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第一章【旅の行方】中央VS北

地上へ戻ってきた黒街彰は、早速手に入れた篭手を鑑定しに向う。二ノ扉で大量のリザードソルジャーを狩った事で魔石は十分に手にしていた。


「先ずは、その篭手を鑑定するぞ。その後はステータスも見て最終対策だ」


ダ・ビャヌと時坂翔太は隠れ家向かった。探索者協会へ来たのは、黒街彰と時坂純也の二人だ、この先は二人で行動することになる。


篭手の鑑定結果が出る。プレートに書かれていたのは、ランクA『衝撃反射の篭手』受けた相手へ衝撃を返す。蓄積可能。防御力+200。


「ランクAか······やっぱSはなかなかでねぇな。でも逆転劇には持って来いの性能だぞ」

「そうですね、受けた相手へ衝撃を返すって、受けた相手だけに限定されるって事ですかね?」

「そうかもな、今日と明日で検証しとかないとな」


続いてステータスを鑑定しに向う。


【名 前】 黒街彰

【性 別】 男


【命 力】 89 (50)

【魔 力】 0

【攻撃力】 73 (50)

【防御力】 34 (50)(200)

【素早さ】 209 (50)

【幸 運】 17

【スキル】 魔力感知(中)

【魔 法】


「何となく予想は出来ていたが、スピード特化型だな。彰君のスタイルに合ってるから良いと思うが······決闘までに全体をもう100づつ上げたかったな」

二ノ扉で手にした宝玉は最終的に3つであった。内訳は、命力一つと素早さ二つだったのだろう。


「あっ、魔力感知が(中)になってます。前は(小)だったんですよ」

「スキルは成長型があるからな、他にも固定型や特殊型もあるぞ」

前回からの疑問は、あっさり答えを貰える。もう一つの疑問、カッコ内の数値がどう反映しているかも、カッコより低いステータスを見つけて解決した。

「そうなんですね、疑問だったんですよ。有難うございます」


アイテムとステータスの鑑定が終わり、直ぐに一ノ扉へ向い、疑問点の検証をして、作戦を立てた。

一ヶ月無理をしたんだ、決闘前日は、少しでも多く休息を取る事、それが時坂純也からの指示だ。


それでも家に着いたのは、決闘前日の夜21時であった。次の日は、朝早く決闘の地へ向かわなければならない。


(『衝撃反射の篭手』攻撃力が低い俺の切り札か······)

切り札になり得るのだが、検証の結果、受けた相手にしか衝撃波を返す事が出来ない事が判明していた。


(篭手で相手の攻撃を受け続ける事が重要何だけど、前もってダメージを蓄積出来ればよかったのにな、それに······もっと篭手を使う訓練したかったな)

時坂純也からのアドバイスは、篭手の部分でも直接受ける事は不味いらしい。受け流す事を繰り返さなけばならない、ここに来て技術を求められる。


(殆どぶっつけ本番だけど、やるしかない。勝って質問するんだ、良しっ頑張るぞ)

「待ってて······結菜」


翌日、探索者協会からヘリコプターで会場となる福島県へ向う。

乗り合わせたのは、防衛大臣の烏間高雄、Sランク探索者の時坂純也、佐久間仁、春日谷龍、それと現在は西で活動しているSランク探索者の堀拓馬(ほり たくま)であった。


「拓馬さん、お久しぶりですね。俺、西って行った事ないんですよね、向こうはどうなんですか?」

佐久間仁が堀拓馬に話し掛ける。この二人の関係は、佐久間仁が新人の頃に、面倒を見てもらった先輩が堀拓馬であった。

「おう、まぁ西も中央も異界はたいして変わらないな。それより、地上にモンスターが出たの知ってるか?」

「ニュースで見ましたよ、実際の所どうだったんです?」

「ニュース通り殆んどが危険度E程度のモンスターだったんだけどな、俺が狩ってたモンスターにちょっと特殊なのが居てよ、たいして強くはなかったから様子を見てたんだが······いきなり消えちまったんだよ」

「消えるって事は······異界から出て来た訳じゃ無いって事ですかね?」

「どうだろうな? 俺の予想でしかないけどよ、召喚の特殊スキルを手にした奴がいるんじゃねぇかな」

召喚スキルは、現在確認されていない。二人は新たな可能性に話が盛り上がっていた。


(高ランクの人達と一緒は緊張するな······会話の内容を聞いちゃって良いのかな?)

