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第二章【離れた地で】遠出の成果

黒街彰達は、谷底を探索した後、寄り道をしながら地上へ戻っていた。往復で3ヶ月程掛かった探索であったが、時間に見合う十分な成果を上げる事が出来たのだった。


戻ったその日は休憩にして、翌日に皆で手に入れたアイテムを鑑定する約束を、帰りの道中話しあっていた。


「ふぅ〜、やっと着いた。流石に疲れたよ。今日は、ゆっくり休憩しような」


「あ〜、母様の飯が食いてぇ、早く家に帰ろうぜっ」


時坂翔太が、走り出す。まだまだ元気が残っているようだ。


舘浦喜助が、走り出した時坂翔太を見てふと考える。この後、男達3人は共にダ・ビャヌの食事を頂く事になるなと······だったら食事をしてから別れる方が良いと、三日月愛を食事に誘う事にした。


結局、地上に戻っても4人で家に入っていく。家の中では、時坂純也とダ・ビャヌが疲れを癒やしているのであった。


時坂純也とダ・ビャヌは、4日前に探索から戻っていた。本城尊に誘われ、郷倉未知瑠を含めた4人で、初の五ノ扉へ入って行ったのだ。


「おかえり、随分長かったじゃないか。いい成果を上げられたか?」


「はい、宝箱も幾つか手に入れられたのと、新しい発見もあったんですよ。時坂さん、何か疲れてます?」


息子が帰って来ても動きのない事に、黒街彰は疑問を抱いた。まぁ、息子の時坂翔太は、母様の元に一直線なのだが······


「初の五ノ扉で張り切り過ぎちまってな、モンスターも強敵が多くて、流石に疲れたよ」


五ノ扉へ入って、2ヶ月程度の探索であった。時坂純也が五ノ扉へ入ったのは、黒街彰達が探索に向かってから、数日後だ。なので、時坂純也が五ノ扉へ入っていた事を4人は知らなかった。


「遂に行って来たんですね、あれですよね? 人類初ですよね、ど、どうだったんですか?」


互いに探索した内容を話ている間に、ダ・ビャヌが食事を用意してくれた。6人で食事を楽しみながら、更に、探索の話題で盛り上がる。そして話題は、此れから先の事へと変わっていった。


「まぁ、そろそろ三ノ扉へ行っても良い頃だろ。俺の見立てじゃ、実力的に問題はないんじゃないか?」


『繋ぐ未来園』の方針と、今回の目的が、舘浦喜助の装備を手に入れ、能力値を上げる事であったと話した。


「喜助君は、能力値が低かったもんな。それじゃ良い物をやるよ。丁度、喜助君向けの武器を手に入れたんだ、ビャヌ出してくれるか」


ダ・ビャヌが取り出したのは、鎚矛であった。現在、舘浦喜助が使っているハンマーと似た造りの鎚矛ならば、使いこなすのに苦労は少ない。時坂純也は、手に入れた時から舘浦喜助に渡そうと考えていた。


