メイドとお嬢
やばい。展開が早すぎたかも。後で読んで気に入らなかった書きなおします……。
「なんであんな余計な事言ったの?!!」
「男女が出かけるのをデートというのが一般的ですから。事実を申し上げただけですが?」
「事実かどうかなんて聞いてないの!楓恋のせいで恥ずかしい思いをしたじゃない!!」
「あれは零様が悪いでしょう。少し目線をそらしながら、デート……、だなんて。チョロインそのものですよ。」
「……っ……!」
あるお嬢様の屋敷の廊下で二人の少女が言い合っていた。
一方は恥ずかしさと怒りをあらわに、もう一方は極めて冷静な様子で向かい合っている。
どうやら事の発端は、放課後での彼との会話らしい。
零は顔を俯かせ拳を握りしめているのだが、顔を真っ赤にした彼女の眼はしっかりと楓恋を捉えている。向けられている本人は全く気にした様子はないが。
「もういい!!」
先に動いたのは零だった。楓恋に向かって踏み込み、肉薄する。そして……そのまま楓恋を通り超して向かいの部屋に駆け込んでいった。
「はぁ。今回は少しばかり言いすぎましたか」
先ほどまでの毅然とした態度とはうって変わって、顔色を暗くしたまま俯いている。
「仕方ないんじゃないか?」
曲がり角に隠れていた彼は言った。
「……っ。旦那様お帰りなさいませ」
彼を見つけると焦ったように身を整え、直角に腰を曲げた。
「ああ。ただいま。久しぶりの日本の学校はどうだった?」
「三年しか留学に行っていませんが、やはりとても違和感を感じました。」
「そうかそうか。ところで……」
「楓恋は我慢することにしたのかい?」
楓恋の肩がビクンと跳ねた。その顔には明らかな動揺が浮かんでいる。
「…っ。なんのことでしょうか?」
楓恋の反応を見て彼は優しく微笑みかける。
「分かるよ。君が赤ちゃんの頃から見てきたんだ。今や家族のような存在。家族に隠し事はなしだ」
そう微笑まれた楓恋は、観念したようにうなだれた。
「もう一度聞こう。楓恋は陣君を諦めるのかい?」
彼女は辛そうに眉間にしわを寄せ、掠れた声でつぶやいた。
「…だって……。どうしようも…ないじゃないですか。零様が好きな人を私も…なんて許されませんよ……」
気が付けば何滴もの雫が目からこぼれ落ちている。口元を震わせながらそう言う彼女は壊れてしまいそうに見えた。
「僕はそう思わないけどな。……なあ?」
そう言った直後、タイミングを見計らっていたかのように、
向かいの部屋の扉が開いた。
ご読了ありがとうございました。