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第二章【離れた地で】北の動き

黒街彰が探索に勤しんでる間、北の地で思い悩む男の姿があった。それは、北陽公雄だ。本城尊が五ノ扉の鍵を手に入れて戻った日から数日、まだ手紙の事を報せる事が出来ないで悩んでいたのだ。


(もう時期、五ノ扉へ向かうんだろうな······春日谷さんと連絡も取れないし、やはり報告しなければならない内容ですよね)


本城尊の気分を害するのが恐い訳ではない。予想とは違い、続いている平和を壊すのが嫌だったのだ。


だが、話さない事を許されない内容であった事から、本城尊と二人で話せる時間を予定していた。


ドアを叩く音と共に、本城尊が入って来る。


「おう、どうした? 俺を呼び出すって事は、良い話じゃねぇんだろ?」


本城尊は、水元茜が日本の支配者として動いた事だろうと、予想していた。間違ってはいなかったが、事態は予想よりも上回っている。


「此れをお読みください······」


春日谷龍が、大膳忠行の手によって命を失ったと書かれた手紙を本城尊へ渡す。


「ん? 手紙か、誰からだ?」


短い内容だが、読んだ瞬間、本城尊の顔色が変わるのを北陽公雄が見つめている。


「宛先は不明です。手紙が届いた後、春日谷さんと連絡が途絶えている事は確認しました······」


拳を強く握り、怒りが解放されるかと思われたが、平静を保った本城尊。手紙を届けた者の存在と、自身が不在の時に、水元茜が北の地へ来なかった理由が気になるのだった。


疑問を北陽公雄へぶつける。勿論、北陽公雄も同じ疑問を持ち、考えを巡らせていた。


「手紙については、単純に考えると水元家と争わせるのが目的かと思われます。仮に水元家が手紙を出したのならば、中央に誘き寄せる罠かと······」


次の考察を合わせると、水元家との抗争を望む可能性が上がると前置きをして、水元家が北の地に来なかった理由、その考察を話し出した。


「本城様が不在なのにも関わらず、北の地に来れなかったのは······第三者の存在があったからだと予想します」


手紙の存在が全ての考察を繋げていた。


「この様に考えさせるのが目的の可能性も有りますが、情報が足らない今、大きく動くのは得策では無いと忠言します」


「ならば、第三者を見つけ出せ。それと、大膳という奴の首で今は手打ちにしてやる」


北陽公雄は、話の流れから抗争を回避出来たかと思ったが、話は簡単にはいかなかった。


今でこそ、北陽公雄が政治を仕切らせて貰っているが、一人で色々な分野を機能させるなど不可能であった。まして、諜報員の育成などしておらず、情報収集は困難を極める事が予想されるのであった。


「先ずは、情報収集から始めます······ですが、私の得意分野では無いので、時間が掛かる事はご了承ください」


北陽公雄の言葉に、本城尊は冷静でなかった自分に気付く。北陽公雄は平和、主に自治に特化した政治家だ。頭は良いが、何でも出来る訳ではなかった。


「人を付ける、誰が適任だ?」


実力者は、本城尊と同じで探索に命を賭けた者ばかり。北の地に適任者など思いつかない······


「適任者は居ませんが······しいて言うなら、頭も切れて人望のある郷倉様が良いですね」


「分かった、増岡と鹿尾も付ける。他にも要望があったら言ってくれ······」


こうして、情報収集を進める事になった北陽公雄は、最善の結果にする為、自身が頑張らなければと決意を固めたのであった。


✩✫✩✫✩


中央に関して、詳しい人物であった春日谷龍を失った事は、情報収集をするのに大きな痛手となっていた。


北陽公雄は、何度か話し合いの場を設けたが良い案が出ずに困ってしまう。この任務を共にする事となった十傑の面々からは、交戦的な案しか出なかったからである。


とりあえず、一人で考える時間を貰う事にした、北陽公雄。


(勿論引く必要はないのですが、血を流す必要だってないでしょうに······)


大膳忠行を始末するにしても、手紙が真実か確認しなければならなかった。


先ずは、手紙の件から調査をする事にした北陽公雄は、二通りの方法で頭を悩ませている。


(水元家とコンタクトを取るか、手紙の送り主を探し出すか······)