ニュースでも、モンスターが消えた事は出回っていない情報であった。


一時間程で到着する。福島県の県境にある国見町には、今日の為に特設ステージが建築されていた。其処には決闘をこの目で見ようと、大勢の人が訪れているのだった。


出場者は、待合室が用意され時間まで待機のようだ。

「人が大勢居ましたね、争いとか大丈夫でしょうか?」

黒街彰が心配になって時坂純也に声を掛ける。

「国の防衛隊も大勢居たし大丈夫だろ。北側も王が提案した事に逆らう真似はしないだろうしな」


「新米君は、大分緊張してるようだね。大丈夫だぞ、大将戦までに決着をつけるから安心していいよ。新米君は決闘が始まったら直ぐに寝ちゃえば良いからな」

黒街彰に声を掛けてくれたのは、佐久間仁だ。

「は、はい、でも······俺も頑張りますので」

「余計な言葉だったか。やる気は十分のようだね、それじゃぁお互い頑張ろう」

「はい」

(人気探索者だけあって流石に余裕があるな、気遣いは有り難いけど、俺は勝ちに来たかんだから、緊張なんかしてらんない······気合い入れて行くぞ)


少しの間、選手同士で話していると「会場へ来てください」と声が掛かる。


「よぉし、いよいよか。暴れてやるぜ」

それぞれの思いを胸に会場へ向って行く。


会場へ入れるのは、試合の出場者と国の代表数名だけであった。だが、テレビ中継が行われ、全国にLIVE配信される予定だ。


会場へ到着すると、北側の面々も揃って向かって来る。先頭を歩くのは、北の王、本城尊であった。


「今日は、存分に楽しもうじゃないか。中央は、有名人を揃えて貰ったようで感謝しかないな。それに黒街彰、君の舞台を用意したつもりだからな、楽しませろよ」

本城尊が先ずは口を開く。続いて審判役の男からルールの説明が行われる。


ルールの内容は、

①武器、防具、アクセサリーの使用を認める

②魔法、スキルの使用を認める

③回復薬の使用は禁止とする

④決着は、意識を失う、又は命を失う事とする

⑤降参は禁止とする

⑥試合出場者以外の者は手出し禁止とする

⑦3勝した方が勝利とする


「もしも、試合中に手出しする者が居たら、俺様が手出しをした者と出場者の両方をこの世から消し去る。ルールを破った時もな、よぉく覚えとけ」

審判の話すルールに、本城尊が罰を追加する。


「出場者の皆様、ルールに了承して頂ければ試合を開始したいと思います」

お互いの出場者が了承すると、中央と北の代表が出場者の試合順が書かれた紙を審判に渡す。


審判の男は、中央から選抜されたスポーツの審判の資格を持つ一般人だ。中央と北の話し合いの中、北が大半のルールを決めた事で審判は中央から出すと決まったのだった。


「それでは、第1試合、中央からは、時坂純也。北からは八代凛。二人以外の方々はステージから降りてください」


(いよいよ試合が始まるぞ、最初から時坂さんか······相手の女の人はどんな人なんだろう?)


ステージに二人が残ると、試合が始まる。


「北は、本気じゃないのか? 大きな怪我をしないように意識を奪ってやるから、掛かって来な」

時坂純也が声を掛けた。


「有名人だからって調子に乗んなよ。後悔させてやんからなっ」

八代凛が得意とする戦闘方法は、ハンマーを使った近接戦闘だ。勢いよく近づき自分の得意な間合いをとった。


そしてハンマーを振り上げる······が、振り下ろそうとしたハンマーが動かない。何が起きたのか判らずに混乱する、その一瞬の隙で目の前に人影が現れた。

「······もう少し強くなってからだな」


時坂純也は、顎に向かって攻撃を仕掛ける。これで意識を奪って終わりにするつもりだ。


「ふざけるなっ······んっ」

時坂純也の狙いを察知した八代凛は、歯を食い縛り、衝撃に耐える。


衝撃で吹き飛ばされるが、意識は失っていなかった。

「大したことないねっだ、勝負はこれからなんだから」


(根性あるな······北の若者も良いのが育ってそうじゃないか)

