表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/79

第一章【旅の行方】時坂純也と異界の民

二人に近づいて来た男が声を掛ける。

「強そうなモンスターの気配が合ったからな、無事で良かったな、翔太」

「あれ、何で居んの? 母様、オヤジっ」


二人を待っていたのは、時坂翔太の両親であった。黒街彰と出会う前から、実はずっと見守っていたのだが、時坂翔太には内緒である。


「翔太、中に居たのは二人だけか?」

「そうだぜ、二人で大物をやっつけたんだ」

(他にも二人、気配があったんだがな······まぁいいか)


「翔太が世話になったな、有難うよっ」

「いや、此方こそです、二人だったからこそ、強敵にも勝てたといいますか······あっ、黒街彰です」

「礼儀正しいのは良い事だな、俺は翔太の父親で時坂純也(ときさか じゅんや)だ、こっちが俺の嫁、ダ・ビャヌだ」

「私、ダ・ビャヌ、息子、助け、感謝」


(外国の方なのかな?それより······もしかして?)

「えっ、時坂純也さんって、Sクラス探索者の時坂純也、さん、ですか? あ、あのっ」

探索者の中でも、高ランクになると雑誌に紹介されている事がよくある。

時坂純也は、Sクラスで唯一のソロ探索者として有名であった。


「おっ、バレちまったか。俺の家族の事は内緒だぞ」

「は、はい。あ、あの······聞きたい事があるんですけど、聞いても良いですか?」

黒街彰は、いきなり質問は失礼かと思ったが、Sクラス探索者に質問出来るチャンスが次いつ来るかも分からない為、質問する事にした。


「人を生き返らせる方法をご存知ないでしょうか?」

「また、すげぇ質問だな······なんか理由があんのか?」

黒街彰は、人を生き返らせたい理由を全て正直に話す。更に『魂の補完石』の話も隠さずに話したのであった。


「残念だが人を生き返らせる方法は知らないな、でも······そうだな、ちょっと長くなるけど聞かせてやるか」

話が長くなると前置きする時坂純也、普段は話すことなどない自身の過去を話し始める。


✩✫✩✫✩


今より200年も昔、地球に地下へ続く階段が現れた時期の話だ。


階段を降りた先にある扉、更に扉の向こうに広がる異界に対して、人類はどう対応していくのか決めかねていた。


日本では、自衛隊が調査に乗り出し、お宝を手に入れた事が話題になっていた。

この時に、扉の中へ忍び込んだ人物が時坂純也だ。


格闘技のキックボクシングをやっていた時坂純也は、遭遇したモンスターを次々に倒していく。


そして、幸運にも金の宝箱を引き当てる。中には宝玉が入っていた、スキルの宝玉である。

スキルの内容は、魔力操作のスキル······金の宝箱から出るスキルの宝玉は、特殊スキルであり強力であった。


身体の外に魔力を作り出す事が出来るようになった時坂純也は、一ノ扉の中で色々試していく。


攻撃や防御、更には移動手段にも使えた。

使い方は、攻撃面ではモンスターへ当て爆発させたり、鋭い形にすれば剣のようにも使えた。


防御面では、自身を覆うようにすれば相手の攻撃を弾く事が出来た。威力の高い攻撃を受ける時には、魔力を厚く展開させるなど、どんな攻撃にも対応出来る。


移動面では、足の裏に作り出した魔力の爆発で加速したり、着地でも魔力で受ける事で高さも関係なく移動出来ていた。


2年程モンスター狩りや、遺跡などの探索に夢中になっていた時坂純也が、初めて遭遇したのが、後に鍵の守護者と云われるモンスターであった。


今で言えば、危険度C程度のモンスターである。

3メートルの巨体にでっぷり出た腹が特徴的なモンスター。土の魔法を使い、一ノ扉内で魔法を使うモンスターとの遭遇も初めてだ。


だが、スキルを使いこなす時坂純也の相手にはならない。終始圧倒した闘いで勝利を収めると、黒の珍しい宝箱が残されていた。

宝箱の中には鍵が入っている、この時一ノ扉以外は開かなかった事から、時坂純也は二ノ扉の鍵で有ると確信していたのだった。


この時期は、世界に混乱が起き始めていた。力を求めた人々が、政府の管理に反乱を起こしたのだ。日本でも、青森県の八戸市に出現した扉を攻略していた自衛隊が、反乱を起こしていた。


時坂純也は、反乱等には関わらない。一人で自由気ままに異界を探索するのだ。

そして、一人で二ノ扉の中へ入って行く。


二ノ扉の中へ入ると、ジャングルが広がっていた。

少し歩くと、寒気のような感覚に襲われる······同時に骨で出来た槍のような物が時坂純也めがけて飛んでくる。


飛んできた槍を、紙一重で躱す。飛んで来た物を見ると、地面に深々と刺さっている······二ノ扉の中は今迄と比べられない程に危険な場所であった。


モンスターの姿が確認出来ない、その間にも槍のような物が襲ってくる、姿が見えず闘えない状態を嫌った時坂純也は、魔力操作を使ってその場から移動する。


数kmは移動しただろうか、しつこく襲ってきた槍が、ようやく来なくなる。


その後も探索を続けていると、別のモンスターと遭遇し、戦闘することが何回かあったが、そこまで苦労することなく倒す事が出来ていた。ニノ扉の中では、モンスター一体での強さの幅が大きいのだと、この時の時坂純也は思っていたのだった。