手紙の送り主に関しては、手掛かりのない状態から始めなければならない、時間だけが経過してしまう可能性が大きい。


水元家とコンタクトを取る事が出来れば、何らかの進展は望めるだろうが、敵に直接聞く事になる。情報の真偽や、交戦となるリスクを侵さなければならなかった。


本城尊から任務を与えられて数日が立っている、意を決して、動く事にした北陽公雄は、郷倉未知瑠、増岡大輝、鹿尾弾に招集を掛けるのであった。


「僕も良い案が浮かばなくて困りました······このまま何もしない訳にはいかないので、少し手荒な手段に出ようと思います。協力して貰えますか?」


北陽公雄が取った選択は、水元家とコンタクトを取ることであった。それは、平和的ではなく、一般に面の割れてない人間で中央へ向かい、水元家の人間を誘拐して情報を聞き出す、まさに手荒な手段であった。


「それじゃ、私はいけませんね。それにしても、北陽さんまで行くのはリスクが大きいのでは?」


「郷倉様が行けるのであれば、私は残る選択をしたのですが······」


いざという時に、止める事が出来る人間が北の地には居ないのだ。もしも戦闘が発展してしまった場合、十傑を失う事が最大のリスクと考え、北陽公雄が指揮を取る為に同行するのであった。


もう一つ共有しておきたい事、それは春日谷龍が遺してくれた中央の情報だ。


この数日は、長い年月を掛けて北の地へ送られた情報から、必要な物だけを厳選するのに大半の時間を費やしていた。


乱雑に収納された文は、纏めるだけでも一苦労だったが、有益な情報を幾つか手に入れる事が出来ていた。


「水元家の情報も幾つか見つかりました。皆さんで共有しておきましょう」


情報に載っている、水元家の組織構成を説明し、主要人物を挙げていく。


「水元茜を筆頭に、数人注意が必要な人間がいます。春日谷さんより永く生きている人物達です」


水元茜の側近、更井賢人と戸倉芙美、組織の纏め役である、菊本十三、清水司、大膳忠行、木場多一郎この6人は、春日谷龍が中央に潜伏した時には既に存在が確認されていた。


「今挙げた人物には接触しないでください。狙うのは、情報を扱う部隊のナンバー2、上尾泰士という人物です」


情報を共有した後は、中央に向かう人選だ。人を探す能力を持った者と、制圧出来る力を持つ者を北陽公雄が求める。


人選については、北の地に居る探索者をよく知る、郷倉未知瑠が担う事になった。


その間、北陽公雄は春日谷龍が遺した資料を確認する。1つ気になる情報を見つけていたのだ、もう一度、連なる情報がないかと洗い直す時間が出来ると郷倉未知瑠に感謝するのであった。


北陽公雄との話し合いが終わり、郷倉未知瑠が、本城尊へ作戦会議の内容を報告する。そして、必要な人選について許可を求めていた。


「上級探索者2名に、導光と陽子を考えております。どうでしょうか?」


本城尊は、北陽公雄の行動が決まるまで五ノ扉へ向かうのを我慢していた。此処で問題になるのは、戦力が分散される事である。


「いいだろう、それじゃぁ俺と未知瑠で五ノ扉へ行くか? 他の奴らは、此処の守備に残しておく」


「二人きりで、まるでデートですね。それは、楽しみです」


「嫌、時坂も連れて行く。二人では対応出来ない事態があるかもしれねぇからな、あいつの実力は前回見て頼りになるのは分かったからよ」


(ちっ)「そうですか······時坂さんには、私から声を掛けておきます」


こうして、五ノ扉へ行く人間と、中央へ向かう人間、北の地を守る人間とで別れる事が決まったのであった。


翌日には、本城尊が五ノ扉へ向かって行き、中央へ向かう面々も準備を整える。その中に居る2人の上級探索者は、人を探すのに適した能力を持っていた。


上級探索者の1人は、高宮長次(たかみや ちょうじ)。スキルは視力強化(大)で、視力を10程度まで上げる事が可能であった。


もう1人は、上原弥江(うえはら やえ)。スキルは鑑定眼(大)で、物や人を見れば名前が判るというスキルだ。(大)まで上げても名前しか判らない事から、不遇なスキルであったが、今回の任務では最高の仕事が出来ると期待していた。


