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第二章【離れた地で】真実を求めて

録画された水元茜の映像をタブレットで確認しながら、人物の特定をしているのは上原弥江であった。


目的の人物である、上尾泰士は発見出来てないが、水元家に関係している人物の映像と名前を少しずつ合致させている。


「映像で護衛している人が何人か出入りしてますけど、上層部の人間がいないのはどうゆう事ですかね?」


水元家の屋敷近くの喫茶店で、滝陽子と上原弥江がコーヒーを飲みながら会話していた。


「首相官邸の方かぁ、異界で探索でもしているのでしょう? はぁ······それにしても、私にこの任務は向きませんわねぇ」


余りの退屈な時間に、痺れを切らして何処かに行ってしまいそうな滝陽子。それを上原弥江が会話で引き止めるのも、数日の流れになっていた。


一方、ビルの3階で人物の特定をしている高宮長次が、水元茜の側近らしき人物を発見していた。


「映像で、水元茜の後ろに控えていた人物が居ます。男性なので、側近の更井賢人だと思われますっ」


「おいおい、興奮するなよ······小さい声で言ってくれるか。まぁ側近が居るなら、こっちに水元茜も滞在しているかもな」


導光治貞が意見を述べる。戻ったら、首相官邸の監視に力を入れるべきか北陽公雄と相談する予定だ。


北陽公雄の方も、手掛かりになりそうな情報を入手していた。それは、春日谷龍の情報にあった謎の護衛、その人物が歴代の首相と映っているのを発見したのだ。


図書館で調べていたのは、歴代の首相について残された映像と記事。北陽公雄は、図書館にある物を全て確認していった。


調べた結果、その人物が3代の首相どころか、200年前の映像にも映り込んで居るのを発見したのだ。


全員が宿へ戻ると、現在手に入れた情報を共有し、作戦を変更する。


「僕が発見した人物は、200年前から存在している『原初の者』でした。ずっと日本を裏で操っていたのであれば、強大な組織で有るのは間違い無いでしょう。この組織が手紙を送ってきた第三者の可能性が高いと思います」


「へぇ〜、そんな事を調べていらしたのねぇ。流石、頭脳派の公雄さんだわぁ。本城様以外の『原初の者』だなんてぇ血が騒ぎますわねぇ」


「血を騒がせないでください、此れこそ慎重に動からければならない理由なんですから······」


北陽公雄の考察を、皆に説明していく。


日本を裏で操っていた組織も、北の地には手を出して来なかった。それは、本城尊の力が強大である為、手が出せなかったと予測する。同じ『原初の者』であれば力が拮抗していてもおかしくないのだ。


そこで、中央で力を付けた組織、水元家を利用したのだ。一度日本を明け渡し、本城尊と争わせる。何方が勝とうが、無事で済まないのは明白だろう······そして、弱った所で登場し、日本を統一する。 


それが、第三者の筋書きだと北陽公雄が皆に言うのであった。


「この情報だけでも持ち帰る価値があります。本城様の意見を伺いたいのですが、春日谷さんの件も、真実を知らなければなりません。全てが、我々の存続に関わる重大な事に繋がるのです」


皆に、今行っている事がどれだけ真剣味が必要かを解らせ、作戦を継続する。北陽公雄が、北の地にとって重要な人物なのかも、此処に居る皆が理解していくのであった。


翌日からは、首相官邸をメインに偵察する事にする。徒歩や車からの観察、その他にも街中を歩いたり、異界への扉周辺も探す。範囲も広げ上尾泰士を探すのも1ヶ月以上が経過していた。


北陽公雄は、焦りからか眠れない日々が続いていた。頭が回らない感覚にストレスを感じて歩いていると、発見は突然にやって来る。異界への扉周辺を観察している時に、上原弥江の震えた声が発せられる。


「い、居ました。上尾泰士です、あ、あともう一人、一緒に居るのは、山岸徹って人です」


北陽公雄達は、全員が揃っている。対して上尾泰士は2人だけだ、襲うには絶好の機会であった。


向かう方向からして、首相官邸だと思われる。ある程度、地理を把握していた北陽公雄が実行する場所を指定し、先回りする為走り出した。


北陽公雄が指定した場所は、人通りが少ない道だが、人目が全く無いとゆう訳ではなかった。このチャンスを活かすには目撃される事も承知の上だ。


「俺が動きを止める。後は滝さんに任せるよ」


先ずは、導光治貞がスキル重力操作で、上尾泰士と山岸徹の動きを止める為に待ち構える。少しすると、会話をしながら2人のターゲットが歩いて来た。


「くれぐれも、命を奪うのは控えてください」


北陽公雄が言葉を発したと同時に、導光治貞がスキルを発動する。


上尾泰士が何倍もの重力に押し潰され、地面に膝をつく。だが、もう一人が瞬時に距離を詰めて来るのであった。


「誰だ、テメー等」


導光治貞は、無名の人物に奇襲が躱されるとは思いもよらず、唖然としていた。それに、上尾泰士にスキルを使っている為、自分では応対出来ないでいるのだった。


山岸徹の刀が導光治貞に襲い掛かる。上段から斬り裂く太刀筋を邪魔したのは、滝陽子であった。


「あらあらぁ、素敵な殿方がいらしたのねぇ。貴方は、私と遊んでいてくださいねぇ」


山岸徹と滝陽子が戦闘している間に、上尾泰士へ近づくと、情報を聞き出す為に手紙を取り出した。


当初、誘拐する予定であったが、第三者の存在を知った北陽公雄は、火種を最小限にする為、この場で知りたい情報の確認をする事に変更していた。


「この手紙が北へ送られて来ました。内容は、春日谷さんが大膳忠行に殺害された。という内容です······此方は、第三者が我々と水元家を争わせる為に送って来たと予想してます。どうか、真実を話してください」


