表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
no_title 題名のない物語  作者: 藤原 アオイ
第一章 project angel
2/68

噂と好奇心

 01


 バシャバシャと水飛沫のような音がした。


 それが僕のはじめての敗走の音だった。


 ―――――――


「あの噂、知ってる?」


「例の事件の?」


「それそれ。あれ、ホントにあった話らしいよ。」


「えー、ヤバくね。だって、被害者はみんなチカラだけ消されて命に別状はないって話でしょ?」


 ファミレスのボックス席から聞こえる声。そんな馬鹿な話があるかって思った。だって能力は解析することはできても、与えること、ましてや奪うことなんて出来るはずがない。因みに、僕の能力は、簡単に言うと必中+破壊というものだ。ランクは一応A。付けられた二つ名は「天才」。付けた奴の頭がおかしいとしか思えない。


 話は戻るが、能力を「消す」という話。脳の特定の部分を破壊すれば可能らしい。ただ、それだと「命に別状はない」という部分に矛盾が起こる。


「横田くーん?横田光くーん?ちょっとこちらの話も聞いて欲しいんですね。」


 目の前に座っているこの謎のスーツの男性は渡辺さんと言うらしい。本名かどうかは怪しいけど。


「で、何ですか? わざわざ僕を呼びつけて?」


「まずはお祝いですね。進級おめでとうございます。もう小学校六年生ですか。子どもの成長は早いですね。」


 そう言いながら彼は数十枚の商品券を僕に押し付けてきた。


「…ありがとうございます。」


 現金のほうがよかったなんて言えない。


「あの話が気になるんですか? 盗み聞きはお薦めしませんよ?」


「あれについて何か知っているんですか?」


 思わず身を乗り出して大声で聞いてしまった。店内の視線が一斉にこちらを向き、どこか気まずい空気になってしまった。


「詳しい話は後でにしましょう。ここだと誰が聞いてるかわからないからですね。」


 そうして何もなかったかのように店員に注文した。


 僕はハンバーグとパンとドリンクバーのセット、渡辺さんはドリンクバーだけ。


「あの、食べないんですか?」


 と僕が聞くと、


「一応、仕事中という訳ですね。」


 とよくわからない返事をされた。


「お待たせいたしました。ハンバーグとパンでございます。ごゆっくりどうぞ~。」


 デミグラスソースをハンバーグにかける。


 肉の油とソースが混ざった部分が鉄板に触れた瞬間、ジュワーという音と共に美味しそうな香りが嗅覚を刺激する。


 フォークとナイフを手に取った僕は、もう待ちきれないといわんばかりに、慣れないナイフの動きでハンバーグを切っていった。


 そこまで多くない肉汁が溢れ出す。そして僕は、ハンバーグを口に運ぶ。


 その様子を渡辺さんはコーヒーを飲みながら満足げに見ていた。


「何か頼めばよかったかな?」


 と渡辺さんが呟いたのが聞こえた。いくら渡辺さんの奢りでもこれはあげられない。


 最後に、残った肉汁とソースをパンにつけて食べる。


 肉の旨みが染み込んだパン。


 美味しくないはずがない。


 そして最後に、ドリンクバーでオレンジ色の炭酸飲料とストローを取ってくる。


 渡辺さんは、


「エスプレッソとアメリカンの違いがわからない内はまだ子どもですね。」


 とか言いながら、十数杯目のコーヒーを飲んでいた。さすがに飲み過ぎだと思う。というか、カフェイン中毒を疑ってしまう。


「そろそろお会計でいいかな?」


「あっ、はい。」


 彼は伝票をレジまで持っていき、よくわからない黒いカードで会計を済ませたようだ。


「さっきの話、会議室とカラオケルーム、どっちでするか選んでいいですよ?」


「?…じゃあ、会議室でお願いします。」


「それなら、支部まで歩いていこっか。」


「…わかりました。」


 そうして僕たちは支部まで歩いて行った。

お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