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掃除屋ですが何か?  作者: 夜影灯月
2/3

二話

時間になったので、取り敢えず必要なものだけを鞄に詰めて、家を出る。



ドアを開けて鍵を閉めると、外気が頬に吹き付けた。階段を降りると、アパートの大家さんがあたりをほうきで掃いていた。


会釈を交わして、マフラーに顔を埋めつつ歩き出す。


相変わらず寒い。二月になったが、この寒気はまだ居座るようだった。


途中バスに乗り、四十分ほど移動しただろうか、目的地にたどり着く。


俺の職業はホストだ。顔が悪くなかったからか、採用された。


まあ、悪く言えばただの大学受験を五浪して諦めた愚者なのだが。



「ちわっす、着替えてきまーす。」


「ああ、お疲れっす先輩。」


と、そばにいた後輩にそう言われて、片手を上げて更衣室に入っていった。




ーーーー



「アズマくーん、指名だよ。」


店長にそう言われ、返事をして客の席に向かう。


俺の本名は東雲魅夜(しののめみや)と言う。その苗字の東雲の東をとって、アズマという名前でホストをやっていた。


「こんにちは、ご指名いただきありがとね、アズマです。」


にこやかな笑顔で接客していく。



と、その時。



「「ガシャァン!!!」」


大きな物音がして音源の方を見ると、そこには……


「モイエンターっっ!?!?」


ガラス製のドアが割られている。



そして……モイエント感染者、その完成系になった者をモイエンターと呼ぶ。



つまりそこには…モイエンと感染者完成系がいるわけだ。



初めて出会したそいつは、まさにモンスターの風貌だった。顔さえ何処にあるのか見分けがつかない。



好奇心が昂り、興奮が募る。


「「キャアアアアアアッ!!」」


周りの女性の甲高い悲鳴でハッと我に帰る。



そうだ。これはモイエンター、噛まれたら終わり、触れられれば執行猶予付きの終わり。


“死”を改めて実感し、ゾクゾクッと寒気がする。


ここは暖房が効いているのにもかかわらず。



武者震いかもしれない。



どうしたらいい……客を優先して助ける……いやそうすれば俺たちに危険が……!


「お客様、落ち着いてください!!ただいま駆除隊を呼びましたので!!」


店長が必死に叫んでいる。



そうだ、俺たちはここの店員。客を安全な方へ誘導しなければならない。



「無闇に動いて逃げようとせず、その場に止まってください!!モイエンターが近づいてきても、焦って走らず、ゆっくりと離れてください!!」


俺も声を荒げていった。




と、次の瞬間。



「「ウガアアア」」


まるでゾンビのように、モイエンターが客に飛びかかる。


「キャアアアア!!!」


客が叫ぶ。



くそっ!!



俺は急いで手を引き、客を助ける。



こんな物が多くて狭い場所じゃ逃げ道も少ない。危険すぎる……



『遅れた、掃除屋だ。』



次の瞬間、拡声器越しのそんな声が聞こえて、出入り口の方を見やる。


そこには、奇抜な格好をした男女二人の駆除隊がいた。



やっと到着か……



『一匹のようだな、3分も要らない。』


チャキ、と男性の駆除隊が構えたのは……刀……?



『入刀貫通ッッ!!』


ほんの、一瞬の出来事だった。目にも留まらぬ速さで刀が動き、スパンッと音がしたかと思えば、モイエンターが真っ二つに切り裂かれ、動かなくなっていた。



『この遺骸は我々で回収する。もう大丈夫だ。』


鞘のようなものに刀を納めたその隊員がそう言うと、今度は女性隊員が何か言葉を叫ぶ。するとモイエンターの遺骸はいくつかに切り刻まれ、それを袋に詰め出した。



全て詰め終わると、その女性がじゃあね、とウインクして去っていこうとした(・・・・・・)



とその時。



『なっ…!?お前っっ!!』


男性の方の隊員が、俺を指差してこう言ったのだ。


『……ちょっとついてこい。』



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