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no_title 題名のない物語  作者: 藤原 アオイ
第一章 project angel
3/68

その事件は

ごめんなさい。メインヒロインはまだ出てこないです。

 02


 線路沿いの道を歩いていく。

 春休みでも社会人は休めないのだろう。

 駅と反対方向に向かう僕たちとすれ違うスーツ姿の大人がたくさんいた。

 そこそこ大きな病院が、僕の視界の隅っこに映る。

 線路の方を見ると、車体に青い線が入った電車が昔ながらの駅舎に停まっている。


「ドアが閉まります。駆け込み乗車はお止めください。」


 よく聞く駅員さんの声。


 僕たちは黙って歩いていく。


 歩道橋の階段を昇りきった場所。

 錆び付いた手すりに身体を預け、僕はふと、空を見上げた。ひんやりとした風が頬に当たる。僕の表情は自然に緩んでいく。

 ずっとこうしていたいなと思った。



 少し坂を登った所に東葛支部はあった。


 施設案内を見る。一階に受付。これは、どの施設でもそうなのだろう。だが、二階以降がおかしい。食堂や、資料展示室はまだわかるが、トレーニングジムってなんだ。それに、能力研究室。ここは本当に役所なのかを疑ってしまった。


 渡辺さんは、受付嬢に軽く事情を説明し、個室を借りてきた様だ。


「横田君、こっちです。」


 僕は黙って彼についていった。


 カードキーを壁に取り付けられている機械に通し、関係者以外立入禁止の扉を開ける。

 割と暗い廊下に繋がっていた。

 入口から10メートルほど先に、エレベーターがあった。

 僕たちはそれに乗り込み、最下層まで降りる。


 そこは、とても広い迷路だった。設計者の頭を心配してしまうレベルで。不意打ちにテンションが上がってしまったが、残念ながら今回の目的は迷路の探索ではない。僕は諦めて彼についていく。


 15分くらい歩いた頃だろうか。渡辺さんが立ち止まる。


「たしかここで、」


 彼は両手で壁を押す。壁がずれ、奥に空間があることがわかる。


「こっちです。」


 壁をずらして出来た空間に入る。

 赤いカーペットが敷かれた空間だった。

 僕が入った瞬間、壁につけられたキャンドルが一斉に火を灯す。


 渡辺さんは僕の反応を見て微笑んだ。

 そして、カーペットの上を歩いていく。


 豪華なドアが見えてくる。まさかあの部屋じゃないよね、と思いつつ渡辺さんについていく。


「この部屋です。」


 やっぱりこの部屋かと思い、少しがっかりした。


 部屋に入る前のセキュリティチェックがやはりきつい。

 虹彩認証の機械の覗きこむ。ここは渡辺さんだけでなく僕もする必要があるらしい。


「VIPルームです。面倒だから、普段使わないですね。」


 彼は微笑みながら、ドアノブに手をかける。


「入って、いいんですか?」


「ええ、もちろん。」


 座り心地の良さそうなソファーが二つ。


 派手すぎない調度品。


「どっちに、座れば……?」


 当然のごとく、マナーに詳しいはずがない。


「今回は、君が客人だからね。奥の席じゃないかな?」


 そうして僕は、ギクシャクとしながら席についた。


 渡辺さんは、僕が席につくのを確認してから、ドアを閉めた。


 彼の顔からは、いつもの微笑は消えていた。


「じゃあ、今回の事件について、だね。」

お読み頂きありがとうございます。

基本的に奥のほうが上座らしいです。

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