咲き乱れし赤い花 2
13
「ぴったり六時間だなー。三十分くらい遅れてくれれば面白かったのだがー。」
ほめているのかよくわからない口調。
「お腹すいたから、ちょっと行ってくるー。じゃなー。」
そう言い、彼女はおそらく研究室に戻っていく。
二人だけの空間。
当然の如くそこには気まずさという名の沈黙が発生する。
「あの、」
先に口を開いたのは僕の方だった。
「はい。なんでしょうか。」
渡辺さんが答えるまでに少し時間がかかった。
「えっと……。」
言いたいことは決まっていたが、いざ本人を目の前にするとどうしていいかわからない。
「どうして新船のことを隠していたか、ですよね。」
そう言い彼は、右の手を軽く握った。
「そもそも【新船】の名字の由来を知っていますか?」
辛い話なのだろう。ずっと俯いている。
僕は軽く首を振った。
「そこから話しましょう。」
新船とは、船研、船橋支部の研究所でつくられた能力者を指すらしい。
40人くらいの検体、いや、能力者がいたという。
「なんでそんなことを?」
「答えになっているかは、わかりませんが、三十年以上前の【project angel】と呼ばれる計画です。」
そう言い、彼は、赤城さんが持ってきた袋の中の資料を出す。
秘 project angel
この計画は、軍事利用に耐えうる能力者を開発する計画である。
そこには、誰かの研究日誌が綴られていた。
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