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第二章【離れた地で】前に進むため

一軒家へ戻ってきた黒街彰達3人。ダ・ビャヌの手料理を頂きながら今日の出来事を相談していた。


「風魔法に、回復魔法も使えるようになるのか。そりゃ仲間にするべきだろう」

話を聞いた時坂純也は、必要な人材を用意してくれた『繋ぐ未来園』に感謝していた。


「本人は乗り気じゃないんですよね、無理にお願いするのもどうなんでしょう?」

黒街彰の性格上、無理矢理なんて選択肢は無いのだ。


「魔法を得意としてる後衛が、何時までも一人じゃ厳しいだろ。それなら、本人が乗り気じゃなくたって連れてってもいいと思うぞ。彰君は、自分達とパーティーを組んで後悔させる様な人間か?」


「パーティーを組んだ経験があまり無いので、考えた事もないですけど······皆が良くなる様に努力はしますよ」

「この面子なら、彰君がリーダー確定だろ。此れからは、自分以外の事で悩む事が増えそうだな。頑張れよリーダー」


時坂翔太と館浦喜助も、黒街彰がリーダーだと担ぎ上げる。


時坂純也は、良い経験だと、自分で考える様に促したのだ。黒街彰に任せておけば息子も成長出来そうだと安心していた。それに、自分達の探索に集中出来ると。


翌日、先ずは『繋ぐ未来園』に寄ってから、探索に出掛けようと決めて家を出た。


『繋ぐ未来園』に到着すると、宝田和彦に声をかける。

「おはよう御座います。あの、今日は探索に向かう予定なんですけど、行っても良いのですか?」

黒街彰は、『繋ぐ未来園』に所属してから何か制限がないか確認する。


「おはよう。彰、探索に行くのに許可なんかいらないぞ、それより無理はしないようにな」

「はい、あの······三日月さんって朝は来ます?」


宝田和彦に聞いた所、三日月愛が朝に寄る事は殆ど無いのだと知る。代わりに、帰りは必ず寄る事になっていた。


黒街彰は、伝言を頼む事にした。自分達も基本夕方に『繋ぐ未来園』に寄るので、気軽に声を掛けて欲しいと。


今日から本格的に3人パーティーでの探索が始まる。黒街彰は、共有出来る目標を一つ考えたので二人に話す事にする。


「翔太、喜助、目標を考えたんだけど、聞いてくれる?」

昨日、宝田和彦から聞いた三ノ扉へ入る条件。能力値の攻撃力、防御力、素早さの平均を300にする事。魔法をメインに使う者は、攻撃力ではなく魔力になるとの事だ。


因みに、装備した効果も含まれるが素の能力値で上回るのが理想との事であった。


それと、今日の朝。黒街彰は、館浦喜助に言った事があった。それは、名前で呼ぶ事だ。

パーティーとして共に探索するのに、「館浦さん」では余所余所しい······リーダーとして仲間との距離を縮めようと考えたのだった。


「三ノ扉へ入る条件をクリアする。って目標でどうかな?」

黒街彰の提案に賛成するのだが、館浦喜助は少し申し訳なさそうな顔をしていた。


「あのぉ、僕、足引っ張ってないかな? 能力値低かったから······」

能力値が低い分、宝玉の取り込む量が多くなる。館浦喜助は、その事を気にしていた。


「それは、気にしないでいいんだけど。正直言うと、ゆっくりしてられないって思ってるんだ。だから、俺達の全力で一番多く宝玉を手に入れる方法を考える、協力してくれるか?」

「あったりまえじゃん、早く取り返しに行かねぇとなっ」

「う、うん、僕も全力で頑張るよ」


ニノ扉へ入って行く。今日は、時坂翔太と館浦喜助がメインでモンスターを倒していく事にした。


高い草をかき分けて進んで行くと、大オガミが居る事に気付き戦闘を開始する。


(二人掛かりなら問題ないよな? う〜ん、大オガミも前衛か······)

今、黒街彰が考えているのは、効率的に宝玉を手にする方法だ。


今までもソロで探索出来ていたニノ扉。別れてモンスターを狩る事も可能であったが、それではパーティーを組んだ意味がない······其処で思いついたのがメンバーの役割だ。


(前衛でも、アタッカーじゃなくてディフェンダーが欲しいんだよな)

館浦喜助の特殊スキル、それで防御力が高いモンスターを仲間に加える。そのモンスターとペアになってモンスターを狩るのだ。


大オガミを無事に倒した時坂翔太と館浦喜助。二人に近づいて行った黒街彰は、思いついた方法を舘浦喜助に相談する。


「契約は出来ると思う。け、けど、僕の言う事しか聞かないと思うんだ」

館浦喜助は、時坂翔太がスラ吉やポチと遊んでいた時の事を思い出して言うのであった。


「それじゃ翔太と一緒に闘えって、喜助がモンスターに言ったら駄目かな?」


黒街彰の提案を聞いて、ポチで色々と試してみた。判った事は、館浦喜助以外の言葉は通じない事だ。「黒街さんの言う事を聞いて」と館浦喜助が言っても意味がなかったからだ。