郷倉未知瑠から、北陽公雄の言う事を聞く事と、北陽公雄を守る事が最重要であると指示を受けた4人が北陽公雄と合流する。


そして、全員が一般探索者の格好をして中央へ向かう。北陽公雄にとっては、初めて危険な任務へと旅立つのであった。


中央へは、大型の車で移動する。向かう途中に、北陽公雄が上原弥江にスキルの確認を行っていた。


「鑑定眼について詳しく教えて貰ってもいいかな?」


上原弥江の説明では、鑑定眼のスキルを発動させるには直接見る必要があるのだと言う。写真等で確認は出来ないが、触れるなど厳しい制約が無いのは有り難かった。


「直接見れば判るんですね、中央で上尾泰士を見つけるには、上原さんのスキルが頼りですから宜しくお願いします。それと、中央に着くまでこの名簿に載る名前を覚えておいてください」


春日谷龍の情報から、水元家の情報だけを纏めた資料を作っていた。それを上原弥江に渡す。


中央まで戦闘等はなく、所々塞がれた道は、導光治貞のスキルで突破する。順調に中央へ向け進んで行き、数日を掛けて中央へと辿り着く事が出来た。


中央に着いたら、先ずは拠点に出来る宿を探す事から始める。


(中央に伝手がないのは、困った物ですね······春日谷さん1人に頼っていたのが、不味い事に気付くべきでした。帰ったら諜報活動を仕切れる人材を配置する様に進言しましょう)


水元家の屋敷からは距離がある街へ入ると、普通の宿へ入って行く。夜に到着した事から、今日は泊まって、明日から行動を開始する予定だ。


翌朝になると、水元家の屋敷付近へ、高宮長次と滝陽子、首相官邸へ北陽公雄、上原弥江、導光治貞が向かって行く。別れて行動したのは、留まって人間観察が出来る場所を探す為の下調べであった。


水元茜が居る場所を見張る予定であったが、水元茜は、日本を手に入れ、女王の座に就いた事を大々的に公表した後は、公の場に姿を現していない。その為、居場所を掴む手掛かりが無い以上、可能性が高い2箇所で張り込みをするしか手段がなかった。


高宮長次と滝陽子が水元家の前を素通りする。離れた位置からも屋敷を観察するが、屋敷の中まで見る事は叶わなかった。


「ん〜、駄目ですわねぇ。はぁ、強そうな人と出会えると嬉しいのですけどぉ······」


「た、滝さん。くれぐれも戦闘は控えてくださいね。少し離れますが喫茶店がありましたので、其処に入りましょう」


高宮長次が喫茶店へと誘導する。喫茶店は、大通りへ面しているので、屋敷へ向かう人間を観察するには適していた。


一方、首相官邸を偵察に来た面々は、ビルの3階で食事を注文していた。


「此処から見た人間の名前は判ります?」


ビルの中にある、食事処。此処からなら首相官邸の入口まではっきりと見る事が出来た。


「ごめんなさい、距離が離れすぎてます······」


(この辺りで、見張りをするのは目立ちますね。此処から、高宮さんのスキルで監視するのがベストでしょう)


「分かりました、食事を頂いたら帰る事にしましょう」


翌日からは、高宮長次と上原弥江を入れ替えて張込みを行う事に決めた。その後は、継続して上尾泰士を探すのであった。


その間、北陽公雄は図書館へと足を運んでいた。春日谷龍が遺した情報、その中にあった歴代の首相についての疑問点を調べる為である。


春日谷龍は、3代に渡って首相が代わる瞬間を確認していた。その時に同じ人物が首相の護衛として側に居る事に気付いたのだ。だが、人物の特定までは至っておらず、首相に成る人物には裏があるとだけ綴られていたのであった。


北から中央へと到着した面々は、それぞれ別れての情報収集が始まった。上尾泰士を見つけ出し、無事に北陽公雄の計画は達成出来るのであろうか······


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