ミケとの最初の出会い
そういえばあの時。
私がまだ11歳の寒い日だった。
学校の帰り道に捨てられているのか、お散歩しているだけなのか、わからなかったが一匹の猫がいた。
ーーにゃー。
ーーにゃー。
道端で声が掠れた三毛猫が鳴きながら、通りすぎる人々に、甘えるようにして頭を擦り付けていた。
「ーーこの子、カワイイ」
私はケータイを片手に、ネコちゃんの写真を撮った。
それだけで満足だった。
人に飼われている猫なのかも知れないと思った。冷静に今思い出すと、首輪はまだついていなかった。捨てられた猫だったんだ。
冬が始まると言うのに、外で過ごすのは可愛そうだと思いながら、私はそのネコを置き去りにして、家に帰った。
ーーそうだ。あの時のネコ。
ーー捨てられていたあのネコが、今のミケだったんだ。
私が通りすぎた後で、ミケをおばあちゃんが連れて帰ったんだろう。
思い出した。
それなのにミケが、私にいくつもの奇跡を見せてくれたのは何でなんだろ??
せめてこれからはずっと、ミケを大切にしていこう。
私は心にそう誓った。
この数日間で思いもよらぬ、奇跡を目の当たりにしたからこそ、大切にしようと思うのか。奇跡が起こらなくても、私はミケを大切にしようと思っただろうか。
そんな事を考えていると、電話が鳴った。
警察からだった。
ーーあなたが探していた山口司さん、ご遺体で発見されました。
不思議な事に驚きはない。
なぜなら、彼の言葉で聞いていたから。
でも、急に寂しさが心を埋め尽くして、涙が止まらなくなった。
ミケが帰ってくると、物言いたげに私の顔を見て、にゃーと鳴いた。
トコトコと私に歩み寄るミケ。
そして私の膝の上に乗っかってくる。
まるで私を慰めるようにーー。
「にゃー」
「ミケ、ご飯食べな」
この時は、眩しい程のオレンジ色の光に包まれる事はなかった。
鳴きもせず黙って、私の膝の上でミケは眠りにつく。
顎の下を撫でて、頭を撫でる。
ミケは気持ち良さそうにしている。
ーーにゃー。
しばらくすると、ミケはトコトコとフローリングの室内を彷徨い始めた。
「ーーミケ、こっちおいで!」
ミケは自由に彷徨ってから、私の膝の上に飛び乗ってくる。
私の想いはミケに届いているのかも知れないと思ってしまうほど、ミケは賢い。