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39 思案

読んで下さりありがとうございます。

「さて、情報の聞き出しも済んだことだし、そろそろ解放しようと思ってるけど・・・」

「是非そうしてくれ。同じ体勢でいるから、体が凝って来ちまった」

「それで、変な気を起こされても困るし、もう一度眠ってもらおうかと」

「待て待て待て、勘弁してくれっ。掃除屋に見つかったらどうする」


 一転して、必死な口調で捲し立てられ静止が掛かる。

 この慌てよう、掃除屋というのは彼にとって畏怖の存在なのだろう。


「空間魔法あるし大丈夫さ」


 五人を昏睡させた後、閑散とした場所を探して空間魔法内での聴取。

 呑気にやっているが、未だ侵入を受ける気配はない。

 これまでも、不可侵の領域として役立ってもらっている。


「要望を言える立場じゃないのは承知してるが、意識が戻るまで維持してくれるのか?それに、目覚めたか確認する必要もある」


 魔法は一度展開できれば、少量の魔力供給で継続することが可能。

 だがそれは、魔法の近辺にいることが条件となる。

 距離が開くに連れて、維持に必要な魔力は増えてしまう。


 これは水などの流体を送るホースと同じことで、長くなればなるほど、到達までに遅れが出る。

 その辻褄合わせのため、魔力を多く供給しなければならない。

 エストラリカはただでさえ広いのに、逆方向の宿屋に帰ったら高くつく。


 空間魔法はいわば自分の領域、人の有無は分かるため、出た瞬間に絶てばよい。

 とはいえ、麻酔の効き目には個人差があるから、労力はその人に左右されてしまう。


「あー・・・もう面倒だし見捨てていいか?」

「まあ話を聞いてくれ。部隊は全滅して、禁則が解除されてる。このまま戻っても処理されるのがオチ、歯向かって寿命を縮める愚かな真似はしねえよ」


 部隊を残して一人だけ帰還し、口止めである禁則を破られたとなれば、疑われるのも当然と言える。

 咎めを受けるのは確定、裏の住人が受ける処遇など分かりきった話。


 見捨てるとつい口走ったものの、それは本心から出た言葉ではない。 

 彼は質問に協力的だったし、返答に窮さず言葉を発していた。

 嘘をつく際、無意識に出る仕草は見受けられなかったので、その誠意に答えたいと思う。


「そこまで言うなら、普通に解放する。だが金輪際、俺たちを付け回すことはするな」

「助かる。どのみちここを離れるから、その心配はいらん」


 情報を漏洩した彼は、今日から追われる身となってしまったわけか。

 その発端を作ったのは俺だけど、非合法に手を出した自業自得。

 

 当分は神経を尖らせる生活を余儀なくされるだろうが、隠伏を使えば上手いこと免れるはず。

 境遇と持ち合わせの能力で索敵が培われただけで、悟られる方が珍しいケース。


「空間魔法を消すから能力を発動しときな。回収したものは置いておく」


 暗器を足元付近に一纏め、彼の存在感が希薄になったのを確認。


「それじゃ、これからは真っ当に生きろよ」


 抜刀したダガーを上から振り抜いて、手足を拘束していた縄を切り裂く。

 自由になったのを見届け、転移でその場から去る。

 異変を感じとった男は、目隠しを除いてキョロキョロと周囲を見渡すと、諦観交じりに言葉をこぼした。


「相手が悪すぎたな・・・」




「ふぅ・・・よし、用事を片付けるか」


 バタンと扉を閉じて鍵を閉め、一息つく。

 目星を付けておいた地点を転移し、そこから足早に歩き宿屋へと帰ってきた。

 

 予想外の事態に出くわしたが、先約である取引の件を進めなければならない。

 それと落ち着いた空間で、作業しながら考え事した方が捗ると思ったのもある。


 部屋の空いたスペースに借りたワイン樽を設置。

 屈めば人が入れる大きさだから、二つ並べると部屋が狭くなったように感じる。

 1メートルくらい高さがあり、このままだと迷惑がかかるので空間魔法で囲う。


 上部で水魔法を発動、中が満ちるまで水流を維持。

 先述したように、魔法の継続はコストが少ないため、魔力効率はいい。

 時間を要するが、水の流れる音は落ち着くから好きだ。


(にしても闇ギルドか・・・)

 

 まさかこうも早々に裏側の住人と出くわすとは。

 エストラリカは中枢と呼ばれる国で、遭遇率が高いのも頷けるけど流石に・・・。

 それはさておき、資産家のような人間が黒幕候補だとして、問題は目的の方。


 依頼はクランヌの関係者について調査と言っていた。

 その中に目標の人物がいるのか、または彼女に繋がる何かがあるのか、はっきりしない点も面倒。

 今回の失敗を受けて、当分は活動を沈静化させ、二の矢を継ぐことはしないはず。


 もしそうなら、今動いてもハイリスクでローリターンが関の山ってとこだろう。

 悩みの芽は早々に摘んでおきたかったが・・・まあ、準備期間ができたと思えばいいか。

 これからは、人相手に有効な魔弾を複数仕込んで、無駄なく立ち回れるようシュミレートを行うことにしよう。


 そうこう考えてる内に、水位が限界に達しそうなので水を断つ。

 あとは「浄化」を付与して蓋をすれば完成。


(自由に入って大丈夫らしいけど、一応断っておくか)


 30分後に持っていく旨を「伝達」で送る。

 構想を練りながら待ち、返事が来なかったら普通に持っていくとしよう。

もう暑いのにこれより温度が上がると思うと憂鬱です...

クーラーのドリンクみたいな便利アイテムがあったらなー

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