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第三章【異世界からの願い】アリスフール

牢獄の中で尋問を受けているのは、ビクサス・ガイだ。幾つもある牢獄、そこに個別に別れて捕われているのだった。


ビクサス・ガイが戦闘で敗れた後、マクリーク・フルムの「回復させて欲しい」との申し出を了承した襲撃者。だが、回復させる代わりに条件を突きつけられる。それは、抵抗せずに牢獄へ入る事であった。


朽ち果てた城、地下にある牢獄だけは無事に機能している······


「生命が滅んだ世界を維持する事や、監視する事が俺達の役目なんだ。魔法の使い手なら、魔力が溜まり続けたら良くないのは判るだろ?」


「その理屈は判るが、仮に言っていることが真実としよう、では、世界を分断している理由はどう説明するのじゃ?」


「其れは、術式の範囲とか······そうゆう管理するのに必要だからだ」


「ふん、なんだか曖昧じゃな。次は、この世界が滅んだ理由を申してみよ」


「······そこまでは、知らない。でも、俺達は敵じゃない、味方って言う方が正しい筈なんだ」


「筈なんだ? 怪しい物言いじゃのう、滅んだ理由を知っておるのではないか、言えないのは、貴様等が滅ぼしたのではないのか?」


「俺達じゃない、俺達は滅びも止めたいと思っているんだ······どうしたら、信じて貰える?」


ビクサス・ガイは、出来るだけ友好的になるよう言葉を選んでいた。それに味方と言うのも嘘ではないのだが、襲撃された上に捕らわれた現状では、全てを話す事は出来ない······それでも、仲間を無事に返す為に必死なのだ。


「信じて、か。この世界で妾が生きた時代はのう、そう簡単に人を信じて良い時代では無かったのでな······」


✩✫✩✫✩


襲撃者の名はクレイス・ファーナ、『アリスフール』にあった7つの国、その1つクレイス王国を創った初代女王であり、強大な力を持った王の1人であった。


禁術が『アリスフール』全土を飲み込んだ日に、クレイス・ファーナは妖孤と融合する事になる。


まだ幼かったクレイス・ファーナは、凄惨な幼少期を過ごさねばならなかった。魔物と融合して、直ぐに力を手に入れた訳ではないのだ。


クレイス・ファーナの心は、暗く長い時間に渡り浴びせられた悪意から、憎悪を。求めた優しさから、深い愛を育てる事になる。


クレイス・ファーナは、酷い時間をかろうじて生き延び。人里を離れて行く。魔物と融合した者は、永い時を生きるとゆう特徴があり、数百年の時が立つと、力を手に入れたクレイス・ファーナが人里に戻ってきた。そして、戻って来た目的は復讐の為であった。


復讐の対象は、幼少期に関わった者。更に、その親族、その子孫を含む全てだ。憎む者を全て、根絶やしにしようと考えていた。


そして、様々な地域でクレイス・ファーナは力を振るう······それだけ、クレイス・ファーナに悪意を向けた人間が多いとゆう事なのであった。


時がたつに連れ、クレイス・ファーナは、災いを呼ぶ魔物として恐れられる事になる。


だが、一方で違う見方をする者もいた。命を奪ったのは、恨みの対象である貴族や悪人が殆どであった。旅の道中に見かけた弱い者や、貧しい者、貴族が抱えた奴隷までも家族として迎え入れる姿に、聖母と呼ぶ者が現れるのだ。


