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第二章【離れた地で】4つ目の扉

中央で水元家が計画を実行する2日前、本城尊が選んだ人間が一室に集まっていた。


「おめぇ等、明日四ノ扉へ向かう。今回は、必ず鍵を手に入れて戻って来るぞ。全員、未知瑠の言う事を頭に叩き込んでおけよ」


本城尊が郷倉未知瑠へ説明を促すと、郷倉未知瑠が一歩前へ出て話し始める。


「もう理解して頂いているかと思いますが、最終確認だと思ってしっかり聞いてください」


郷倉未知瑠から、情報と作戦の説明が始まった。先ずは、情報から話し出す様だ。


四ノ扉が未だに攻略されていない理由の1つは、鍵の守護者が出現するのに条件があったからだ。


その条件を突き止め、皆と共有する。勿論、今回の作戦に参加が決まっている時坂純也とダ・ビャヌにも詳しく説明が行われた。


四ノ扉へ入ると、地球と同じく昼と夜が存在する。そして、夜が訪れると空には数多の星々と、蒼白く光る月が世界を照らすのだ。


問題は、月にあった。此れも地球と同じく満ち欠けするのだが、満月になると蒼白い光がより強くなり、地上を蒼く魅せる程の光量を放つのだ。


その光に照らされて、始めて認識出来るのが四ノ扉に居座る、鍵の守護者であった。


「扉へ入って2日後が、満月と成ります。2日間は、予測した地点へ移動する事がメインです」


鍵の守護者が姿を現しても、四ノ扉の中は広範囲に拡がった森があり、遠くまで見渡せない環境が続く。その問題を解決するには、空から遠くを見渡す必要があった。


「移動は、3チームに別れて行います。時坂さんとダ・ビャヌさんは、二人でお願いします」


時坂純也を仲間に加えた理由は、高い実力も理由にあるが、空を移動出来る力を持った者を求めていたからであった。


「ターゲットであるモンスター凰翔(おうしょう)は、かなり巨大で月の光で輝いています、空から見渡せば見つかる可能性は高い筈です。ですが、見つけても単独で交戦しない様にしてください」


鍵の守護者を、鳳翔と名付けたのは本城尊だ。鳳翔という名前の由来は、昔の日本に実在した航空母艦からとっていた。


航空母艦······鍵の守護者は、全長100メートル程もある蛇の様なモンスターなのだが、鱗の隙間から、翅を生やした蛇を数多く出現させる。それが、航空母艦を連想させたのだった。


「鳳翔が出現させるモンスター翅蛇(しだ)も、危険度Aはあると思います。それが多数現れる······前回撤退した理由が此れです」


前回、初めて遭遇した時の失敗は、十傑以外にも上級探索者を参加させていた事であった。上級探索者では、危険度Aを相手に長時間闘うには無理があった。だから今回は、危険度Aでも殲滅出来る実力者だけで構成したのだ。


見つけたら、連絡用の魔導具を使い合流する。その後の闘いで、活躍するのは高い火力を持った者だ。


「俺が必ず倒してやる、鳳翔は任せておけ」


自信満々に言う本城尊、現に最高火力を出せるのは、本城尊なのだ。


後は、各々の役割などを説明して、本日はお開きとなる。


一軒家へと戻った時坂純也とダ・ビャヌ。二人が居なくとも、息子達は順調に探索の日々を過ごしているのだが、今やれる事をやっておきたかった。


ダ・ビャヌは、美味しい料理を食べさせる事。時坂純也は、本城尊が心配した事態に万が一なった場合の対応策を話しておく。


「明日、四ノ扉攻略が始まる。俺達が居ない間は、彰君、皆を頼んだぞ」

黒街彰が一人になった所へやって来ると、時坂純也が声をかける。


「彰君にだけ話しておきたい事があってな、水元家の話だ······」

北陽公雄の考え、本城尊が言っていた事を黒街彰だけに話しておく。パーティーリーダーは、いざという時に判断しなくてはならない。黒街彰はどう判断し行動するのかを聞いておきたかった。


「此処を襲ってくるなら、助けになりたい。此処に来てからまだ少しですけど······皆良い人ばっかりだから。でも今は、まだ手も足も出ないと思います、そう、ですよね?」


