第三章【異世界からの願い】救出作戦
続いてファリアンス・レミアノから語られたのは、五ノ扉から行ける異世界についての情報であった。
ファリアンス家は、代々世界を繋ぐ能力を受継いでいる。そして近しい家柄に、異世界の情報を詳しく残す事を使命とした者がいるのだ。そこで得た情報を、黒街彰達と共有していく。
異世界の名は『アリスフール』その世界では、モンスターの脅威が拡がり、人々の生活が脅かされていたのだと言う。
世界が滅びるより900年程前、人類の理を変える出来事が起こる。それは、人類を中心として、他の生物との融合を目的とした禁術が発動されたのであった。
禁術が発動されると、動物や昆虫、そしてモンスターとも融合していく人類。上手く融合を果たせた者は、力を手に入れる事が出来たが、言葉を忘れた者や、動く事が出来ない者、命を落とす者も多かった。
禁術が発動してから数百年で、人類は安寧の生活を手に入れるようになる。強大な力を手に入れた7人の王が、人類が住む地域を治め、モンスターの脅威を払い除けたのであった。
だが、安寧など長く続く事はなかった。今度は人類同士での争いが始まったのだ、7人の王が世界の覇権を狙い動き出したからであった。
そこで活躍したのが、モンスターとの融合で、より強力な力を手にした者達であった。更に強力な精霊の力を手にした者もいたのだと言う······そして、7人の王も例外ではなく、今回の騒動に関わっているのではないかと予想されるのであった。
「ざっくりだけど、此れが『アリスフール』の歴史かな。人が現れたのは、モンスターや精霊と融合した事で、人類の一部が蘇る事になったんだと思うんだよね······」
「あの、そんな世界があるのも凄い情報なんだけど、襲って来た人は物凄く強いんだよね?」
「んんっ、その話は、俺から説明しよう。それと、そろそろ自己紹介させてくれ······」
ビグラウト・テラネウスは、歳は24で、背は175センチ程度のスタイルの良い男性だ。得意技は瞬足術。ビグラウト家は代々瞬足術の使い手であった。
「気軽にテラとでも呼んでくれ。それと、他にも伝えておきたい情報がある······」
ビグラウト・テラネウスは、得意技などを話し、テラと呼んでほしいと言うと、本題の前に能力について話しだした。
魔力が存在しない、地球とゆう世界が珍しい事から話し出す。その関係からか、宝玉を取り込む事で地球人は強くなるのだが、ビグラウト・テラネウス達の世界では違っていた。
家柄で、それぞれ違った特殊な能力を受け継ぐ事。身体能力は魔力を使って上げる事が出来る、それが大きな違いであった。
能力の違いを簡単に説明すと、本題である襲撃者の強さについて話し出す。襲撃者は、自身の世界で表すと、将軍クラスの強さがあると言う。そして、地球人も同程度の強さに辿り着いている可能性があると言うのだ。
「残念ながら、君たちでは敵わないんだけど、信用出来る者が君たち位しかいなくてな······」
黒街彰に接触した本来の目的が、強く信用出来る者を紹介して欲しい事だと伝えると、返答を待つのであった。
「強くて信用出来る者ですか? 確実に1人は居ますけど······なぁ翔太」
「ん? 母様の事か、まぁ力を貸してくれると思うぞ」
黒街彰が時坂翔太に話しを振ったのは、自分の親を危険に巻き込む事が良いのかと思ったからだ。それに該当する人物は、時坂純也だったのだが、あまり理解していないようだ。
「時坂、純也さんの事なんだけどさ。ほら、紹介したら危険に巻き込む事になるだろ、どう思う?」
「あっ、そうゆう事か。まぁ人助けに強い敵なんて、親父が好きそうな状況だし、絶対に喜ぶから良いと思うけど」
適当に答えている様に感じるが、それが正解なのは、黒街彰も判っていた。問題がないのなら、時坂純也を紹介する線で話しを進める事にするのだった。
「父親が、200年前から生きてる人か。まさに、探している人物だな。後は、実力を試させて貰えたら最高なんだけど」
ビグラウト・テラネウスも時坂純也の存在を気に入り、今後の行動が決まってくる。
次にする事は、時坂純也に話しをして、実力を知る事だ。それから救出作戦に、他にも人が必要なのか考える事にしたのであった。
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ファリアンス・レミアノの能力で、三ノ扉の中、元いた場所に戻った黒街彰は、地球へ戻る為に歩き出した。
「す、凄い話し、聞いちゃったね。ぼ、僕達は、どうすれば良いんだろう?」
話の流れでは、救出作戦に参加するには実力が足りていない······そんな感じであった。
「レミアノちゃんが行くなら、私も一緒に行ってあげたいんだけど、駄目かな?」
「俺も行ってみてぇ、どれだけすげぇ事が待ってるか、わくわくするよなっ」
三日月愛と時坂翔太は、救出作戦に参加する意思がある様子だ。だが、リーダーの黒街彰は迷っていた。三ノ扉で苦戦している現状では、足手まといになる可能性の方が高いと考えていたからだ。
「う〜ん、どうするべきかな? テラさんと、時坂さんの2人だけの方が上手くいくなら、一緒に行くのは止めた方が良いし······」
「あのさ、強くて信用出来る人って、未知瑠さんとかは紹介しないのかな?」
三日月愛が、北の実力者の名前を挙げる。その考えが、黒街彰にも無い訳ではなかったが、信用出来ると言える程の付き合いがないのだ。
