第二章【離れた地で】3人に必要な仲間
時坂純也と本城尊が、約束を交わしてから翌日。朝から、黒街彰が住む一軒家に訪ねて来る者が居た。
「おはようございます。尊様の命で黒街さん達を迎えに来ました」
玄関を開けると、其処に立って居たのは郷倉未知瑠であった。黒街彰、時坂翔太、舘浦喜助を孤児院へ入れ、北の人間にサポートさせる様に本城尊から言い付けられてやって来たのであった。
やって来た理由を聞いた黒街彰が考え込む。
「あ、あの、いきなりだったもので、皆と話しても良いですか?」
家の中へと郷倉未知瑠に上がって貰い、作戦会議をする事にした黒街彰。リビングに通され、待っていて貰う事になった郷倉未知瑠には、ダ・ビャヌがお茶を出して対応していた。
「もう少し詳しく聞いてから考えるか? 昨日本城と話した事だとは思うが······」
黒街彰から話を聞いた時坂純也が、先ずは話を聞いてからだと提案する。
リビングに入ると、郷倉未知瑠が、ダ・ビャヌが淹れたお茶に感動している場面であった。
「こんなに美味しいお茶を頂いたのは初めてです。永く生きていてお茶に感動出来る何て······何かコツでもあるのでしょうか?」
「茶葉、水、温度、時間」
ダ・ビャヌが、お茶の淹れ方をポイントだけで説得する。並べられた単語で理解出来たのかは不明だが、郷倉未知瑠は楽しそうに頷いて居た。
「何だか、楽しそうだな、郷倉さんだったか? もう少し詳しい内容を聞かせてくれるか?」
時坂純也の問いに、郷倉未知瑠が返事をすると、孤児院と今後の説明が始まった。
孤児院の名前は『繋ぐ未来園』と言い。森山裕実の説明にもあったが、現在は探索者を育成する施設になっている。
『繋ぐ未来園』の育成方針。第一は、探索から戻って来る事、命を繋ぐ事であった。
更に詳しく説明は続く、能力や戦闘スタイルに合わせてパーティーを組ませる事や、能力値が規定の数値に達するまで行ける扉を限定している事など。
他にも、自由参加で探索者同士のイベントなどもあると付け加える。
「不利な点は、能力値の開示位ですかね。『繋ぐ未来園』に所属するには、受けて貰わないといけません」
利点は、生存率が上がる事や、アイテム類のサポートを受けられる事。
探索を初めて行う者にとっては、良い場所に聞こえる。だが、黒街彰は初心者ではなく、仲間も出来た為、話を受けるかどうか悩みどころであった。
(彰君にとっては、良いとは言いづらいな······)
時坂純也は、話を聞いて黒街彰をどう説得するか考えていた。
黒街彰が早く力をつけたがっているのを知っているから尚更だ。
昨日、本城尊の話の中、水元家との抗争······嫌、戦争と言っても過言ではない話。黒街彰の目的も踏まえると、巻き込まれる事が自然に起きると予想出来た。それならば、北の探索者とは、繋がりを持っていたほうが良い、という考えが強くなっていた。
「彰君、俺は話しを受ける方が良いと思ってるが、どう考えてる?」
「え、と······俺は、無理してでも強くなりたいと思っているので、合わないかと思ったんですが」
「まぁ、その気持ちは分かってるよ。でも強さってのは、個人だけじゃないからな」
時坂純也が黒街彰にした話は、仲間を増やす事。組織に属する事で一人で出来ない事や、情報も入ってくると説得する。
「それにな、彰君が一番活躍出来るのは、指揮官の立場じゃないかと思ってるんだ」
黒街彰が、高いレベルで空間全体を把握している事に気付いていた時坂純也は、人数が多い場合の戦闘を是非経験してほしかった。
「そんな事、考えもしなかったです······」
(一人でやるより、可能性が上がるのは分かるけど······他の人を巻き込むのは嫌なんだよな、それでも選択肢を増やしておいた方が良いのかな?)