「え、いいんですか? す、凄く、良い物、ですよね······」


鎚矛と言っても、五ノ扉で手に入れた高ランクの物だ、2メートルの長さに先端には大きな球体、かなりの重量物であった。


「俺の予想は、ランクAだ。まだ鑑定してないから、正確には判らないけどな」


「良かったな、喜助。ランクAなら、能力向上効果で200上がるんじゃないかな。今回手に入れた物も含めれば、良い数値までいけるかもしれないぞ」


黒街彰が一番嬉しいそうにしている、自分だけで強くなる事より、チームが強くなる事を望むのは、良いリーダーになっている証拠であろう。


食事を終え、おしゃべりも一段落して解散する。明日の鑑定を楽しみに、皆の夜が過ぎて行くのだった。


翌日『繋ぐ未来園』に集合して、お楽しみの鑑定に向かう。鑑定機の前に到着すると、時坂翔太が今回の戦利品を一通り出し始めた。


「結構手に入れたよなっ、全部出していいだろ?」


取り出したのは、レザーパンツ、帽子、大盾、指輪、宝玉も3つ手に入れていた。それと、時坂純也から貰った鎚矛だ。


「良し、鑑定しよう。ランクBが多ければ能力値が大分上がるから、楽しみだな」


次々と鑑定機にセットし鑑定が行われる。ワクワクしながら、鑑定結果が載ったプレートを全員で見ていくのだった。


ランクB『紋珠のレザーパンツ』魔力増幅効果のあるレザーパンツ。


ランクC『葉風の帽子』風の加護を宿した帽子。


ランクB『勢炎の大盾』攻撃を受ける度に力を増す大盾。


ランクC『炎の指輪』攻撃力向上効果のある指輪。


宝玉は、『魔力の宝玉』『知の宝玉』『力の宝玉』の三種類。


ランクA『爆砕の鎚矛』魔力を籠める事で球体から爆発を起こす鎚矛。


「い、色々凄いね、ぼ、僕が全部装備するんだよね?」


「装備は全部、喜助に合うんじゃないかな、宝玉は、愛ちゃんに魔力で、残りは少し考えてからにしようか?」


「あのさ、『知の宝玉』って、な、何が上がるんだっけ?」


「『知の宝玉』は、スキルの熟練度を上げるって習ったな、喜助忘れたのか」


館浦喜助の質問に黒街彰が答える。初めて手に入れた『知の宝玉』だったが、アカデミー時代、一生懸命勉強した黒街彰は効果を覚えていた。


「とりあえずさ、装備を全部付けてステータスを鑑定しよう。正直、攻撃と魔力で被ってるから平均300は厳しいと思うけど確実に強くなってるだろ」


舘浦喜助が全てを装備すると、異様な姿の探索者が其処に現れる。武器と盾は重装備だが、服装は軽装備で、纏まりのないファッションが異様差を際立たせていた。


三日月愛が「買い物行く約束、忘れてないですからね」と声を掛けて、ステータスの鑑定機へと舘浦喜助が進んで行くのであった。


【名 前】 館浦喜助

【性 別】 男


【命 力】 91 

【魔 力】 75  (100)

【攻撃力】 102 (50)(200)

【防御力】 67  (30)(100)

【素早さ】 52  (30)(50)

【幸 運】 19

【スキル】 契約紋(特)

【魔 法】

【加 護】 


舘浦喜助のステータスが載ったプレートを確認する。黒街彰が計算すると、平均値は227まで上がっているのが判る。


「まぁそうだよな、後は、素のステータスを上げるのも頑張らないと駄目か。皆、俺の考えなんだけどさ······」


黒街彰が、自分の中だけで考えていた今後の予定を皆に説明する。結論は三ノ扉へ行く事、ステータスの鑑定結果で、平均300に到達していなくても三ノ扉へ向かおうと考えていたのだ。


「時坂さんにも言われたけど、俺達なら三ノ扉でもやっていけると思うんだ。後は、宝田さんにも相談するんだけど······皆は、どう思う?」


黒街彰の考えに、異論があるメンバーはいなかった。最終判断は、宝田和彦に相談してから決める事にする。


「じゃ、俺は『繋ぐ未来園』に行って来るよ。皆はどうする?」


「私は、喜助さんの服を買いに行きたいと思ってるんですけど、喜助さん、どうです?」


「ぜ、是非、お願いします。あ、でも、彰1人に任せていいのかな?」


「それは、全然大丈夫だよ。気にせず、買い物に行って来いよ。翔太はどうする?」


「俺は、彰兄と一緒に行こうかな。『繋ぐ未来園』の絵本に嵌ってるからさ」


時坂翔太は、意外にも読書に嵌っていた。『繋ぐ未来園』へ向かっている間、黒街彰に本屋や図書館を勧められる。


黒街彰は、時坂翔太が日本人的な、普通の暮らしはしていないと思い、本を読むのは良い事かと勧めたのであった。


『繋ぐ未来園』に到着すると、時坂翔太が走り出し、早速本が置いてある広間へ向かって行った。


(宝田さんから許可が出るかな? 力をつける為に、三ノ扉に行かなくちゃならないんだ······)


黒街彰が、三ノ扉へ行く決断をしたのには理由があった。


勿論それは力を手に入れる為なのだが、より効率的に行う方法をずっと考えていたのだ。


二ノ扉で、未開の場所を探索したのは、実験、或いは予行練習みたいなものであった。


日本に扉が出現してから、四ノ扉が開かれるまでは順調に進んだと歴史に記されている。それは、時坂純也にも確認済みであった。


扉が進む度にモンスターが強くなり、手にするアイテムも良い物になる。だが、二ノ扉が危険度Cと危険度Bのモンスターが主だった事に対して、三ノ扉は危険度Aが主なモンスターになるのだ、それは、かなりの実力が必要になる。その為、二ノ扉から三ノ扉へ探索場所を変える事が出来る探索者は少ないのだ。


次の四ノ扉に出現するモンスターも危険度Aである。本城尊の様な扉の鍵を求める実力者達は、四ノ扉を長く探索しているのだ。


結果、四ノ扉で行き詰まった実力者達が四ノ扉の中を長い間探索し、二ノ扉から三ノ扉へ上がれる探索者が少ないとゆう現状から、三ノ扉の中は未開の地が多く残っているのだ。


その状況を『繋ぐ未来園』で確認出来る地図と、聞いていた話から発見した黒街彰は、三ノ扉に向かうのを心待ちにしていたのだった。


「こんにちは宝田さん、ちょっと相談したい事があるのですが、時間貰えますか?」


「おっ、彰、何だか久しぶりだな。良かったよ、無事に帰って来てくれて」


宝田和彦が相談に乗る事を了承すると、黒街彰は、プレートを見せながら平均値が300に達していないが、三ノ扉に行きたいと話をする。


「ん〜、愛ちゃんはもう少しで、喜助は227か。他と比べて成長速度が早いお前達なら、焦る必要は無いんじゃないか?」


「焦る必要、俺にはあるんですが······それとは別にしても、喜助の実力は特殊スキルを合わせると相当高いんです。実力は、時坂さんにも認めて貰ってますし、三ノ扉でも絶対通用するので、行かせてください」


