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「いやはや、まさか商人に引き殺されるとは……ビックリだよ!」
そんな絶叫も許されるだろう。助けようとしたのに殺されるとは、異世界、恐ろし過ぎる。まあ助けなかったけどさ。
「取り敢えずあの商人はスルー決定だな。しばらくここで待機で……、手頃なモンスターでもいないかねー。レベル上げしたい。盗賊位は瞬殺したいし」
スキルは『死に戻り』だけだ。後は自分の力で手に入れるしかない。剣と魔法の世界か。レベル1とかマジ大変。
気を取り直して3回目。行ってみますか!!
横に広がる森に歩を進める。
森を警戒しながら歩いていると樹の枝の上にリスを発見。
「リスって動物なのかモンスターなのか、強いのか弱いのか……、クソっ! 鑑定も欲しかった!!」
しかし俺には『死に戻り』がある。行動あるのみ。
足元に転がる石を拾い上げ、振りかぶって投げる。
石は思ったよりも速かった。しかし、リスには当たらず、少し上を通過していった。
チッと舌打ちひとつ間に挟みもう一度振りかぶろうとすると、リスが「キュ! キュアアアーーー!!」と威嚇しながら俺に向かってきた。
「モンスターかよ!! 上等だ掛かってこい!!」
剣を抜き構えてたが、リスは構わず向かってくる。タイミングを合わせて……
「チェストオオオオオーーーー!!」
掛け声と共に俺は上段に構えていた剣を勢い良く降り下ろした。が、リスはするっと避けて俺の腹に体当たりしてきた。
避けられる筈もなく攻撃をくらう。
「ぐふっ?!」
痛い! 痛いぞ! 思わず膝を着くとガンっと顎に衝撃が走った。コンボ攻撃?! マジか!!
顎を打ち抜かれたからかふらふらする。視界も覚束ない。けど、けど、けど!
「リスに負ける訳にはいかねーだろがよ!」
剣を出鱈目に振り回す。
「オアーーーーー」
振り回す。
あっ、なんか吐きそう……。
「オエッ、オロオロオロオロオロオロ」
数分後、何とか持ち直しふと気付く。リスの攻撃が無い。どう言うことだと辺りを見ればリスが横たわっていた。
剣に当たった?
ツンツンと剣で突っついてみたが反応は無い。どうやら死体のようだ。本当か? 念のためグサッと一発入れてみた。血がドバッと出ただけだった。
「ドロップは無しかー。消えない系で解体必要な奴ね。面倒癖ー。けど初勝利! 格好悪かったけどな……まあ、これから、これから」
しかし、リス相手にこんなに苦戦するとは思わなかった。小さくて速いのは危険だな。やっぱりここは定番のゴブリンからかな。そうなるとスキルが無い状態だと剣より槍の方が安全だよな。うーん、そこら辺はおいおいでいいか。
レベルは上がらなかったけど、そろそろ町に向けて出発するかな。
俺はとぼとぼと森を歩き出した。