「ちゃんと判ってるようだな、もし闘う事になるなら、其れは守る時だけだ。覚えておけよ」


言った後に、1つの魔導具を渡す。以前、時坂翔太が使っていた高ランクの連絡用魔導具だ。


「本当に攻めて来たら、これで俺達に連絡を入れてくれ。北の主要人物が居ないなんて、水元茜にとってチャンスでしかないからな」


時坂純也も、話しているうちに水元家が攻めるて来る可能性が高い様に思えてくるのだった。


翌日になり、予定通り四ノ扉攻略が始まった。

扉へ入り直ぐに別れる、予測した地点へ向かい鳳翔を見つけるまでは別行動なので、深い森の中を二人で進んで行く。


四ノ扉での探索が始まって、もう長い年月が立っている、どんなモンスターが現れても時坂純也にとっては慣れたものであった。


1日目の夜が訪れる。懐かしい気持ちで、時坂純也は空を見つめていた。


(此処に来た当初は、月が幻想的だと思ったものだな······)

時坂純也は月を見つめながら、探していた鍵の守護者が、月に関係していた事に考えが足りなかったと少し反省していた。


ダ・ビャヌが準備してきた食事を食べて、1日目の探索は締めくくられた。


2日目になり、移動を再開する。今日、満月の夜だけが鳳翔発見のチャンスになると、時坂純也の心は高鳴っていた。


ダ・ビャヌが渡された地図を見て、少し遅れている事を時坂純也に伝えると、時坂純也はダ・ビャヌを抱えて空へと駆け上がる。


魔力で作った足場から目的地を確認し、魔力の爆発を利用して一気に進んで行った。


一方、本城尊と十傑の面々も順調に目的地へ進んでいた。2つに別れた人員、本城尊と共に行動したのは、郷倉未知瑠(こうくら みちる)上里太陽(じょうり たいよう)丸貝里帆(まるがい りほ)

の3人。


もう1組は、滝陽子(たき ようこ)導光治貞(どうこう はるさだ)棚谷城ノ介(たなや じょうのすけ)鹿尾弾(しかお だん)の4人だ。


この中に二人、空へと上がれるスキルを持った者が居る。1人は、上里太陽。所有するAランク防具『鳥族の鎧』には、背中に羽根がついており、スキル飛翔によって羽ばたく事が出来た。


もう1人は、導光治貞。特殊スキルの重力操作を持つ導光治貞は、空へと浮き上がる事が出来る。そして彼は、十傑の中でも本城尊に匹敵する実力者でもあった。


それぞれのチームが無事に目的地へ到着し、夜が訪れようとしている。此処からが本番であった。


四ノ扉から来た異界も例外無く広い、予測した地点から捜索しても、周辺に鳳翔の姿が無い可能性も十分考えられる。嫌、見つけられる可能性の方が低いのだが······


「い、居たぜっ。尊様、まだ距離は有りますが、あの光は間違いねぇ」


上里太陽が空へと上がり、辺りを見渡すと、10キロメートルは離れた場所に、蒼く輝く光が見える。その光は、鳳翔が月に照らされた輝きで間違いなかった。


即座に郷倉未知瑠が、他のチームへと連絡を入れる。発見後の作戦は、先ず合流を果たす事であった。


本城尊のチームを中心として、別れて行動していた距離は、凡そ1000キロメートルと遠く離れていた。だが、時坂純也の能力と、導光治貞の能力を駆使すれば4時間でたどり着く。


発見が、中央に位置した本城尊のチームであった事は運が良かった。別のチームが発見した場合は、満月が出ている時間に全てのチームが合流する事が難しく、2チームで行動を開始する作戦になっていたのだ。


本城尊にとって、発見してから合流を待つ時間が最も長い時間となる。早く攻撃を仕掛けたいという衝動を我慢しなければならなかった。


「そろそろか? 太陽っ、鳳翔はちゃんと確認出来てんのか? 未知瑠っ、他の奴等に連絡してみろよ」


「大丈夫ですって、確認出来てますよ」

「流石にまだでしょう······落ち着いてください」


更に一時間が経過して、初めに到着したチームは、時坂純也とダ・ビャヌであった。


「遠くに見えてる、あの光がモンスターか?」

「そうだ、時坂、お前は鳳翔に出会うのは初めてなんだよな?」


時坂純也と本城尊、少年の様にはしゃぐ二人に周りから冷ややかな視線が送られる······だがもう少しで始まるのだ、長い間進展していなかった、扉の鍵を賭けた闘いが。


✩✫✩✫✩


その頃、地上では大きな騒ぎが起きていた。水元家が日本の首相、岡本博一を殺害して支配者として名乗りを上げた事だ。それと······


一般市民への説明では、日本を憂えて動き出したのが水元家であり、現政権の舵を取る岡本博一と話し合いの場を何度も設けたが解決しないまま時間だけが経過してしまったという、偽りの情報が流されていた。