少し考えてから、結論を出す。黒街彰の判断の早さも時坂純也が評価している点でもあった。
「分かりました、『繋ぐ未来園』に行ってみます」
他の二人も、黒街彰の決断に異存は無いようであった。
『繋ぐ未来園』に所属する事を決断すると、早速向かう事になる。
「郷倉さん、3人を宜しく頼むよ」
「勿論です、時坂さんにも時期に連絡が行くと思いますので」
別れの挨拶を済ませて、先ず向かうのは『繋ぐ未来園』ではなく、ステータスの鑑定機がある本部であった。
「ステータスと戦闘スタイル、戦闘スタイルは、武器は何を使うのか? 前衛や後衛、自分は何が得意か? などを聞き取り資料にします」
本部に置かれた魔導具、ステータスの鑑定もアイテムの鑑定も組織に所属していれば無料であった。まぁ魔石を組織に納める事が義務付けられているので、本当の意味で無料とは言えないのだが······
到着すると、早速3人の鑑定を行う。
【名 前】 黒街彰
【性 別】 男
【命 力】 122
【魔 力】 0
【攻撃力】 101 (100)
【防御力】 34 (200)
【素早さ】 241 (30)(200)
【幸 運】 17
【スキル】 魔力感知(大)
【魔 法】
【加 護】 光の守護
黒街彰は、前回より攻撃力が高くなった位だ。続いて、時坂翔太の鑑定も行われる。
【名 前】 時坂翔太
【性 別】 男
【命 力】 158 (50)
【魔 力】 68 (50)
【攻撃力】 92 (50)
【防御力】 86 (50)(100)
【素早さ】 215 (50)(200)
【幸 運】 29
【スキル】
【魔 法】
【加 護】
能力値は、素早さと命力が他の値より高く。各種指輪と脛当て『空域の双剣』を装備していた。
【名 前】 館浦喜助
【性 別】 男
【命 力】 32
【魔 力】 46
【攻撃力】 102
【防御力】 36
【素早さ】 21
【幸 運】 19
【スキル】 契約紋(特)
【魔 法】
【加 護】
二人と比べて、攻撃力以外の能力値が低く。能力向上効果のある装備も持っていない。
「二人は、装備も良い物を手にしているようですね。能力値も似ていて、前衛ですか。館浦さんは、特殊スキル持ちですか。それは凄い······」
郷倉未知瑠が一番興味惹かれたのは、やはり特殊スキルの様だ。能力値は、此れから上げれば良いし、装備もある程度までなら手に入るのだ。
此の後は、『繋ぐ未来園』に行く。
『繋ぐ未来園』に到着すると、郷倉未知瑠について中へと入って行った。建物の中は、大きな部屋が一つ、此処でミーティングや指導が行われる。他に15の部屋があり、此処に住む探索者の部屋となっていた。
「よく来てくれたね、『繋ぐ未来園』の園長をしている、宝田和彦だ。宜しくな」
宝田和彦。本城尊と共に、探索者として活動をしていたが、片足を失った事で探索者を引退。後に、北陽公雄から孤児院を任され今に至っていた。
黒街彰達も、各々挨拶をする。郷倉未知瑠が皆のプレートを渡し、一人一人聞き取りが始まった。
「黒街彰です。宜しくお願いします」
「黒街彰君、彰って呼んでいいかな? じゃぁ戦闘スタイルと、得意、不得意を教えてくれるか?」
黒街彰は、妖剣での戦闘方法を説明する。それと、戦闘方法の一つである、ククノの蔦による妨害の説明の為に、ククノの事も話す事にした。
「あの、あまり広めないでほしんですが、友達? 精霊のククノを紹介します」
「お主は、初めましてじゃの。山の精霊ククノじゃ宜しくの」
「んっ、精霊か? 初めて見るが······存在したんだ」
宝田和彦も、精霊の存在を初めて見て驚いていた。
「ちょっと聞いても良いかな、ククノ、さんは、何が出来るんですか?」
「我は、木々を操る事ができるぞ。今は魔力が少ないので、無理はできんのじゃがのう」
それと黒街彰が、ククノについて知っている事を付け足す。
「ほう······魔力を必要としてるんだね、それじや効率よく魔力を集める方法を此方でも考えてみよう」
次は、黒街彰の得意、不得意な事を話すように言われる。
(得意か······あんまり考えた事なかったな)
