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白い姫は黒い皇子の番  作者: お嬢
第一章
2/18

2

家族が帰ってくる前に、片付け部屋に戻ったグラスは激しく後悔していた。

 

 (なんて格好を……お客様の前で!!)

 

 そう、服装で激しく後悔していた。令嬢が着るようなものでは無いものを、平然と着てお客様のお相手をしたのだ。

 それに十分な化粧もせず、醜い姿を御目に写してしまった。

 

 (これが、お父様やお母様たちに知られでもすれば……)

 

 ベットに伏してもんもんと悩んでいたら、カツカツと廊下から女性物の靴音がした。

 ぴくりと耳が反応する。

 

 グラスの部屋は壁が薄く、廊下の音はもちろんよく耳をすませば応接間や居間の声も聞こえる。

 

 

 (くる!)

 

 そう思った瞬間、勢いよく扉が開かれ誰かがドスドスと部屋に入ってくる。怖くてベットのシーツを無意識に掴む。嫌な汗が滲むのがわかった。

 

 「何寝てるの?!起きなさい!」

 

 キンキンと部屋に響く声が、グラスの耳を劈く。

 入ってきたのは真っ赤な髪をなびかせ、綺麗なドレスを身にまとったグラスよりも少し年上の少女だった。

 普段は少し垂れ気味な目を釣りあげて、グラスのサラサラな髪を乱暴に掴む。

 

 「っ!」

 

 ぐんっと思いっきりひっぱられ、頭皮が悲鳴をあげる。無理やり体を起こされ、バシッと頬を扇子で殴られる。

 

 悲鳴をあげる暇さえなかった。

 

 ジンジンと頬が熱を帯び、口の中でじわりと鉄の味がする。

 

 「あなたがいるせいで、私たちが笑われるのよ!なんでよ!?なんであなたなんかが生まれてきたの?!私の妹に!」

 「……」

 「あなたのせいで私たちは社交界で嘲笑の的なのよ!?お前一人だけが笑われていればいいのに!この落ちこぼれが!」

 

 今日はきっとお茶会に出席したのだろう。そこで陰口を言われたに違いない。

 エリザベートや母親のカタリナは、嫌なことや悔しいこと、憤ることがあるとグラスの部屋に来て八つ当たりをしていく。

 

 今回もそれだ。

 

 バシッ、バシッと何度も何度も殴られる。

 グラスの白い頬が赤く腫れ上がる。自然にじわりと目じりに涙が浮かんでくる。

 

 「お前なんか生まれて来なければよかったのに!!」

 

 ドンッと勢いよく突き飛ばされる。硬いベットの上に、ぼすんと体が沈み込む。

 

 「……今日のお前の夕食はなしよ。まだ生きていることに感謝なさい」

 

 肩で息をしながらそれだけ吐き捨てると、エリザベートはカツカツと靴を鳴らしながら部屋を出ていった。

 

 「夕食なし……また」

 

 (でも、おやつを食べたから明日の朝まで持つよね。朝食はあるはず……)

 

 今日は本当に夕食が出なかったので、空腹を紛らわせるためグラスは早めに眠ることにした。

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 「お腹……空いた」

 

 淡い期待は見事に打ち砕かれ、朝食も出なかった。

 くうぅとお腹がなる。

 

 ココが自分の分のパンをくれたのだが、昨晩食べていないからかそれだけでは腹は満たされなかった。

 

 「うう……」

 

 こてんと机の上に頭を乗せる。エネルギーが足りないからか、どんどん眠たくなってくる。

 

 (いっぱい寝たのに……)

 

 瞼がどんどん落ちてきて、すうぅと眠りに落ちた。

 

 

 

 

 「……んで!?…………な……あの方……紙が!?」

 「……よ…………とう……つけ……わせな……」

 

 何やら外が騒がしい。聞き覚えのある声だ。

 相当大きな声で話しているようだ。片方は叫んでいる様だが。

 

 せっかくエネルギーをなるべく消費しないようにと寝ていたのに、目が覚めてしまった。

 

 喉がカラカラだ。

 なにか飲みたい。

 

 水差しを取るために立ち上がる。水差しは扉近くの棚の上に置いてあるため、扉に近ずけばよりはっきりと声が聞こえてきた。

 

 「手紙のお返事、どういう理由にしましょう……」

 「普通に体調が宜しくないからとでも書いておけばいいのよ」

 「そうですね、お母様。でもなんでセイカ様が、あのゴミに手紙を出したのでしょう……」

 「そんなことわたくしに分かるはずないでしょう。……まさかアレ、私たちのいない時に外に出てるんじゃないでしょうね」

 「念の為に、扉を内側から開けられないようにしましょうよ」

 「そうね」

 

 どうやら清夏が本当に手紙を出してきたらしい。

 エリザベートとカタリナは、グラスを人の目に触れさせたくないのか、断りの手紙を書こうとしている。

 しかも、グラスを閉じ込める気だ。もうそこは徹底していると言える。グラスの世話をするのはココのみ。そのほかの使用人とは部屋の外に出ない限り合わないし、仮にあったとしても話さない。

 

 (もう一度、清夏様に会いたい……けれど)

 

 上等な服を持っているわけでも、良い見た目とも言えない自分は、あの方に会う資格はない。

 

 きっと今この部屋から出て行って、あの二人の前に姿を現せばなぜ自分宛の手紙が来たのか問い詰められる。

 

 (またっておっしゃってくれたのに……私は会うことすら出来ない)

 

 水を飲もうとしたことも忘れ、またベットまで戻る。ぼすんと枕に顔を埋め、そのままギュッと抱きしめる。体を丸め、何かを耐えるように昼食の時間までそうしていた。

 

 

どのぐらいの分量を書けばいいのか謎……

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