(逆に言うと、彰の焦りがパーティーを危険にするんだけどな······でも、彰は我慢した方なのかもしれないな)


「まぁ良しとするか、一様、後見人である郷倉さんには話を通すからよ、其れまでは待っててくれ。それと、仲間の意見は聞いているか?悩みが有るようなら、解決してから挑む様にな」


一方、服を買いに向かった館浦喜助と三日月愛は、楽しい時間を過ごせていた。


「喜助さん······」


館浦喜助が選ぶ服は、レザーパンツに合わせる事を考えていない上に、変わったプリントが特徴的な独特のセンスであった。


「折角レザーパンツが格好いい系なのに、そのセンスはないですよ。もう、私が選びますから」


三日月愛が選んできたのは、カーディガンで柄は、グレーとブラックの市松模様。中には白いTシャツに黒い小さなプリント入っている物を選んできた。


「これ、着てみてください。試着室あっちにありますから」


服屋で試着をした事もなかったので、恥ずかしそうに試着室へ入って行く舘浦喜助。試着して出て来ると、三日月愛に「ど、どうかな?」と聞いてみるのだった。


「いいじゃないですか、格好いいです。次は、これも着てみてください」


三日月愛の腕には、黒いジャケットや原色カラーのパーカー等がかかっていた。それぞれ試着すると、どれも似合うと嬉しそうにはしゃぐ三日月愛の姿があった。


(愛ちゃん凄く楽しそう、やっぱり女の子は買い物とか好きなんだろうな······いつもより笑顔がとっても可愛いいかも)


「ふふ、良い買い物が出来ましたね。元々黒いパンツに合わない服を選ぶ方が難しいんですよっ」


「え〜、そ、そうなのかな。愛ちゃんのセンスが良いんだと思うけど······」


オシャレな若者風に変身した舘浦喜助も、それを選んだ三日月愛も嬉しそうに帰っていた。探索以外で充実した時間を過ごす事も大事だと、2人は満足していたのであった。


館浦喜助と三日月愛が『繋ぐ未来園』へと入ると、広間で調べ物をする黒街彰と、横で絵本を読む時坂翔太の姿を見つける。


「ただいまです。彰さん、どうですか喜助さんの格好?」


「おお、イケメンになってる。喜助、めちゃくちゃ似合ってるよ」


「本当だっ、喜助兄、これは女の子にもてちゃうんじねぇか?」


「ちょ、ちょっと、褒め過ぎだよ。そ、それより彰、宝田さんとの話は、ど、どうなったの?」


照れながら話題を変える館浦喜助。黒街彰も本題を話したかったので丁度良かった。


「宝田さんの許可は貰ったんだけど、郷倉さんにも許可を貰う必要があるみたいなんだ。まぁ、多分大丈夫だと思うから、今後の予定を話しておくよ」


黒街彰が調べた内容や、発見した内容を話す。三ノ扉では、未開の地だと思う場所に見当を付けている事も。


「こんな感じで考えてるんだけど、どうかな? それと、戦闘とか探索中とか、悩みがあったら話してほしいんだけど······」


「す、凄いよ。彰は色々考えてて、ぼ、僕も、もっと貢献したい······だから、もっと強くなるには何をしたら良いかって?それが悩みかな」


「あの、私も強くなりたい。今のままじゃ硬いモンスターに通用しないのが悩みだって気付いたから」


「俺の悩みは、双剣を使いこなす事だな。ちょっと母様に訓練をお願いしようと思う」


それぞれの悩みを打ち明けてくれた。皆強くなる事を目標にしているのは、黒街彰にとって嬉しい事であった。黒街彰も同じ目標をずっと持っているのだから。


「良し、三ノ扉に行く前に、強くなる方法を俺も一緒に考えるよ」


「ね、ねぇ? 彰は悩みないのかな?」


舘浦喜助が黒街彰を心配していた。『魂の補完石』を取り返す為に、力を求めて北の地にやって来たのに、最近は仲間の事ばかり考えているのだ、負担を抱え込まずに相談して欲しかった。


「俺だって強くなりたい、早く強くなりたいって思うのが悩みだけど······解決方法は考えてあるんだ、其れは特殊スキルを手に入れる事で、その為に、三ノ扉で未開の場所に行くんだけどさ。それって、皆のお陰で悩みを解決して貰ってるのと同じなんだよな······だから、皆ありがとうな」


北の地にやって来てから、行った事は全て、皆の為であり、自分の為なのだ。改めて気付く事で、仲間への信頼や感謝を肌で感じていた。


どんなに強力な武器を手に入れるよりも、仲間への信頼を手にした事が、最大の成果だったと、今後への期待を大きくさせる黒街彰であった。

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