拠点へと移動する。理由は、その付近を探索術で探す事と、場所を覚えておく為であった。
半日程歩き水源へ到着すると、直ぐに捜索班が別行動となる。
「ここのモンスターは強いからな、必ずビャヌか郷倉さんと行動を共にしろよ」
「おう、任せとけ。親父も頑張れよっ」
「はい、時坂さんも気お付けてください」
言葉を交わして別れていく。お互いの無事を祈り、ファリアンス・レミアノの捜索が始まった。
✩✫✩✫✩
「かっはっはっ、面白くなってきたなぁ。蘇ってから退屈だったからよ。お前も楽しみだろ?」
一方、全速力で移動した男が到着したのは、廃墟となった別の街であった。
一息つくと、ファリアンス・レミアノを拘束していた、口の部分だけを解放して話し掛ける。
「何が楽しみなんですか? 私は楽しくないですよっ」
「そんなつれねぇ事を言うなって、まぁ此れから長い付き合いになりそうだからよ、自己紹介から始めようぜ。俺は、フォンス・カーリルだ。お前は?」
「私は、レミアノです。貴方は何を企んでいるんですか? それと、身体の拘束も外してくださいよっ」
フォンス・カーリルは、扉の存在とファリアンス・レミアノ達が言っていた『異世界』とゆうワードに興味があった。
「企みねぇ、それは此れから考えるさ。拘束の話は無理だ。外したら扉から逃げられちまうからな。わかってんだぜ、異世界にも行けるんだろ」
「えっ、なんで知っているんですか? 本当に、貴方は何者なの······」
フォンス・カーリルは、盗み聞きした事や、自分はこの世界の人間であったと、正直に話し出した。この先、ファリアンス・レミアノから信頼を得た方が行動をしやすいと考えたからだ。
「俺は他の人間と仲良くする気はねぇけどよ、自由気ままに生きるにも、魔物ばっかりになっちまったこの世界じゃ自由もクソもねぇからな······ちょっと協力してくれよ」
(この人、絶対に悪い人でしょ。無理矢理、この人を他の世界に連れて行ったら、絶対良くない事をするよ······)
「ちなみに協力って、何するのかな?」
「他の世界に連れて行ってくれよ、そうしたら解放してやる。それでどうだ?」
(やっぱりそうなるよね······何て言おうかな?)
「其れは出来ないかな、お、掟だから······」
「掟だと、くだらねぇ。よく考えろよ、お前がいなけりゃ仲間もこの世界から出られねぇだろ」
(そ、そうだけど······)
「まぁいい、時間はたっぷりあるからよ、ゆっくり考えてくれや」
(直に食料の問題に気づくだろ、飢えてから交渉しようじゃねぇか)
✩✫✩✫✩
「俺達も、出来る事をやって行こうか」
拠点に残った黒街彰が、皆にやるべき行動を話し出す。その内容は、食料を調達する別の手段であった。
「確率は低いけど、宝箱からも食料は出るだろ、俺達はそれを狙って行こう」
モンスターを倒して宝箱を手に入れる。それは、何時もと変わらない日常だが、力を手に入れる為にも必要な事であった。
黒街彰は、前向きな発想からこの行動を選択する。食料探しも出来て一石二鳥だからだ。
「俺達は、モンスターを狩りに行ってきます。ガイさん達は、此処に居ますか?」
「そうだな、俺達は非戦闘員が多いから此処に残るよ。ここの安全は任せてくれ」
モンスターを狩りに出掛ける事に問題はなかった、拠点は結界術で守る事が出来るからである。
結界術を使える者の名は、トレカール・ラズモア。外からの侵入を妨害出来る結界術だが、予め設定しておけば、出入りを自由にする事も可能であった。
「君たちは、結界を自由に出入り出来る様にしておく、危険を減らすなら結界の近くで戦闘したほうが良いぞ」
結界の外へ歩き出すと、ディガルド・フィオルとディガルド・グリザハルの2人も着いてきて話し掛けてくる。
「なぁ、俺はフィオルってゆうんだけど。お前は、アキでいいのか?」
「ん、そうだけど。何かようかな?」
ディガルド・フィオルは、単に興味があって黒街彰に着いてきていた。だが、元将を務めていたディガルド・グリザハルは違う、敵になりうる者の実力を知っておきたくて着いてきたのだ。
「特に用って訳じゃないんだけど、折角知り合ったんだから、交流を持ちたいじゃん。着いて行ってもいいか?」
「別に構わないよ······」
フレンドリーに接してくるディガルド・フィオルに、少し戸惑いながらも共に歩いていると、モンスターが現れた。此処に到着する前にも出会っていたモンスターだ。
全長4メートルは有る四足歩行のモンスター。この辺りは、このモンスターが多く出現する。
「あれは、ガブロって魔物だよ。てか、仲間の女の人、つ、強いな」
