咲き乱れし赤い花 終
過去編終わりそうです。
19
「何かの、間違いですよね?」
僕の手は震えていた。寒い訳じゃない。ただ、聞くのが怖かっただけだ。
「ええ、すべて事実です。」
いつもよりも真剣な表情で彼は答える。否定して欲しかった。彼が誰かを殺したという事実、それよりも、彼自身が誰かを殺すための装置として産み出されたという現実を。
日記にはまだ続きがあった。
僕はそれに救いを求めてページをめくる。
XX/XX
外にライフルを持った外国人が歩いているのが見える。
外には彼ら以外誰もいない。
いつもの喧騒が嘘のようだ。
私達は黙って部屋の隅に隠れた。
足音が近づいてくる。
誰かが身代わりになるしかなかった。
当然の如く、私が身代わりになった。
この日記は娘に預けることにする。
good luck,little angel.
ここで日記は終わっていた。
救いのない物語。生き延びたのは、10歳になったばかりの娘さんとミサの二人だけだった。
八雲さんは彼女らを庇うために盾になって死んだらしい。直接的な死因は頭を貫通した銃弾だそうだ。
許せなかったのだろう。憎かっただろう。
彼女はもう何も信じることができなかった。
周りにいるのはすべて敵。
ボクたちを否定した人間。
そんな世界、存在する意味がない。
そうして、復讐姫の伝説が始まった。
彼女は、攻めてくる軍勢を文字通り殲滅した。
写真に映る彼女は、とても綺麗で、とても残酷で、それでいてとても悲しそうだった。
やっとここまできた。
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