他に試した中で「黒街さんに着いて行って、モンスターが居たら一緒に闘って」この言葉が一番良かった。


次は、ディフェンダーになれるモンスターを探すのだが、闇雲に探すのは効率が悪い。

(組織に入ったんだ、モンスターの情報を貰えるかもしれないよな)


黒街彰は、二人に扉周辺でモンスターを狩って貰う事にして一度戻る事にした。

「絶対に無理はしないでな、翔太頼むよ」

特に心配な時坂翔太に声を掛け、地上へ戻る。


『繋ぐ未来園』へ戻ると、宝田和彦にモンスターの情報を聞く。すると『繋ぐ未来園』には、モンスターの一覧と写真、出現場所、攻撃方法や注意点、危険度などが纒められたデータが作られていた。


「このタブレット、見ていいんですか?」

「勿論だ、探索者の為に作ったんだからな」


(此れは有り難いや、良し探すかっ)

このタブレットには、一ノ扉から三ノ扉までのモンスター情報が纏められている。その中でも二ノ扉に絞って検索する。


モンスターを検索していると、遭遇した事のあるモンスターなのに、名称が違っている事に気が付いた。

(モンスターの名称は、北独自なのかな?)

スライムだけが、同じ名称で他のモンスターの名称は違う様だ。


黒街彰は、一通りモンスターの情報を見て、気になるモンスターを2体発見したのであった。


(岩石モドキか······)

一体目のモンスターは、岩石モドキ。1メートル位のモンスターで、非常に硬いが、動きが遅いので探索者には、無視されているらしい。


(やっぱ本命は、こっちかな)

二体目のモンスターは、鱗ボア。1メートル位のモンスターで、硬い鱗を持つイノシシの様なモンスター。突進力が強いので注意。


「え〜と、生息地は森か」

地図を見ると、森の中に大きな川が流れていた、この辺りが鱗ボアの生息地の様だ。


(扉から、そこそこ離れてるな。これは、日帰りは無理そうだ)

宝田和彦に頼んだ伝言を変えようか迷ったが、三日月愛に一度会ってから、鱗ボアを探す事にした。


やる事が決まり、もう一度二ノ扉へ入って二人を探す。黒街彰は、近くに居る筈の二人を中々見つけられず、時間が立っていくのであった。

(これは別行動をするなら、連絡手段がないと困るぞ······)


二人を見つけたのは、もう夕方近くになってしまった······三日月愛に会う為、夕方になる前には『繋ぐ未来園』で待っていたかったが、黒街彰は、もう会える事を半分諦めていた。


地上へ戻り、本部を抜けようとした時、森山裕実と話す三日月愛を発見する。


「こ、今晩は、偶然ですね」

少し緊張しながら、話しかける。海野結菜としか付き合った経験がない黒街彰は、女性に声をかけるのにも勇気が必要であった。


「今晩は。黒街さん達、園に入ったんだってね、後輩になったんだから······これからは、彰、翔太、喜助って呼ぶからね」

森山裕実が反応して、返事をくれる。三日月愛は、何だか緊張した面持ちだ。


「はい、宜しくお願いします、森山先輩。あ、あの、森山先輩と三日月さんは何をしてるんですか?」


森山裕実は、三日月愛の探索帰りを捕まえただけであった。「最近どう?」などと声をかけるのは、心配だったからだ。


「愛を見かけたから、ちょっと絡んでただけ。愛の事知ってるの? それとも······ナンパ?」

「ち、違いますよ······」

慌てて『繋ぐ未来園』で、三日月愛を紹介してもらった事を説明した黒街彰は、「良かったら、ご飯を食べながら話しませんか?」と誘ってみる。


「益々ナンパっぽくなってるじゃん······愛どう? 一緒に行くからご飯食べようよ」

森山裕実も、郷倉未知瑠と同様、三日月愛には前を向いて欲しかった。中央から来た黒街彰を見ていると、変えてくれる。そんな気がするのだ。


時坂翔太を除いた、4人で食事をする事になり、森山裕実のおすすめの店へと足を運ぶ。ちなみに時坂翔太は、母様が料理を作ってくれているかもと言って帰ったのだ。実に、母親想いの息子であった。


森山裕実が紹介してくれた店は、年老いた女将さんが郷土料理を振る舞ってくれる素朴な店であった。


おすすめのせんべい汁やお刺し身を注文すると、待っている間に、黒街彰が今何をしているのかを話し出した。


目標が、能力値を三ノ扉に入る事が許される値まで上げる事にしたので、その為に舘浦喜助の特殊スキルを使って宝玉を効率的に手に入れようとしてる事を話した。


「近い内に鱗ボアの生息地へ行くんです、ディフェンダーが居れば別れても、安全に狩りができますからね。その後は、宝玉を沢山手に入れます、手に入れた宝玉は、俺が責任を持って振り分ける予定です」