「郷倉さんの事を、愛ちゃんは信用してると思うけど、付き合いのない俺には、よく判らないんだよな。それも時坂さんに相談してからかな」
時坂純也や黒街彰は、主に個人で活動する探索者だが、郷倉未知瑠は、北の組織で動く事が多い。それも話しづらい要因になっていた。
地球へ戻り家に到着すると、時坂純也に話をする。時坂純也は、五ノ扉が閉まった事で暇を持て余していた。
「おいおい、なんて話を持ってきたんだか······ちょ、ちょっと考えさせてくれよ」
ファリアンス・レミアノから聞いた情報を、詳しく説明する。思わぬ所から、五ノ扉が閉まった原因を知り、情報がそれだけで留まらない事に、流石の時坂純也も困惑していた。
「とりあえず、その、テラさんって人に実力を見せれば参加出来るのか?」
参加······時坂純也は、特別なイベントに参加するには、実力を認めさせて権利を得る。そんな感覚で話をしていた。
「間違っては無いですけど、根本は人助けですからね······それと1つ相談なんですけど、他の人にも話をするとしたら、郷倉さんとかどう思います?」
「郷倉未知瑠さんか、まぁ北の面子も参加したがるだろうな。本城なんか大喜びだろ」
「そうでしょうね、でも情報を拡散させる訳にはいかないんですよ。やっぱり、郷倉さんに言ったら北の人間全部に知らされてしまいますよね?」
「そこまで、俺も知ってる人だとは言えないからな。愛ちゃんのが詳しいだろ、どう思う?」
「ちゃんと約束すれば、守ってくれると思いますけど······」
信頼も尊敬もしていたが、本城尊が関われば絶対とは言えなかった。それだけ郷倉未知瑠にとって、本城尊が大きな存在である事を北の者達は知っているのだ。
郷倉未知瑠に話をするかどうかは、ビグラウト・テラネウスに時坂純也の実力を見せてから考える事になった。
救出作戦に人手が足りなければ、話をする事になると、黒街彰は考えるのであった。
翌日、再会の約束をした場所は、黒街彰が住んでいる一軒家であった。ファリアンス・レミアノの能力でやって来る予定だ。
ファリアンス・レミアノの能力は、世界を移動出来る扉を創る事と、もう一つあった。
それは、別世界を覗くことが出来る、ファリアンス・レミアノはその能力を『窓』と呼んでいた。決して万能ではないのだが、ランダムに覗く事や、人を指定して覗く事も可能なのだ。
この能力で三日月愛を見つけ出した事は勿論、仲間達の安否も確認しているのであった。
翌日になり、玄関の扉と重なる様に創られた扉が少しだけ開くと、中から大きな声が聞こえてくる。
「こんにちはぁ〜、おじゃましても良いですかっ?」
予定通りにやって来た、ファリアンス・レミアノとビグラウト・テラネウス。全員で迎えると、早速扉から別の場所に移動する事にする。
別の場所とは、二ノ扉から行ける異世界。結界が張られた場所だ。そこで、時坂純也の実力を試す事にしたのだった。
「貴方が、時坂純也さんですか。実力を見る為に俺と闘って貰えますか?」
「勿論、宜しく頼むよ」
模擬戦が始まり、最初はお互い本気ではなかったが、徐々にギアを上げていった。
ビグラウト・テラネウスが最初に驚いたのが、時坂純也の動きだ。瞬足術を使えるビグラウト・テラネウスは、速さには自信を持っている。徐々に速さを上げていったのだが、時坂純也も反応してくるのだ。
速さが最大値まで達すると、流石に時坂純也の方が追いつけなくなってくる。だが、僅かな差しかない為、戦況に大きな影響は与えていないのであった。
次に攻撃と防御だが、時坂純也が本気を出すとビグラウト・テラネウスは苦戦を強いられる結果となる。魔力膜で攻撃は防がれ、動きも妨害される。自由を奪われながら、打撃を受けるのは初めての経験であった。
「はぁはぁ、思った以上ですね。凄くお強い、是非お力を貸して頂きたいっ」
ビグラウト・テラネウスは、時坂純也の実力をビクサス・ガイと同等か、上であると判断した。
時坂純也の実力は頼りになるが、襲撃者を確実に倒せるかは判らない。襲撃者がビクサス・ガイを倒した時が、本気であったとは思えないのだ。
「認めて貰えたみたいだな、俺の実力が通用して安心したよ。所で、救出に必要な戦力としては俺1人で足りるのかな?」
ビグラウト・テラネウスの考えは、襲撃者のリーダーに対して、出来れば時坂純也と二人がかりで挑みたかった。襲撃者は後2人残っている、その相手を出来る者も必要なのだ。
「襲撃者のリーダーは随分強いんだね、俺とテラ君の2人でやるのか。因みに此処に居るビャヌも強いから、あと一人実力者が必要ってとこかな?」
「そんな人が居るのであれば、力を借りたいです······」
時坂純也から、郷倉未知瑠や本城尊の話を説明する。実力は申し分ないが、黒街彰が懸念していた事を説明して判断を仰いだ。
「実は、情報を与えるのは勿論、俺達が地球の人と接触するのも規律違反なんですよ。せめて少人数に留めたいんです、1人だけ力を借りる事はできないですかね」
話し合いの結果、郷倉未知瑠に声をかける事に決まる。誰にも言わない約束が出来れば、それを信用して力を借りる、本城尊に黙っていられなければ、そこまでは許容する事になった。
それと、黒街彰たちにも役割が出来た。ファリアンス・レミアノと共に行動して、仲間を救出する際に助けとなる事だ。
こうして、救出する為の作戦が決まっていく。後は、郷倉未知瑠の力を借りる事が出来れば、救出作戦が実行となるのであった。




