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第二章【離れた地で】仲間の相性

『繋ぐ未来園』に4人が集まる。今日は、宝田和彦に三日月愛がパーティーに加わった事を報告してから、探索に向かう準備をする予定であった。


「おお、愛ちゃん。パーティーに入る事にしたかっ、それじゃやる事がいくつかあるぞ」

宝田和彦が言う、やる事。それは、パーティー登録と治癒魔法を宝玉で覚える事だ。


「宝玉は、本部の宝物庫にあるから、ちょっと待っててくれ。それで、リーダーは彰で良かったか?」

宝田和彦は、リーダーである黒街彰にイベントに参加するか尋ねる。中級探索者で行われているイベント。内容は、魔石を納めた数を競うというものであった。


「どっちみち『繋ぐ未来園』に所属していたら魔石を納めて貰う事になるんだ、参加すれば、順位に応じてアイテムが貰えるから損はないぞ」

黒街彰が、宝玉の次に欲しい物。それは、能力向上効果があるアイテムだ。それを貰えるなら参加しない手はないのだが、黒街彰はククノの為に魔石が必要なのだ。


「魔石って、いくつかは自分の物にしていいんですかね? ククノに必要なので」

「それは構わないよ、普通の探索者は、ここに所属していれば、魔石を使う事がないからな。必要な探索者から無理に貰おうなんて思ってないんだ」


それだったらと、イベントに参加する事を決める。ちなみに貰えるアイテムは、結果発表の日に本城尊が決めるとの事であった。四ノ扉で本城尊が手に入れたアイテムなので良い物には違いないのだ。


(待ってる間暇だな······そうだ、三日月さんの能力値って教えて貰えるかな)

「三日月さん、皆の能力値を知っておきたいと思ってるんだけど、教えて貰う事って大丈夫?」

「うん、いいですよ。どうせなら、治癒魔法の宝玉を取り込んでからステータスプレートを見せますね。私も皆のステータス見たいです」


三日月愛は昨日、想いを吐き出した事で前より元気になれていた。事件からより暗くなっていた三日月愛、それを知る人が見たらびっくりする位の変わり様だ。

それと、『繋ぐ未来園』では、ステータスの開示を行っている分、三日月愛も、他人に見せるのに抵抗がないのである。


待っている様に言われたが、ステータスの鑑定もあるので、宝田和彦に着いて本部へ行く事にする。


(三日月さんも、呼び方を変えた方が良いかな? いきなり愛って呼ぶのも馴れ馴れしいしなぁ、やっぱ愛さん、愛ちゃんって呼ばせてもらおうかな······)

本部へと向かう道すがら、黒街彰は仲間同士の呼び方を考えていた。パーティー内を円滑にするのもリーダーの役割と張り切っている。


歩きながら、呼び方を皆に相談すると、時坂翔太が「俺は、愛姉にする」と楽しそうに言うのであった。他の二人は、愛ちゃんと呼ぶ事になり、三日月愛は、彰さん、喜助さん、翔太と呼ぶ事にした。名前で呼ぶ事で仲が深まり、全体が楽しい雰囲気に包まれる。


(上手く行きそうな雰囲気だな、良しっ探索頑張るぞ)


本部に到着すると、宝田和彦が本部の人間に話をする。今は、郷倉未知瑠は不在の様だ。


(未知瑠さんに報告したかったな······)

三日月愛は、パーティーを組んだ話をしたら、喜んで貰えると思い、報告を楽しみにしていたのだ。


4人で待っていると、宝田和彦が宝玉を受け取り戻って来る。戻って直ぐに宝玉を受け取った三日月愛は、早速取り込む事にする。


「癒やしを」

宝玉を取り込むた、確かめる意味で癒やしの魔法を使ってみる。因みに魔法を使えるようになっても、決まった詠唱などは存在しない。単にイメージアップの為に口にする位だ。


淡い光が、三日月愛の手のひらから漏れ出る。無事に回復魔法の使い手になれたようであった。


「な、何か光ったね。僕、回復魔法って見た事ないから、今のがそうなのかな?」

舘浦喜助の問に答えたのは、宝田和彦であった。魔法はイメージが大事で、今の光量では、かすり傷を治せる程度なのだと言う。


「使いこなすには、何事も練習が必要だからな。傷が治るイメージを高める事が、重要だ。愛ちゃんなら、直ぐに良い癒やし手になれるよ」


次は、ステータスの鑑定だ。三日月愛のステータスを確認して、黒街彰は、宝玉の振り分けを決める予定であった。


【名 前】 三日月愛

【性 別】 女


【命 力】 81

【魔 力】 196 (50)

