交差する視線
やっと、このシーンが書ける。
長かったような、短かったような。
09
21時。
天気予報の通り、雨が降っていた。
春休み中とは思えないほど冷たい雨だった。
「ここからは、一人で行ってください。御武運を。」
雨よりも冷たい声で渡辺さんは僕を送り出す。
目的地は、写真に写っていたあの路地裏。
ここから200メートルくらい先で曲がれば着くはずだった。
止みそうにない雨。
レインコート、借りればよかったな、と今更ながら思う。
しばらく歩いた頃だった。
「たっ、助けてくれっ、誰でもいいからっ」
男性の悲鳴が聞こえた。
震えている僕の手は無意識的にホルスターに向かっていた。
そうして僕は全力で走り出した。
路地裏。
写真と同じように仮面の少女が立っていた。
赤い返り血のついた白い仮面。
長くて艶のある黒髪。
不健康一歩手前の白い肌。
そしてその後ろには、血の花が咲いていて、ズタズタに切り刻まれた「能力者」だった何かが捨てられていた。
「これで、12人全員。復讐劇は、これで終わり。」
透き通った声。どこか悲しそうな音だった。
「で、目撃者さん。キミはボクを殺しに来たのかな?」
僕の手はいつの間にか拳銃を抜いていたようだ。
「動かないで下さい。」
出来るだけ刺激しないようにする。
拳銃を抜いている時点でそれは手遅れであったが。
「ふぅん。」
彼女の瞳から殺気が漏れだす。
僕は、迷わずに銃の引き金を引いた。
お読み頂きありがとうございます。
最悪の出会いっていうやつでしょうか。




