能力と適性
ごめんなさい。ヒロインはまだ出てこないです。
05
東葛支部■■階『武器庫』
ゆっくりと扉が開き、天井の照明機器が一斉に光をともした。
学校の体育館くらい大きな施設。その手前の方には、びっしりと本棚のような棚が並んでいた。その点だけでいうと、図書室と言っても差し支えのないほどに。
僕は、一番近くの棚に向かって歩いていく。もちろん、渡辺さんもついてきている。
そこには、大量の銃が並んでいた。
「もしかして、刀やナイフがお好みでしたか?」
この人、僕の能力のことわかってて言っているに違いない。
高火力、紙耐久。
それしか出来ないのが僕だ。
簡単に言うと、ファンタジーで言うところの「後衛魔導士」のような戦い方。
近接戦になった瞬間打つ手が無くなる。
だから自分からは近づかない。正確には近づけない。
そんなネガティブなスパイラルに陥りそうになったときに、渡辺さんがちょっとした提案をしてきた。
「ここにあるもので、的当てゲームとかどうですか。」
彼によると、ここの奥半分では、模擬戦のようなことが出来るらしく、銃の試し撃ちにちょうどいいのだとか。
僕は、一番近くにあったものとそれ用の弾を手に取り、彼の言っていた場所に向かった。
足音が天井に反射して聞こえる。
木でできているはずの床の軋むような音は全く聞こえない。
その場所は、案外近かった。
ただ、気分的に近づきたくなかった。
「遅いじゃないですか。」
そう言う彼の近くの机には、手裏剣や、投げナイフ、ブーメラン、輪ゴム鉄砲等々が山積みにされていた。
「火縄銃ですか。いい趣味ですね。」
褒められても全く嬉しくない。というかこれ、火縄銃だったのか。
気がつかなかった。
「火縄銃は確か、先込め式だから…」
丁寧に火縄銃についてレクチャーしてくれた。
知りたかったわけでは無いのだが…。
もちろん、玉は彼に入れてもらうことにした。
「あまり下に銃口を向けないでくださいね。」
そう言いながら、数秒で玉と火薬の準備をしてくれた。
「最初はグー、ジャンケンポン」
僕が負けて先攻になった。
僕は、火縄銃を頬にあてて構える。
なんだか足軽になった気分だ。
用意されていた的を確認する。
的は20メートル先。
シャトルランと同じ長さだ。
サイズは半径20センチメートルくらいだろうか。
これくらい僕にとっては朝飯前だった。
目を閉じてゆっくりと呼吸をする。
数秒たったころだろうか。
ゆっくりと目を開ける。
そうして、「いつものように」ターゲットに意識を合わせる。
視界に赤いアイコンのようなものが浮かび上がってくる。
それを確認して引き金をひく。
この間コンマ1秒。
信じられないほどの反動。
僕は思わず二三歩後ずさってしまった。
確認すると、的の中央に綺麗な穴が空いていた。
「お見事。」
振り返ると、渡辺さんが満足げに手を叩いていた。
火縄銃、熟練の人でも玉と火薬をこめるのに20秒程かかるらしいです。
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