宝玉を誰が取り込むか?黒街彰は、これを一番悩んでいた。三日月愛の問題も宝玉に関連していたし、黒街彰が欲しているのもまた宝玉だからだ。


料理が運ばれ、食事を食べ始める。三日月愛は、黒街彰の言葉で食事を楽しむ余裕はない様子だ。

(宝玉は、順番になるのかと思ったけど······私には、何が良いかわからないよ)


パーティーで宝玉を分け合う場合、順番制にするのが一般的であった。リーダー主体のパーティーは、リーダーだけが強くなり、最後には解散と言う話を良く聞く。


食事を食べ終わり、また最初に口を開いたのは、黒街彰であった。

「三日月さん、俺はリーダーとして、皆で先に進める様に頑張っていくつもりなんだ、だから······俺達を信じて、一緒にパーティーを組んで貰えないかな?」


「あ、あの、ぼ、僕も全力で頑張りますからっ」

館浦喜助も、勇気を出して意志を伝えた。


「え、えっと、私の気持ち、話してもいいのかな?」

「愛っ、良いに決まってるじゃない。逆に、彰も喜助も聞きたがってるよ」

森山裕実の言葉に、深く頷いて見せる二人。更に、背筋を伸ばして聞く姿勢もバッチリであった。


「私はね······恐いんだ、自分がしてしまった事が。私は、人殺しなんだもん」

三日月愛が、自分の気持ちを打ち明けていく。自分が犯した過ちを償う事もしていないのに、周りの大人は、前以上に気にかけて優しくしてくれる。それが心苦しいと。


「譲ってあげれば良かったのに、あの子達は、初めて強敵を倒したんだから······それなのに、私は譲れなかったの」

自分はとても強欲で、思いやりの無い人間なのだと、その時に思い知ったんだ。


「だから、皆が言ってくれるけど······私には、前に進む資格なんてないんだよ」

良い人かもと思う程、同じパーティーに加わる事に引け目を感じてしまう。


「ご、ごめんなさい。さ、誘ってくれて、ありがと」

三日月愛は、涙を流しながら黒街彰の誘いを断った。


(凄く自分を追い詰めてるんだな、なんて言葉をかけてあげれば······)

黒街彰が、かける言葉に悩んでいると、隣に居る舘浦喜助が自分の事を話し出した。


「ぼ、僕の話を、してもいいかな? 僕はね、昔から、何をやっても人より出来なくて、のろまで、どんくさくて、だから何時も虐められてたんだ·····虐めてくる人達って、凄く嫌な顔をしてるんだよ、悪い顔っていうのかな······だからね、僕は、顔を見ればその人が悪い人か判るから······三日月さんは、悪い人なんかじゃないよ」


「そ、それと、もし自分の為にパーティーを組むのが嫌だったら、僕と同じ理由でパーティーを組めばいいんじゃないのかな? 僕は、前に助けて貰った人に恩返しをする為に、彰君に協力させてもらってるんだけど、三日月さんも彰君を助けてあげるって思えばさ」


最後に「話し過ぎちゃった、ごめん」と付け加えた舘浦喜助。


「恩返し······」

(恩返しは、私もしたいけど······)


「ぅっぐ、愛は、未知瑠さんに恩返しを、したいんじゃない?」

話を聞いて、誰よりも号泣していた森山裕実が、「恩返し」を聞いて反応する。


「う、うん」

「だったら尚更だぞ、ふぅ〜。未知瑠さんが求めるのは、本城様と新たな扉を開くことなんだから。前を向くなんて、一歩目でしかないんだからね」


「うん······」


「お試しでもいいから、やってみないかな? 本当に駄目だと思ったら、その時に抜けても遅くないんだからさ」

もう一度、黒街彰も誘ってみる。目の前の少女を、このままにしとく訳にはいかないのだから。


三日月愛の、心の天秤は良い方に傾いていた。きっと諦めずに何度でも誘って来る、だったら早目に仲間に加わっても良いんじゃないのか······そんな事を考えていたが、本心は黒街彰と舘浦喜助の事を気に入ったからだ。


「うぅ、う、うん······皆、優し過ぎる、よ······こんな私で良かったら、宜しくお願いします」


やっと、首を縦に振ってもらえた事で、皆に笑顔が戻る。タイミング良く、女将さんがデザートを持って来てくれた。


「これっ、サービスだよ、皆頑張ってね」

女将さんも、涙目で応援してくれた。小さい店なので、話がまる聞こえだった様だ。


デザートを食べ終わると、明日『繋ぐ未来園』で待ち合わせをして、解散にした。


帰り道、黒街彰が舘浦喜助に「説得有難う」と声をかける。

「つ、辛い過去って、他人事な気がしなくて。だから、助けてあげたいって思ったんだ」


「そうだ、今度から彰って呼んでよ。友達なんだからさ。喜助、此れからも宜しくな。」

「う、うん。こ、此方こそ、宜しく、です」


舘浦喜助は、恥ずかしそうに返事を返す。でも顔には書いてあった、とても嬉しいと。


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