考えている間、沈黙が続く。黒街彰は思いあたたった事を言う事にした。
「得意って言えるかは、分からないんですけど······」
黒街彰が言った得意な事は、一度闘ったモンスターの動きを記憶して、小さな動作から、どんな攻撃が来るか予測する事であった。
「ほう、それは、陸斗の動きを予測していたのと同じかな? 俺も決闘は見てたからね」
能力差があった決闘。それでも上手く受けている姿を見ていた事もあり、黒街彰が得意と言った意味は良く伝わっていた。
「あっ、そうですね。モンスターだと、同じ動きになりやすいので、よく使う感じです。不得意な事は、近づけない敵ですかね?」
今迄の戦闘で、特別不得意と思う事はなかった。それでも遠距離からの攻撃方法が無いので、近づけないモンスターと闘うのは単純に不得意と言える。
「遠距離攻撃か、ククノさんの魔法があれば何とかなりそうだけどな。先程の魔力問題をクリア出来れば良いが······」
黒街彰の聞き取りが終わり。次は、時坂翔太が
呼ばれる。
「時坂翔太です。宜しくでっす」
「君は、時坂純也さんの息子だったか? それに、異界人の母。地球人と異界人のハーフであってるか?」
「そうだぜ、時坂純也は俺のオヤジだぞ。母様は異界人で間違い無いしな」
「凄い血筋だな······翔太、戦闘スタイルを教えてくれ」
時坂翔太は、双剣での戦闘方法を伝える。モンスターとの戦闘では、防御よりも攻撃を重視した闘い方だ。
得意な事も攻撃で、苦手な事は防御であった。
「翔太は、実に真っ直ぐなスタイルだな。翔太はまだ若い、色々覚えればもっと強くなれるぞ」
時坂翔太の聞き取りは直ぐに終わる。次は、館浦喜助だ。
「よ、宜しくお願いします。た、館浦です」
「宜しくな、そんなに緊張しなくても大丈夫だぞ」
「は、はい」
館浦喜助の戦闘スタイルは、ハンマーでの攻撃と、スラ吉の防御、それとポチとの連携だ。
「特殊スキル、契約紋か······モンスターを仲間に出来るなんて羨ましいスキルだよな」
「た、確かに、僕には勿体ないスキルです」
契約紋について、詳しく説明する。紋様が身体に刻まれる事や、モンスターがどのような状況になると契約出来るかなどだ。
「そ、それと、強くもなるし、進化もします」
「そりゃ凄ぇ、俺が知ってるスキルの中でも、これは、一番欲しいと思ったな。次は得意、不得意な事も教えてくれ」
得意な事は、モンスターとの連携で、苦手な事は、人と喋る事だと言う館浦喜助。
「人と喋る事が苦手か、コミニュケーションも大事だからな。彰や翔太とはどうだ?」
「あ、ふ、二人共、良い人なんで、ま、前よりは喋れる様に、なりました」
「それなら大丈夫だよ、ようは、慣れだ。それと自分に自信を持つ事だな。喜助は能力値が上がればもっと闘える様になるし、モンスターの種類が増えれば得意な連携も多彩になっていくぞ」
自信を持つように話す宝田和彦。実際、強くなるとも思っていた。
3人に聞き取りが終わった後、郷倉未知瑠に話をする。
「3人共、凄い人材ですね。パーティーとしては成立してないので、2人は加えた方が良いのですけど······彰以外の2人は、技術的には駆け出しレベルだと思うんですよね」
宝田和彦が言いたい事は、パーティーを組ませるのにあたって、レベルや意識の違いはお互いを阻害する可能性があると言う事だ。
「必要な人材は、遠距離攻撃が出来る者と回復役です。一人遠距離攻撃、魔法を得意としてるのが居るんですけど······」
「それは、愛のことよね? 言いたい事は分かるわ、愛に癒やしの魔法を覚えさせれば完璧じゃないかしら」
回復魔法の宝玉は、とても貴重だ。郷倉未知瑠は、最大限サポートする為に、使用を許可する事を、あえて口にした。
「愛ちゃんに使ってもいいんですか? 在庫一つしかないですよ······それに愛ちゃんの問題を解決しないといけませんよね」
現在『繋ぐ未来園』には、黒街彰達に必要な人材は一人しか在席して居なかった。三日月愛、遠距離魔法を得意とする少女だ。
だが、パーティーを組まず一人で居るのには理由があった。三日月愛は事件を起こし、一人孤独になってしまったのだから。




