揺らめく影と蜃気楼 6
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一人で学校に歩いていく彼女が見えた。どこか寂しそうな背中。今日はリュックではなく手提げバックのようだ。話しかけようか少し迷ったが、結局話しかけられる機会はなく、何もないまま学校に着く。
オリエンテーション。
能力者としての自覚を持てとか、もう中学生なのだから責任を持って行動しろとか当たり前のことを繰り返される。退屈な時間だった。昨日聞いたような話が多いからだろうか。眠くなってきた。ぐったりとしながら一年前のことを思い出す。
―――――――
あの時、確かに能力は発動した。そして銃弾は彼女の脳を貫き、地面に赤い花が咲くはずだった。でも実際、銃弾は彼女の頬を掠めただけ。強制的に弾道がずらされたとしか考えられない。
そして、見えない攻撃。冷静に考えると、超高速で動いただけという可能性が残る。これに関しては対策を練ってある。一年間、僕は何もしていなかったわけではない。近接戦の特訓も一応していたのだ。
―――――――
「これで、オリエンテーション一日目を終了といたします。一同、解散。」
いつの間にか終わっていた。後ろからツンツンと肩をつつかれる。
「あ、あの? 着替えた方がいい、でしょうか。」
能力者同士の決闘は、観戦者からすれば娯楽でしかない。それをすっかり忘れていた。僕は一気に挙動不審に陥る。
「えっと、もしかして、忘れてましたか?」
彼女はパチパチとまばたきをしながら聞いてくる。図星です。だからといって制服でバトルをする訳にもいかない。
「保健室に何着かあったはず……。サイズが合うかは行ってみないことにはわかりませんが。そ、それでは、また後で。」
彼女は昨日のホームルームの時間、真面目に先生の話を聞いていたのだろう。正直すごく助かった。その流れで僕は保健室に入る。
「失礼します。1Cの横田です。」
用件をいう前に、適当な戦闘衣を渡される。まさかのジャージ。それも嫌がらせのように上下共に明るい青の。
「新入生あるある。その1。入学早々アリーナを使いたがる。その2。着替えを忘れる。違ったかな?」
まだ若い保健室の先生のその言葉は僕の胸に突き刺さる。
「じゃあ、藤原さんは忘れたんですか?」
先生はニコニコしながら首を横に振り、そして窓の外を指差す。そこには体育館に併設された更衣室があった。
「ここに来なかったから自分のをすでに持っていたんじゃないのかな?」
もしかして藤原さん、僕とのバトル楽しみにしていた? いやいや、そんなはずはない。ない、よね?
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