真相と依頼
03
「今回の事件。君も知っている通り、被害者の命に別状はなく、能力だけが奪われている。いや、正確には、能力が使えない状態にされている。」
「使えない状態、ですか?」
「ああ。能力はどこから出力されている?」
能力の出力。全くピンと来ない。
僕は、俯いて首を振った。
「そんなつもりで言ったわけじゃないのだが。」
僕には、渡辺さんの意図が全くわからなかった。
だが、心当たりはあった。
「神経伝達物質みたいな?」
「当たらずとも遠からず。その認識でかまわない。そして我々は、それを『能力回路』と呼んでいる。」
『能力回路』。
はじめて聞く単語だった。
「もしかして、被害者は、その回路を?」
「ご名答。能力を使えないどころか、使おうとすると、全身に激痛が走るそうだ。」
「被害者はどうなっているんですか?」
「……見たいのかい?」
この支部のデータではないという前置きを聞き流し、写真を受け取る。
写真に写っている彼らの顔は、どこか怯えているようだった。
数枚目の写真。
現場だと思われる写真。
白い仮面をつけた少女が写っていた。
その仮面には、返り血がベットリとついていた。
そしてその後ろにあるダラリとした赤い物体。
仮面の人物はどこか笑っているように見えた。
僕は彼女をどこかで見たことがある気がする。でもどこで? 思い出せない。考えれば考えるほどわからなくなっていく。その後僕は、写真を床にばらまいて倒れてしまったらしい。
それから数十分後。
何もなかったかのように渡辺さんは、話をし始めた。
「まず、その写真の被害者。学年は新中学1年生。これまでのように命に別状は無いようです。ただし、回路がめちゃくちゃにされているため、能力の使用は不可能。今は、船橋支部に収容されているようです。」
「で、犯人は誰なんですか?」
「まぁ、落ち着いてくれ。候補にあがっていて、アリバイが無いのは二人。」
「なら、捕まえればいいじゃないですか。」
「そういうわけにはいかないんだよ。」
これが噂に聞く「大人の事情」というものなのだろうか。僕にはよくわからない。
「で、本題の被疑者ですね。一人目は、ウチの支部の『赤城アオイ』。能力は監視者だったかな。彼女であれば、回路の破壊も可能だろう。ただ、奴は生粋の研究者だからな。どうせ研究所にこもっていただけだろう。」
そう言って彼は大きなため息をついた。
「えっと、赤城さんと何かあったんですか?」
「いや、何でもない。ただ、毎回とんでもない論文を送りつけてくるだけですね。『能力回路』とか、『多重能力』とか能力関係のですよ。」
「で、もう一人は?」
「船橋支部の『藤原ミツキ』。こっちに関しては本当に情報がないようで……。」
そう言い、彼は深々と僕に頭を下げた。彼が謝ることでもないと思うのだが。
「支部の見解としては、彼女が今回の犯人ということだそうです。」
僕が呼ばれた意味がよくわからない。そう言うと、彼は笑顔でこう言った。
「東葛支部からの依頼、いえ、指令です。事件の沈静化のために犯人をサクッと倒してきてください。君なら出来ますよね?」
ちょっと意味がわからなかった。
次回はバトルシーン?それとも?
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