表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
no_title 題名のない物語  作者: 藤原 アオイ
第一章 project angel
65/68

邂逅、それは地獄への扉 2

 63


 一方的な虐殺(ワンサイド・ゲーム)はいつか終わりを告げる。それが早いか遅いかは誰にもわかりはしない。彼女にとっての限界(リミット)はとても短く、それは、彼女自身が一番よく知っていることであった。


 これに関しては彼女にはどうにもできない。彼女が彼女である以上、どうしてもついてまわる事実なのだから。


 バターのように切られていく肉塊はその数をだんだんと減らし、でも、それでもゼロにはなりそうにない。


「早く、出ていってよ。誰か(人間)が愛したここを、これ以上壊さないでよ。」


 必死な叫びも、


 泣きそうな顔も、


 壊れかけの心ですら、


 誰にも、届きはしない。


 耳に残るのは拒絶、焼き付いて消えることのない音色。


「――――化物(バケモノ)。」


 それを誰が言ったのかはわからない。もしかしたら彼女自身の口から出た言葉かもしれないし、誰かが言ったのかもしれない。


 だが、その言葉で、越えてはいけない一線は意味をなさなくなる。


 人工物。そんなこと、言われなくても知っているさ。


 ――――●●って、変だよね。


 同調していく背景、それを()は覚えてはいない。でも、わかる。記憶の残滓、残りかすだけでも垣間見てしまったから。


 記憶の箱にはガムテープで蓋をして、そうして(自分)は歩きだした。最初に踏み出すのは右足、それとも左足。それすらもわからずに。


 彼女は本質的な部分がずれている。兵器にもなりきれず、人間にもなれない。中途半端な何か。


 作りものの心に、作りものの魂。本物には到底届きそうにない。私は、中途半端なロボット(化物)なんだ。


 涙が一粒こぼれる。頬を伝い、そして蒸発して消える。


「あはっ、あははっ。正解なんてものすごーく簡単じゃん。自分以外ううん、自分含めて全部(ぜーんぶ)壊れちゃえよ。世界平和? そんな理想論なんて捨てちゃってこんな現実(ディストピア)、終わりにしようよ。それでさぁ――――」


 ――――こんな面白くない世の中なんかおさらばしちゃおうよ。


 決定的な何かがズレた。日本語にはネジがとんだという表現があるが、飛ぶどころの話ではない。そもそも飛ぶようなネジなんて存在していないのだから。


 彼女は何も変わってはいない。ずっと前からそう。どうしようもなく弱くて、どうしようもなく(もろ)くて、ガラス細工のような心。


 悲鳴をあげる思考(能力)回路なんて知らない。存在する限り殺し続ける。それが彼女のたった一つの存在理由なのだから。


「斬って、殴って、絞めて、潰して、あはっ、あははっ、面白くも無いのに笑えてくる。本当に嗤っちゃうよ。」


 面白くもないと言いながら、瞳は快楽に歪んでいく。掴まれるのは人間の頭だった何か。掴まれた、ではない。引きちぎられたのは、と修正するべきだろうが。


 潰された声帯は声を出すことすらも許されることはなく、打ち捨てられた肢体だけがその場に残る。


「本当は心臓を捻り潰したかったけどさ、こっちの方がさ、分かりやすいでしょ?」


 本能的な恐怖はすべてを上回る。次は貴様だ、そう語る彼女は既に人ではない。人の心を持てなかった悪魔、そう表現するのが適切ではないだろうか。


 手を伝うのは赤い液体、布地に染み込み、赤いシミをいくつかつくっていく。いや、逆だ。今はもうシミがない場所の方が少ないのだから。


「燃焼、そして蒸発っと。次は誰にしよっかな?」


 血糊はご丁寧にナノレベルまで分解され、殺戮の痕跡は彼女には残らない。ただ、首から上が存在しない屍体が量産されていくだけ。


 十分が経つ。時間制限に意味はない。彼女はそんなことは知らない。もう覚えていない。


 彼女に過去は存在しない。


 彼女が知っているのは今だけ。


 (ゆえ)に彼女は、




 ――――その弾丸(感情)を知らない。

お読み頂きありがとうございます。

山場その1がもうすぐくるはずなのです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