【攻撃力】 75

【防御力】 68  (100)

【素早さ】 89  (50)

【幸 運】 11

【スキル】 

【魔 法】 風魔法(大)治癒魔法(小)

【加 護】


三日月愛は、Cランクの指輪とBランクの防具を装備していた。探索歴6年だが、6年の間、余り環境が良いとは言えなかった。それでも『繋ぐ未来園』の支援のお陰で現状の能力値まで上がったのであった。


「魔力が高いんだね、流石、魔法使い。全体的には、俺と翔太と同じ位か······」

少し考えて、黒街彰は宝玉の振り分け方を先に説明する。


「先に言っとくけど、皆の得意分野を伸ばす方向で宝玉は振り分ける予定だからさ。魔法なら愛ちゃんと喜助。攻撃力なら、俺か翔太って感じだね」


此れで探索の準備に取り掛かれる。必要な物は、食料、それと三日月愛のテントと寝袋だ。三日月愛は、長い日数を異界で過ごす経験がないらしく、テント等は持っていないのであった。


丁度、本部に居るので、買いたい物も近くで売っている。扉も直ぐ近くなので、北の地は便利だと黒街彰は思っていた。


更に、準備とは別に持って来た物がある。通信用の魔導具だ。昨日帰った後に、時坂純也に相談すると、低ランクだがいくつか持っていると貰う事が出来た。


準備が終えて、二ノ扉へ入って行く。向かう先は鱗ボアの生息地だが、道中でもやりたい事が沢山あった。


「愛ちゃんの魔法を見せて貰っても良いかな? それと、俺達の闘い方も見てもらって、どうやって連携が取れるか確認しながら進もう」


三日月愛の風魔法が、仲間に当たってしまったら大惨事だ。知っておきたい事は、精度と威力、何回使えるのかも重要だ。


北ではお馴染みになりつつあるモンスター、大オガミと遭遇する。


三日月愛は、遠距離から風魔法を放つ。すると、大オガミの身体全体に、小さな傷がついていくのが分かる。


大オガミが怯んだ所へ距離を詰めると、今度は至近距離から二つの風魔法が放たれた。


刃の様に鋭い風が大オガミの両腕を切り落とし、最後にもう一度放たれた風魔法で大オガミを倒すのであった。


「やっぱ魔法って凄いね······ちょっと確認してもいいかな?」

黒街彰は、魔法に感動しながら思った事を聞いていく。


遠距離と近距離で使った魔法は、違う種類なのか?先ずはそこから聞いてみた。

「遠距離では、小さな風の刃をモンスターの全体にぶつけるイメージで使っていて。近距離では、大きな風の刃で狙った箇所を切断するイメージで使う感じです」


三日月愛が大オガミと闘う場合、よく使う戦闘方法なのだが、近づくリスクを侵さなければ倒せない理由があった。


大きな風の刃は、離れる程、威力が下がってしまう。関節など、ピンポイントで狙うにも近くないと当てられないのだ。


「そうなんだ、魔法だって簡単に倒せる訳じゃないんだね。今は4回使ったんだよね? あと何回使えるの?」


「ん〜、一回の戦闘だと、あと4回使ったら辛くなってくると思います。少し時間が立てば回復してるんで大丈夫なんですけど」


魔法を使える回数的にも、三日月愛が一人で探索するのは、無理があると黒街彰が考えていると、三日月愛が、もう一つの闘い方を話し始める。


「魔法だけじゃ、連戦は難しいんで、一様刀も使えますからね」

一人で探索している2年間で、もっとも成長したのは刀での戦闘だったと話す。魔力を温存して刀で闘うのが今の三日月愛の戦闘方法であった。


進みながらモンスターと遭遇する度に、順番で闘っていく。