モンスターが現れて、闘っているのは郷倉未知瑠とダ・ビャヌであった。意外と気の合う2人は、戦闘でも見事な連携を見せていた。
「どの世界でも女の人って強いんだな······ガブロは、俺が生きてた時は、魔物領にしか現れない魔物で、かなり危険だったんだぞ」
「へぇ~、そうなんだ。因みにフィオルはあのモンスターを倒せるのか?」
「1人じゃ厳しいな、俺は、此れから強くなるって時に······死んじまったからよ」
「そ、そっか。俺も、1人じゃ全然敵わないと思う。一緒に強くなって行こうぜ」
1体目のガブロは、郷倉未知瑠とダ・ビャヌの2人だけで倒しきっていた。2人に黒街彰が、自分達も戦闘に参加出来るか聞いてみると、目的が食料探しから訓練へと変わっていくのであった。
「かなり硬い上に攻撃力も高いので、常に動き回って攻撃を貰わない事です。ダメージを与える事が出来れば長期戦で倒せるかもって所ですね」
普通に黒街彰のパーティーだけで、危険度Aを超えるモンスターに挑む事になってしまい、特に前衛を務める黒街彰と時坂翔太は命がけであった。
話しながら歩いている内に、2体目のガブロを発見する。実戦あるのみだと言われ、早速モンスターを任される事に······
「翔太、直撃だけは絶対に避けような······」
左右に別れて、黒街彰と時坂翔太が向かう。その前に、三日月愛の風魔法が直撃したが、ダメージがあるようには見えなかった。
ガブロの側へ近づくと、左右から斬りつける。外皮が硬い様で、傷がつく事もなく弾かれている。
(どっかに弱点とかないのか······)
ガブロが交互に攻撃する2人に、右往左往していると、空から静かに近づく者が居た。
ジャンに掴まれて、上空からガブロの真上までやって来たのは、館浦喜助だ。片手に大盾を構えながら、鎚矛のスキルで攻撃するのが目的であった。
(喜助っ、おいおいっ無茶する気だな······)
黒街彰は、少しでも館浦喜助の攻撃を成功させる為に、自身の手数を増やす。その隙を狙って館浦喜助が空から落ちてきた。
ガブロの背中に鎚矛が直撃する。するとスキルによる爆発で館浦喜助自身が吹き飛ばされていく。
大盾を自身を隠す様に構えて落ちた事で、爆風を大盾で受けたのは良かったが、吹き飛ばされた後が危険であった······
「お願いポチっ」
爆風で吹き飛ばされながらも、契約紋からポチを出現させる。ポチは、地面に衝突する直前に館浦喜助を背中で受け止めて距離をとって行った。
(凄いぞ喜助、契約紋の使い方が上手くなってるじゃないか)
館浦喜助は、攻撃を仕掛ける前に距離をとるまでの行動をしっかりとイメージしていた。出現させるモンスターにもそれは伝わる。しっかりイメージする事で、連携が格段に上がる事を最近の訓練で身に付けたのだ。
ガブロは、背中が少し焦げていたがピンピンしている。此処まで上手く攻撃が決まっても、倒すまでの未来が見えてこないのであった。
「ほう、決定打に欠けるが良い連携じゃないか。だが、このままでは倒す事は無理だろうな。フィオル、参加して来たらどうだ?」
「う、うん。でも、行きなり参加して連携の邪魔にならないかな······」
「私の息子は何を弱気な事を言ってるんだか、彼らの役割を理解すれば良いだけだろう······お前ならダメージを与える事が出来るんだ、自分の役割を果たせば良い」
母親にアドバイスを貰い、気持ちの高めるとディガルド・フィオルがガブロへと走り出す。
「俺も参加させて貰うよっ、ダメージは任せとけ」
ガブロに接近すると、ディガルド・フィオルの腕に変化が見られる。この世界では、融合した生物の特徴を引き出す事が出来るのだ。それを、獣化や魔物化、精霊化と呼んでいた。
今回、ディガルド・フィオルが行ったのは、部分的に変化させる技で、腕だけを魔物化して攻撃を行う。
そして、ガブロの喉元を鋭い爪で切り裂いたのであった。
硬い外皮から、血が滴り落ちる。見事にダメージを与えているのが一目で分かった。
ガブロはそんなダメージを気にする様子もなく、踏みつけようと前足を高く上げる。下に居るディガルド・フィオルに狙いを定めていた。
それを助けようと行動に出たのは、三日月愛であった。ガブロの身体が持ち上がったのを利用し、後ろへ倒すつもりで突風を放つ。
突風でガブロを後ろへ倒す事は出来なかったが、足を下ろすまでの時間を遅くする事には成功していた。その隙にディガルド・フィオルはガブロから離れる事が出来たのだ。
「あ、有難うっ」
ディガルド・フィオルがつけた傷になら、黒街彰と時坂翔太の斬撃も通用した。この後は、時間は掛かったが、無事にガブロを倒す事が出来たのであった。