2日程、新たな異界を彷徨っていた。そんな時に、殺気と同時に槍が襲いかかっくる。

「くっ、まだ諦めてなかったのかよ······」

初日に遭遇した姿も見せないモンスターが、追いかけて来ていた。


「しつけぇな、それじゃぁ追って来たことを後悔させてやるよ」

時坂純也は集中する、槍が飛んで来る位置を正確に見極めるつもりであった。


槍が見えた瞬間、槍へ突っ込むように動き出す。魔力操作を使い、全力の動きでモンスターが居るであろう位置へ向かって行く。


(見つけたぜ、こいつ人型か······変な仮面なんかつけやがって)

相対した瞬間、互いに攻撃に移る。


仮面のモンスターが腹辺りから二振りの剣を出して向かって来る。

時坂純也は、魔力膜を展開して攻撃を受けると相手の腹へ魔力を纏った強烈な蹴りをくらわせる。


確実に当たったと思われた蹴りは、空間をすり抜けるように空振りとなる。

(なんだっ、今のは······)

態勢を崩した瞬間を見逃してはくれなかった。


相手の連撃に合わせて、魔力膜を厚くして防いだが、お返しとばかりに腹に強烈な蹴りを貰ってしまった。


(······んっぐっ、はぁ、魔力膜の上からこの威力かよっ)

吹き飛んだ距離で、一度落ち着く。相手がゆっくりと近づいて来るのが見える。


「舐めんなよっ、こらっ」

叫ぶと、モンスターへ突っ込んで行く。

モンスターは、時坂純也が来た瞬間に斬り伏せる態勢だったが······


両手の辺りで爆発が起きる、時坂純也が放った魔力がモンスターの両手を襲ったのだ。

「その仮面をぶっ壊してやる」

時坂純也の掌には、高めた魔力が渦巻いている、掌底のような形で仮面を狙っていく。


砕けた仮面、モンスターの素顔が、顕わになるのだが······


「おっおっ、かっ、可愛いい」

モンスターかと思っていた時坂純也は、まさか素顔が人と同じ······いや、美しい女性の顔に目が釘付けになる。


油断したその瞬間に、腹に深々と剣が突き刺さっているのだった。

(反則だろ······こんな最期かよ)


次に目覚めた時は、見知らぬ住処であった。

状況が解らない······だが隣には仮面を外した美しい女性が寄り添って居る。


時坂純也と闘っていたのは、美しい女性。この星に住む人間である、この星で生きる最後の人間、異界の民との遭遇であった。


✩✫✩✫✩


「こんな感じでな、嫁とは出会ったわけよ」

この後、数年を掛けて言葉を教えた。それからちゃんと意思疎通が出来るようになったと付け加える。


「何だか凄い話しですよね······」

話が凄すぎて驚きを通り越してしまった。

「何で、こんな凄い話をしてくれたんですか?」


「これは、俺達家族の秘密だよ。これを君に話した理由は二つだ。一つは息子を助けてくれたお礼さ」

少し間を置き、次の理由が大事だからと前置をして話し出す。

「二つ目の理由はな、秘密の中には異界の民という公にない情報があっただろう? それを知られた場合どうなるか解るか?」


「えぇと、皆どんな人物か知りたくなりますよね」

「迷惑にならない程度で聞いて来るなら、許してもやるさ······でも答えはな、奪うために襲ってくるんだよ。君の持つ『魂の補完石』ってアイテムは、人を生き返らせる可能性を秘めているんだ、欲しがる奴は大勢いるだろう」


過去に、とある組織に狙われ、襲われた事があった時坂純也は、二つ目の理由として、自身の経験から、大切な注意をしてくれているのであった。

「ちっと暗い話題になったがよ。扉の中の世界は、まだまだ知らない事だらけだ、きっと人を生き返らせる方法も有ると思うぜ、諦めないで頑張るんだぞ」


「有難う御座います。貴重なお話に······アドバイスまで。それに、俺は絶対に見つけるまで諦めませんから、頑張りますよ」


そろそろ別れの時が近づいてきた。時坂達、家族は、この後も遠く探索を続けて行くと言う。

黒街彰は、計画通り此処で引き返す判断をするのであった。


別れのタイミングで、ダ・ビャヌが黒街彰に近づいて来る。

「私から、礼、受けろ」

片言の言葉と共に、黒街彰へ渡した物、それは魔物除けの魔導具であった。


「これって翔太が持っていたのと同じ、ま、魔導具ですか?」

「そうだ、探索、絶対、役立つ、強くなれ」


「こんな高価な物······有難うございます。これがあると効率が全然違うと思うので、翔太に負けないように強くなってみせます」

「俺だって負けねぇぞっ、また絶対会おうよ兄ちゃんっ」

「ああ、いつか本当にパーティーを組めたらいいよな。それじゃあ、またなっ」


黒街彰と別れた時坂純也は、ダ・ビャヌへ声をかけた。

「珍しいじゃないか、ビャヌが他人に興味を持つなんて」

「恩、返す、当たり前だ······それに、あの子、強くなる」

「そうだな、彰君か、攻撃や防御の動きに、翔太に合わせた動き、戦闘に必要な良い勘を持っているのかもしれないな。おい翔太っ負けんなよ」


「俺だって此れから強くなるだ、てかオヤジ、200年以上生きてんだろ? 本当に人を生き返らせる方法知らねぇの?」

「本格的に探したわけじゃないが、聞かねぇんだよな、生死に関わる魔法やアイテム、彰の話しが初めてなんだよな、まぁ此れからはその情報も集めて行こうぜ」


世界に扉が現れて200年、生死に関わる初めてのアイテムの情報。だからこそ、時坂純也は狙われる危険を教えたかったのであった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