黒街彰も時坂翔太も危なげ無くモンスターを倒すのだが、能力値の低い、舘浦喜助だけは心配になってしまう。


「皆強いですね。闘い慣れてるのが分かりますよ。でも喜助さんだけは、見た事ない闘い方なんで······」


舘浦喜助の防御力は36だ。装備での強化もしていないので、万が一モンスターの攻撃を貰ったら即死もあり得るのだ。


「なぁ喜助、防御力が上がるまで闘い方を変えて欲しいんだけど······どうかな?」

舘浦喜助は、スラ吉の絶対防御に自信を持っていたが、スラ吉にもダメージあると時坂純也に指摘されて悩んではいた。


黒街彰が提案したのは、前衛に黒街彰と時坂翔太、後衛に三日月愛と舘浦喜助に別れる事であった。


「喜助は、モンスターを離れた位置に出せるだろ。それって魔法で遠くから攻撃出来るのと同じじゃないかな?」

前衛とモンスターが闘っている間に、モンスターは突如後ろから攻撃をされる。そんな事が舘浦喜助には出来ると黒街彰は説明した。


「う、うん。それ凄いかも、ちょっとやってみるよ」


時坂翔太と舘浦喜助、黒街彰と三日月愛のペアで戦闘する事数回。

三日月愛の風魔法で怯ませ、黒街彰が安全に近づく事や、時坂翔太が闘っている間に、舘浦喜助がポチを後ろへ出現させるなど、思いついた戦闘方法を試してみる。


「これで、後衛のリスクを減らせるな。喜助と愛ちゃんは闘ってみてどうだった?」


二人共、何だか楽してるみたいで申し訳ないと思っていた。時坂翔太以外は、ソロでの活動が基本になっていたので仕方ないが、後衛の仕事はちゃんと出来ているのだ。


「楽してるって言ったら、俺だってそうだぜ。モンスターの攻撃を防いでるだけでいいんだからさ」

時坂翔太が前衛も同じだと言う。これがパーティーを組んだ成果なのだ。


それと、時坂翔太には他にも課題があった。ダ・ビャヌから貰った双剣『空域の双剣』を使いこなす事だ。


今はまだコンビでだが、パーティーでの戦闘を試している内に夜がくる。


テントを建てて、焚き火でお湯を沸かす。今日の夕飯は、味噌汁を作る。それと持って来た、おにぎりだ。


魔物除けの魔導具を起動させている為、安全に夜を越せる。それは、三日月愛と舘浦喜助は初めての経験であった。


「凄い魔導具を持ってますよね。これって、持ってるのと、持ってないのじゃ全然違うと思う」

魔物除けに感動し、温かい味噌汁を飲みながら、今日の事を振り返る。


黒街彰が、満足した結果を並べながら話を進めている。「何か言っておきたい事ある?」と言うと、舘浦喜助が明日起こる事で話があるみたいだ。


「あ、あの、明日鱗ボアを仲間に出来たらなんだけど······」

手の契約紋を見せながら話を続けていく。


「も、モンスターと契約すると、紋章が身体の何処かに出来るんだ、顔にできる時もあるんだよね······」

前に出来た時、自分で見ても恐い人に見えた。


「タトゥーを顔にも入れてる人みたいで、こ、恐がらないでほしいんだよね」


「えっ、いいじゃん、それ絶対喜助兄かっこ良くなるぜ」

大人しい見た目の舘浦喜助。以前紋章が顔に出来た時には、舘浦喜助も最初格好いいと思っていた。時坂翔太の言葉に、ちょっとワイルドになれるのも良いかと安心する。


「そんな事で恐がる訳ないだろ、俺達は仲間なんだからさ」


1日を通して絆を深めた日。異界の中で4人の夜が暮れていった。そこには、前を向けない人間の姿などなく、明日からも全力で先に進むのであった。



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