邂逅、それは地獄への扉 2
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一方的な虐殺はいつか終わりを告げる。それが早いか遅いかは誰にもわかりはしない。彼女にとっての限界はとても短く、それは、彼女自身が一番よく知っていることであった。
これに関しては彼女にはどうにもできない。彼女が彼女である以上、どうしてもついてまわる事実なのだから。
バターのように切られていく肉塊はその数をだんだんと減らし、でも、それでもゼロにはなりそうにない。
「早く、出ていってよ。誰かが愛したここを、これ以上壊さないでよ。」
必死な叫びも、
泣きそうな顔も、
壊れかけの心ですら、
誰にも、届きはしない。
耳に残るのは拒絶、焼き付いて消えることのない音色。
「――――化物。」
それを誰が言ったのかはわからない。もしかしたら彼女自身の口から出た言葉かもしれないし、誰かが言ったのかもしれない。
だが、その言葉で、越えてはいけない一線は意味をなさなくなる。
人工物。そんなこと、言われなくても知っているさ。
――――●●って、変だよね。
同調していく背景、それを私は覚えてはいない。でも、わかる。記憶の残滓、残りかすだけでも垣間見てしまったから。
記憶の箱にはガムテープで蓋をして、そうして私は歩きだした。最初に踏み出すのは右足、それとも左足。それすらもわからずに。
彼女は本質的な部分がずれている。兵器にもなりきれず、人間にもなれない。中途半端な何か。
作りものの心に、作りものの魂。本物には到底届きそうにない。私は、中途半端なロボットなんだ。
涙が一粒こぼれる。頬を伝い、そして蒸発して消える。
「あはっ、あははっ。正解なんてものすごーく簡単じゃん。自分以外ううん、自分含めて全部壊れちゃえよ。世界平和? そんな理想論なんて捨てちゃってこんな現実、終わりにしようよ。それでさぁ――――」
――――こんな面白くない世の中なんかおさらばしちゃおうよ。
決定的な何かがズレた。日本語にはネジがとんだという表現があるが、飛ぶどころの話ではない。そもそも飛ぶようなネジなんて存在していないのだから。
彼女は何も変わってはいない。ずっと前からそう。どうしようもなく弱くて、どうしようもなく脆くて、ガラス細工のような心。
悲鳴をあげる思考回路なんて知らない。存在する限り殺し続ける。それが彼女のたった一つの存在理由なのだから。
「斬って、殴って、絞めて、潰して、あはっ、あははっ、面白くも無いのに笑えてくる。本当に嗤っちゃうよ。」
面白くもないと言いながら、瞳は快楽に歪んでいく。掴まれるのは人間の頭だった何か。掴まれた、ではない。引きちぎられたのは、と修正するべきだろうが。
潰された声帯は声を出すことすらも許されることはなく、打ち捨てられた肢体だけがその場に残る。
「本当は心臓を捻り潰したかったけどさ、こっちの方がさ、分かりやすいでしょ?」
本能的な恐怖はすべてを上回る。次は貴様だ、そう語る彼女は既に人ではない。人の心を持てなかった悪魔、そう表現するのが適切ではないだろうか。
手を伝うのは赤い液体、布地に染み込み、赤いシミをいくつかつくっていく。いや、逆だ。今はもうシミがない場所の方が少ないのだから。
「燃焼、そして蒸発っと。次は誰にしよっかな?」
血糊はご丁寧にナノレベルまで分解され、殺戮の痕跡は彼女には残らない。ただ、首から上が存在しない屍体が量産されていくだけ。
十分が経つ。時間制限に意味はない。彼女はそんなことは知らない。もう覚えていない。
彼女に過去は存在しない。
彼女が知っているのは今だけ。
故に彼女は、
――――その弾丸を知らない。
お読み頂きありがとうございます。
山場その1がもうすぐくるはずなのです。