更に数百年の時が立つと、クレイス・ファーナを慕う者が寄り添い村が出来た。それは、街になり国になる。


最終的に出来あがったのがクレイス王国であった。王国が誕生した当初は、やっと平和が訪れたと心を休めるのだった。


だが、平和な時間など長く続く訳がなかった。クレイス・ファーナが行った復讐が、自身へと返ってくるのだ······


新たな闘いが始まると、自国の民を1人では守れないと悟り、強き者を育て始める。そして、仲間との戦いの日々が続いていったのだ。


いつの間にか、600年とゆう永い年月が立っていた。世界中で争いが続くと、クレイス・ファーナを含めた、7人の強大な力を持った王が、世界に君臨していた。


世界を7つに割るかの如く治める事で、仮初めの平和が訪れる。


だが、それも長くは続かない······


悪魔に操られた人類が動き出したのだ、600年の間、闇の者として各国で暗躍を続けていたのだが、表に出て来なかったのには理由があった。


世界を変える禁術を発動させたのも、悪魔の存在が関係していた。より力を持った悪魔、悪魔の王が人の身体を手に入れる目的で禁術を使わせたのだ。


だが、依代にした人間、それが悪魔の王にとって想定外であった。強い力に耐えられる人間を選び融合し、抵抗され封印されてしまったのだ。


封印された王の捜索、次に封印の解除。600年の時が掛かったが、封印から解き放たれた悪魔の王が動き出すのだ。


そして起こるのは、7人の王と、悪魔の王が入り乱れた終焉の争いであった。


✩✫✩✫✩


五ノ扉の中、その異世界の成り立ちは地球とは大きく異なっていた。


(妾が命を落としてから、どうなったなのであろう?)


クレイス・ファーナは、捕らえた人間全員に、ビクサス・ガイに聞いた事と同じ話を聞いていった。荒れ果てたこの世界、世界の真実を知る者が居るのであれば、どうしても知りたかった。


「ファーナ様、どうでした? 何か良い情報はありましたか?」


クレイス・ファーナに声をかけたのは、3人居た襲撃者の1人、ディガルド・フィオル。彼は生前からクレイス・ファーナに使えていた者であった。


クレイス国が別の王国との戦争を開始すると、1つの部隊、その将の補佐として相手国へ攻めて行った。その戦場で十代後半とゆう若さで、命を落としたのだ。


ディガルド・フィオルの後ろで腕を組んでいるのは、実の母であるディガルド・グリザハル。ディガルド・グリザハルは、火炎蜥蜴とゆう魔物と融合した実力者であり、クレイス国では将の地位についていた事もあった。


「彼らの予測が正しいのであれば、我らが蘇った理由が解ったかもしれんな······」


捕らわれた1人にカンバル・ドゥモと言う男が居た。世界に刻んだ術式が、魔力を消費してモンスターを創り出す物だと話したカンバル・ドゥモは、彼なりの予測を立てる。クレイス・ファーナが蘇った理由は、モンスターに近い存在だったからでは?と言うのであった。


更に、気になる事をもう1つ言っていた。人の魂は、本来大地へ還るものだと言うと、貴女方は、よっぽど強い未練を遺していたんではないか?こうも言っていたのだ。


「モンスターに近い存在。なら、精霊種はどうなんですかね······」


「ほう、それはレーシアの事か? フィオルは余程レーシアに会いたいようじゃな。会いたいのなら、未練を遺して逝ったと願うしかないぞ」


「そんな、レーシアの事なんて言ってないですから······」


この滅んだ世界で、まだ若いディガルド・フィオルの存在が2人には大きかった。ディガルド・フィオルの存在が、良心を忘れさせないのだ。


尋問も一周回った頃、1つの問題が発生する。捕らわれた者の食料が無いのだ、滅んだ世界には、食料となる物が少ないのであった。


「そうよな、人は食事をするのだったな······」


クレイス・ファーナが食事を忘れてしまったのは、自身に食事が必要ではなくなったからだ。魔力で創られた身体は、魔力が有れば維持出来た。それは、カンバル・ドゥモが言っていた、人ならざる生命体である証拠なのであった。


(此れからどうすべきかのう? 此奴らは悪い者ではないと思うが······我々の様な異分子を、放おっておくかは判断できん)


「グリザハルよ、フィオルを連れて食料を調達せよ、妾は先の事を考える」


「分かりました。大丈夫かと思いますが、ファーナ様も油断なきようお待ちください」


クレイス・ファーナは、捕らえた者の証言を完全には信じていなかった。皆、重要な部分だけは隠している様に感じるのだ。


それと、自身を異分子と表した事も考え直す。魔力で創られた身体は、他の魔物と大差などないのだと······


クレイス・ファーナは、滅んだ世界を彷徨っている間に知った事もあった。魔物を倒すと宝に変わる事、それを踏まえると、捕らえた者は魔物を倒して宝を手に入れる事が目的なのだと考えるのであった。


そして、魔物と大差ない自分達は、標的にされる可能性が高い事に気が付いてしまう。


(やはり、解放はできんな······)