仕方なく実力行使に踏み切り、その結果、岡本博一は命を失ってしまったと。だが、今動かなければ日本の未来は暗い物となる、その理由は、北の地で権力を振りまく本城尊が、日本を支配する気でいる、近い内に動き出す予兆があると言うのだ。


北の地の実情を語り、真実を織り交ぜた説明で民の心を掴もうと画策しているのであった。


中央の権力者達は、計画実行前から買収されており、水元家が日本を支配する事実に、反対出来る勢力はいない。そして日本は、1日という短い時間で王国へと変わり、初代日本国王に水元茜が君臨したのだった。


日本全国に女王陛下誕生のニュースが流れる。


テレビを見ているのは、北陽公雄であった。その手には、一通の手紙が握られていた。


(あぁ、心配していた事が現実となってしまった······しかも、本城様が日本を侵略するなんて戯言まで、それに、この手紙の内容だ······)


手紙には、春日谷龍、暗殺の件が書かれていた。


(水元家の大膳忠行によって暗殺······此れは真実だろうか? 誰が手紙を寄越したんだ?)


匿名で送られた手紙、今はまだ、内容を知っているのは北陽公雄だけであった。


(もし真実であったとしたら、日本全国を敵に回しても、本城様は動くかもしれない······)


隠すという選択肢が頭を過る、だが仲間を裏切る行為を許容はしない。それが北に住む本城尊の仲間達だ。北の環境を変える為に尽力している北陽公雄も例外ではなかった。


(僕がやらなければいけない事は、手紙が送られてきた意味を考える事か? 先ずは、本城様が居ない今をどうするか······今攻められたら終わりだな、皆に集合をかけねば)


此処に残る人間で最高戦力になるのは、十傑の増岡大輝だ、彼を中心に作戦を立ててみる。


集合をかけてから集まるまでの時間で、戦闘が起きた場合の作戦を考える。良い考えに至らない······最初から1つの選択しか無いと、思っていた。


「皆さん、集まって貰ったのは中央で起こった件についてです。ご存知ですか?」


集まったのは、増岡大輝と上級探索者が20名程だ。皆、ニュースで女王誕生の情報は知っていた。


「先ずは、僕の予想をお話します」

北陽公雄が要点だけを皆に説明する。水元家の狙いや、本城尊や主要人物が居ない今が最も攻める好機である事。


「水元家が攻めて来た場合、僕達が反撃の選択を出来るのは、本城様が帰って来た後になります。意味分かりますよね?」


一先ず降伏する、意味とは降伏しか選択肢がないという事だ。北陽公雄の話は、一部の者しか理解出来ていない、理解出来た者も納得出来る訳がなかった。


「其れは、降伏するって事ですよね? 闘わないで負けるなんか王に顔向け出来ないでしょう」


「はっ、降伏何かする訳ねぇだろうが、ふざけた事言うんじゃねぇぞ」


集まった人々が一斉に騒ぎ出す。こんな状況になってしまっては、北陽公雄に止める事は出来ない。

願いを込めた瞳で、増岡大輝に視線を送るしかなかった。


「静かにしてくれるか、公雄さんは王の代理だぞ。口の聞き方に気おつけろよ、公雄さんもバカでも納得出来るように説明お願いしますよ」


増岡大輝のお陰で、場が静かになると話せる状況が整った。北陽公雄は、次は細かく説明を始める。


水元家にも、十傑に匹敵する戦力がある事。敵は水元家だけではなく、日本中から実力者が集められる事。人数差は果てしなく、実力者の数でも劣ってしまう事。


「本城様が望むのは、どちらですか? 今此処に居る者が全員命を落とした状況と、占領されていても無事な状況」


更に、探索を第一に考える本城尊が、探索者を失う事など望む訳がないと付け足した。


此処まで言い切られると、反論出来る者は居なくなるのであった。


何とか納得して貰った後は、無駄な戦闘を行わない事を誓わせて、見張りを行う様に指示を出すのだった。


平和の為に働く日々の筈が、無駄な争いの為に失われる······本城尊が戻って来るまでは、眠れない日々が続くのかと思うと、遣る瀬無い気持ちでいっぱいになる北陽公雄であった。

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