拳銃と記憶
本編です。
二回連続キャラクター紹介はしません。
07
「勝負は君の勝ちですね。」
「えっ、はい。」
唐突すぎて、何がなんだかわからなかった。
でも、彼の子供っぽい仕草には、なぜだか嫌な感じはしなかった。
「色々な材料を使って壊れにくくなっているはずだったんですよね。」
そう言いながら彼は的をボタンの近くの床に置く。
「じゃあ、戻りましょうか。」
渡辺さんらしくない。
なにかを忘れているような気がした。
しばらくして、彼が、思い出したように言葉を発した。
「すみません。あれでしたね。」
よかった。思い出してくれたようだ。
そうして彼は、入口の方に歩いていく。
僕も、迷子にはなりたくないから、一緒に武器庫のなかを歩く。
「ここがこれだから……。」
なにやら棚の下の方の箱を漁っているみたいだ。
特にすることもないし、覗いてみることにした。
金属で出来ていると思われる無数のパーツ。
それが簡単に銃に変わっていく。
なんとも言えないおかしさがあった。
「これで完成、ですね。」
「ロシアンルーレット?」
手渡されたものを見て、思わず言ってしまった。
リボルバーが回るタイプの銃だ。
回転式拳銃だっけ。よくわからないけど。
「ダメですよー。これは護身用ですから。」
「そう、ですよね。」
そのあとに、渡辺さんは誰にも聞こえないくらいの声でこう呟いた。
「この程度であの子を倒せるとは思えない、ですけどね。」
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