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奇跡  作者: みゆたろ
14/15

ミケとの最初の出会い

そういえばあの時。

私がまだ11歳の寒い日だった。

学校の帰り道に捨てられているのか、お散歩しているだけなのか、わからなかったが一匹の猫がいた。


ーーにゃー。

ーーにゃー。


道端で声が掠れた三毛猫が鳴きながら、通りすぎる人々に、甘えるようにして頭を擦り付けていた。


「ーーこの子、カワイイ」


私はケータイを片手に、ネコちゃんの写真を撮った。

それだけで満足だった。

人に飼われている猫なのかも知れないと思った。冷静に今思い出すと、首輪はまだついていなかった。捨てられた猫だったんだ。


冬が始まると言うのに、外で過ごすのは可愛そうだと思いながら、私はそのネコを置き去りにして、家に帰った。


ーーそうだ。あの時のネコ。

ーー捨てられていたあのネコが、今のミケだったんだ。

私が通りすぎた後で、ミケをおばあちゃんが連れて帰ったんだろう。


思い出した。

それなのにミケが、私にいくつもの奇跡を見せてくれたのは何でなんだろ??


せめてこれからはずっと、ミケを大切にしていこう。

私は心にそう誓った。

この数日間で思いもよらぬ、奇跡を目の当たりにしたからこそ、大切にしようと思うのか。奇跡が起こらなくても、私はミケを大切にしようと思っただろうか。


そんな事を考えていると、電話が鳴った。

警察からだった。


ーーあなたが探していた山口司さん、ご遺体で発見されました。


不思議な事に驚きはない。

なぜなら、彼の言葉で聞いていたから。

でも、急に寂しさが心を埋め尽くして、涙が止まらなくなった。


ミケが帰ってくると、物言いたげに私の顔を見て、にゃーと鳴いた。


トコトコと私に歩み寄るミケ。

そして私の膝の上に乗っかってくる。

まるで私を慰めるようにーー。


「にゃー」


「ミケ、ご飯食べな」


この時は、眩しい程のオレンジ色の光に包まれる事はなかった。


鳴きもせず黙って、私の膝の上でミケは眠りにつく。

顎の下を撫でて、頭を撫でる。

ミケは気持ち良さそうにしている。


ーーにゃー。


しばらくすると、ミケはトコトコとフローリングの室内を彷徨い始めた。


「ーーミケ、こっちおいで!」


ミケは自由に彷徨ってから、私の膝の上に飛び乗ってくる。

私の想いはミケに届いているのかも知れないと思ってしまうほど、ミケは賢い。


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