「ごめんごめん、キミは根性がある。ちゃんと勝負をしようか、だから今度は俺から行くぞ」


時坂純也は、魔力を使って加速すると八代凛のボディに一撃を入れる。


八代凛は、反応出来ず、気が付いた時にはくの字になっていた。更に、くの字になった体制のまま、後頭部へ衝撃が走る。


「勝者、時坂純也······急いで治療をお願いします」

審判が時坂純也の勝利を告げる。二度目は耐える事が出来なかった八代凛、ステージの上で横たわり意識を失っているのであった。


試合を観戦していた本城尊が治療するように、部下へ指示をする。

(中央で指揮してる奴は無能だな、俺ならこの男を最初から出すことはしねぇ。これで懸念材料が無くなったな)


「続いて第2試合、中央からは堀拓馬、北からは鈴原花。両者ステージへ上がってください」


(次は、堀さんか······どんな闘い方なんだろう?)


「又、女の子かよ······やり辛いなぁ」

「それじゃぁ、手加減してください······痛いの嫌なんで」

「しかも、さっきの子より女子力高目じゃんか······降参してくれよ」


審判が、試合開始の合図をしたと同時に攻撃を仕掛けるのは、鈴原花だ。十個の水球を創り出すと堀拓馬へ向かって発射させる。


「うぉっ、思ったよりやる気満々じゃないか······」

発射された水球を軽々と躱しながら、堀拓馬はどうやって試合を終わらせるか考えていた。


8個目の水球を躱した瞬間、水球の影に隠れた水の刃が堀拓馬を捉える。

地面を切り裂く程に圧縮された水の刃、直撃した堀拓馬も無事ではすまなかった。


「痛っ、完全に油断したっ······」

胸から足にかけて切り裂かれた堀拓馬は、少なくない血を流していた。

「治療しなきゃ不味いな、こりゃ······仕方ない、全力で終わりにするか」


堀拓馬は、槍を使う戦闘スタイルだ。構えると同時に走り出す。

鈴原花も近付けまいと、水球と刃で攻撃するが全て槍で打ち落とされてしまった。


槍の間合いまで近づいた堀拓馬は、真っ二つにする勢いで槍を振り下ろす。

「いっ、いやぁ」

鈴原花は、死を覚悟して叫び声をあげてしまった。瞬間、左の頬へ衝撃が走った。


(いやぁ、何て言われたら俺が殺人鬼みたいじゃねぇかよ······)

振り下ろすと見せかけて、槍の根本、石突で顎を打ち抜いた堀拓馬。無事相手の意識を奪う事に成功していた。


「勝者、堀拓馬」

ステージから降りてきた堀拓馬へ、少し興奮した佐久間仁が駆け寄る。

「マジかっ、真っ二つかよって思いましたよ。いやぁびっくりしたぁ」

「そんな事するかよっ、それより邪魔だ······治療させてくれよ」


第3試合の出場者がアナウンスされる。北からは、増岡大輝(ますおか たいき)。北の十傑と呼ばれる実力者である。此処から北は、本気で勝ちに来るようだ。


対して、中央から出るはずの春日谷龍。呼ばれた瞬間に「棄権します」と声を発したのであった。


「俺の出場条件だからな、ルールも降参は駄目でも、棄権が駄目とはなってなかっだろ」

元々、中央が二勝して3試合目になった場合は、試合に出ないという契約であった。だが認めるか否かは、本城尊が決める事になる······認められない場合は、本城尊と闘う事になるだろう。


審判が、中央と北の代表へ判断を仰ぐ。

「本城殿、確かに春日谷とは、ルールが決まる前に、そのような契約をしておりました。失念していた事申し訳ない。本城殿が下す判断に添った形に致しますので······」

防衛大臣の烏間高雄は、本城尊の出方を伺う。


「······今回だけだ、次からは棄権も認めない。必ず出場者には戦闘をしてもらう、それで良いな?」

本城尊は、思ったよりも簡単に受け入れる。中央にとっては良い事であったのだろうか?と思わずにはいられない烏間高雄であった。


第3試合は不戦勝で北の勝利となった。現在は中央が2勝、北が1勝、次の闘いが中央か北の勝者を決める闘いになると殆どの者が思っている。


中央からは、エースの佐久間仁。中央に住む人々にとっては、最も有名な探索者で有り、最強と思われている人物だ。


北からは、郷倉未知瑠。本城尊の右腕と言われる人物。北の十傑の一人、それだけで相当の実力者だと分かるであろう。


二人の闘いがもうすぐ始まる。


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