上尾泰士も、簡単に口を割る男では無い。無言で抵抗しながら、状況の整理に頭をフル回転させていた。


「我々が、貴方達2人の命を奪えば、争いが激化してしまいます。喜ぶのは日本を裏で操る人間ですよね? 真実を話してケジメをつける、そして手を結ぶのが最善でしょう? 其れ共、貴方は何も知らない雑兵ですか?」


情報の断片を混ぜながら、話す様に誘導する。更に、挑発も合わせて行っていく。


「ぐっ、貴様ら見た事あるぞ。北の十傑か? 何を言われても、はい、そうですかって話す訳がないだろう······」


一方、刃を交えている2人は、実に楽しそうに闘っていた。


「まだまだ速くなりますわよぉっ、もっと、もっと楽しませてくださいねぇ」


「くっ、かっ、あんた名前は? おっと、何ていうんだよ?」


山岸徹も滝陽子の攻撃を躱しながら、名前を聞く余裕を見せていた。


「私は、十傑の1人。滝陽子ですわぁ、貴方って私好みの良い男ですわねぇ」


2人の戦闘を見ながら、北陽公雄が口を開く。


「貴方は、良い部下をお持ちのようですね。でも、相手が悪いのは分かるでしょう? まだまだ伸び盛りの部下を失う前に、判断を下すのが上司の役目ですよ」


(勝手な事を言いやがって、俺の判断で話せる訳ねぇだろうが······)


その時、上尾泰士が持っていた、連絡用の魔導具が起動する。


「コレ、出る訳にはいかないですよね?」


北陽公雄が導光治貞に耳打ちする。

(余計な事を言ったら、直ぐに魔導具を取り上げられますか?)

(出来るが、魔導具に出る意味はあるので?)

(このままでは、拉致が明かないので変化が欲しいんです······駄目なら、当初の予定通り誘拐します)


「良いですよ、魔導具に出て。それで、全てを話す許可を貰いましょう」


上尾泰士が連絡用の魔導具に出ると、相手は清水司であった。


(幹部が、無様に捕まりやがってよ······目の前の相手に代われ)


上尾泰士は、清水司に何も言えないまま、魔導具を北陽公雄へと渡す為に、つき出す。


「代わる様に言われました······」


上尾泰士から魔導具を受け取ると、北陽公雄と清水司のやり取りが始まった。


「代わりました、どちら様ですか?」


「清水司、其処に居る間抜けの上司ですよ。貴方は誰か教えて貰えるのかな?」


「私は、北陽公雄と申します。平和の使者だと思って頂ければ幸いです」


「随分と物騒な平和の使者だな、何が知りたくて上尾を狙ったんです?」


「手紙が届いたんです、春日谷さんを大膳忠行という男が殺したと······此方は、真実を知らなければならない」


「手紙ですか······真実を知ってどうするのです?」


「出来るだけ平和にケジメをつけたい。それが私の希望なのですが、全面戦争なんてお互い望んでないでしょう? 得するのが誰か、貴方も判ってるんですよね」


「は、はっ、侮れませんね、流石、北の頭脳と言われる北陽公雄さんだ。我々も最近知った情報だったのに、どうやって知ったのだか······いいでしょう、真実を話します。春日谷龍にとどめを刺したのは、大膳忠行ではなく、佐久間仁です」


「っ、其れは真実ですか? 証拠は?」


「証拠? そんな物有りませんが、ケジメをつけるのに佐久間仁の命は必要ですよね? その時に本人に聞いてはどうですか?」


「······佐久間仁の居場所はご存知で?」


「勿論知ってますし、手打ちの為に連れて行きますから、ね」


「随分と協力的ですね······」


「得をするのは誰か? 貴方の言葉ですよ、後日連絡をします。其の魔導具は持って行ってください。それで2人は無事に返して貰います」


「······判りました。お待ちしています」


北陽公雄と清水司のやり取りで今は決着となる。その間も、闘っていた2人。山岸徹は血だらけになっていた。


「滝さん、止まってくださいっ。2人を返す事で進展があるんですっ」


「あっ、うるせぇなぁ。今一番楽しい所なのによぉ······」


滝陽子の口調が変わっていた。それは、本気になっている証拠であった······何故なら、滝陽子の顔からも鮮血が流れているのだ。


「はぁはぁ、今日は美しいレディに譲るが、次は······俺が勝つからなっ」


2人共に、一度言葉を発すると冷静になる。そして笑顔で見つめ合う目が再戦を誓っていた。


魔導具を持って、上尾泰士、山岸徹と離れると、北陽公雄が皆に言う事があった。


「急いで帰りましょう、任務は完了です」


これ以上のリスクは要らないと、急いで帰る為に車に乗り込む、だが帰りの車の中で、不満気にしているのは滝陽子であった。


「真犯人が佐久間仁なら、その始末までが任務ではないのぉ?」


「佐久間仁は十分危険ですよ······決闘では、郷倉様が相手だったから余裕に見えましたけど、あのスキルは間違いなく最強の1つです。其れに、罠であった場合、僕が助かる確率はゼロですから」


中央から離れて行くにつれて、北陽公雄は胸を撫で下ろす。


今回の成果は、第三者の存在が実在している事。そして、その人物の映像を手に入れる事が出来た事。


更に、春日谷龍の仇が佐久間仁だと発覚した事。そして、水元家の提案で、佐久間仁の命で手打ちにする約束を取り付けた事。


北陽公雄は全てを信じた訳ではなかったが、明らかに進展出来た状況に安堵すると、目を瞑り眠りにつく事が出来たのであった。



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