解放出来ない理由は他にもある。捕らえた者は、非戦闘員が多い。ビクサス・ガイとゆう男も所詮は護衛、自国に返せば戦力を整えて討伐に動くと予想出来るのだ。


(そういえば、2人逃しておったな。此処に留まるのも危険か······それとも人質が居たほうが有利かのう)


今後クレイス・ファーナは、身体を取り戻した同士を迎え入れ、国を再建する事も視野に入れていた。だが今は、大事な存在はディガルド・グリザハルとディガルド・フィオルの2人だけなのだ。


2人の為、最善の行動を考えると、捕らえた者の中で戦闘員は邪魔な存在とゆう結論になる。そして、2人が戻ってきたら考えを実行しようと決意するのであった。


✩✫✩✫✩


一方地球では、三日月愛が郷倉未知瑠に会えた所であった。


「未知瑠さんっ、ちょっと時間ありませんか?」


本部にやって来たのは、三日月愛1人だけであった。他の者が一緒では、本城尊に何かあったと勘付かれる可能性があったからだ。


「此処まで会いに来るなんて珍しいわね、何かあったの?」


郷倉未知瑠は、本部の渡り廊下を歩いていた。少し外の空気を吸いに来たのだ。


本部に集まった実力者達は、五ノ扉が閉じた件に発展がみられない事で苛立っていた、そして場は、険悪な雰囲気に包まれていたのだ。


「相談とゆうか、話があって。あの、誰にも内緒で着いてきて貰えませんか?」


「ん? 愛からそんな誘いを貰えるなんて、何だか面白そうね。気分転換がしたかったから丁度いいわ」


郷倉未知瑠に了承してもらうと、向かうのは他の皆が住む一軒家だ。そこで、ファリアンス・レミアノも一緒に待っているのであった。


一軒家に到着して中へ入る、リビングは他の仲間が座っていた。


「皆さん、お邪魔します。今日は、見かけない子が居るのですね······」


郷倉未知瑠は、見かけない人間が居る事と、少し空気に緊張感が混じっている事から期待を膨らませる。


「郷倉さん、いらっしゃい。来てもらって何なんだが······此れからする話を聞くなら、約束して貰いたい。誰にも、本城にも秘密する事を。どうだ?」


「私が尊様に秘密ごとですか? 其れは内容にもよりますね。簡単で良いので、概要だけでも教えて貰えませんか?」


郷倉未知瑠の問に、時坂純也がファリアンス・レミアノの顔を伺う。ファリアンス・レミアノが頷くと時坂純也は話し始めた。


「簡単に言うと、郷倉さんの力を借りたいんだ。う〜ん、それと、五ノ扉を開くのに関係があるって所か······」


「尊様に秘密で五ノ扉を開く、そう言ったんですね? 秘密ですか······ふふっ、いいですね。秘密で協力させて頂きます」


此処に来る前、険悪な雰囲気になっていたのは、珍しく郷倉未知瑠が本城尊に対して怒っていたからだ。


行き詰っていた状況を見兼ね、気分転換出来る様にと郷倉未知瑠は提案をした。其れを、本城尊がぶっきらぼうな言葉で一喝したのだ。


郷倉未知瑠から殺気に似た圧が放たれ、場に重い空気が張り詰める。その時は、直ぐに「頭を冷やします」と言って外へ出たのであった。


郷倉未知瑠が条件を飲んでくれた事で話が進む。ファリアンス・レミアノは、黒街彰に話した事と同じ内容を伝えた。


「お願いします。どうか力を貸してください」


「この話が真実なら、既にとんでもない報酬ね。この後の展開だって、なかなか味わえるものじゃないですわね······」


ひとしきり話し終わると、ファリアンス・レミアノが『アリスフール』の様子を視る事になった。


その間他の者は、ビグラウト・テラネウスが郷倉未知瑠の実力を試すかどうかで盛り上がっていた。郷倉未知瑠も興奮しているのか、「是非闘いましょう」とやる気を見せている。


「み、皆さんっ。今から救出作戦を開始しましょう」


ファリアンス・レミアノが視たのは、襲撃者が1人で居る所であった。このチャンスを活かしたいと、皆に救出作戦開始を急かすのだった。


予想外に訪れたチャンスから、救出作戦を開始する事になる。ある程度は、役割も決めている、そして郷倉未知瑠も仲間に加える事が出来た。


準備は整い、絶好のチャンスにも恵まれる。果たして、無事に救出する事が出来るのであろうか······

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