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読んで下さりありがとうございます。

「問題が発生した」

「急にどうなさいましたの?」

「えっ、何があったんです?」


 訓練に一区切りがついたところで、召集の合図をかけ二人と合流。

 

 これまでの所感だが、クランヌは模擬戦を通じて、状況に応じた魔法の使い分けや効果的な戦法を少しずつ理解し、自分のものとしている。

 

 分身といった芸当は持ち合わせていないため、シルムの方はほとんど面倒を見れていないが、時折する魔力供給時の会話含め言動から意気込みが伝わってきたので、俺の言った近いうちに~というのは予想より早く実現するやもしれない。 


 さて、あらましはこの程度にして本筋に入って行くとしよう。

 今にして思えば、割と重要な点だというのにちょっとした盲点になっていた。

 正直な話、ここまで気づかなかったのは抜けていると言う他無いが…ひとまず、初日のクランヌに対して説明をするところから始める。


「いや、まだクランヌには話していなかったけど、実は訓練中に仮眠する時間を設けていて、今からその時間にしようと思ってる」

「仮眠ですか。言われてみると、多少疲れがありますわね。けれど薄々感じていたのですが、結構長いことやっている割には、比較的疲労は軽い気がしますわ」

「やっぱりそうですよね。外だと脱力感出るの早いですけど、センお兄さんの作った空間内だと、いっぱい魔法使えますもん」

「ああ。二人の言う通り、時間の経過を遅くする以外にも要素がある」


 時間遅延は疲労の軽減とエネルギー消費を慢性化させている。

 懇切丁寧に説明が付いている訳もないので、これは体感に基づいて述べているが、二人も同じ感想なのでおそらく合っているだろう。

 休憩込みとは言えこの長丁場を、間食一回だけで乗り切れるしな。


 いつもは仮眠前に間食を摂取していたけど、今日はチャーがあるそうなので後回しだ。


「それで、センさんの言う問題には仮眠が関係しているのかしら?」

「そうそう。実はクランヌ用の寝袋を用意するの忘れてしまった。それ以前に寝具が変わると駄目とかある?」


 残念なことに、多く所持してても使う機会はそう無いだろうと思っていたので、寝袋は二つしか買ってない。

 昨日はどう進めるかとか、模擬戦のことばかりで他のことは一切頭になかった。

 

「いえ、それは大丈夫ですが…センさんたちの寝具も見当たりませんけれど?」

「あれ、まだクランヌに見せたこと無かったか。この空間拡張された革袋の中に入ってるんだよ。ほら」

「あなたそんな垂涎ものを…!?。ちなみにそれの出所は…なんて、冗談ですわ」


 一瞬、目の鋭さが半端では無かったような。

 試しているみたいで悪いが、クランヌがこんな反応を示したのだから、相当珍しいということだ。

 外にでたら革袋以上に大きいものは出さないようにしよう。


「とまあこの二つだけなんだ。それでシルムに頼みごとがあって、すまないが俺の使ってた寝袋で寝てくれないか。においとか嫌だったら別の方法を取るから、遠慮せずに断ってくれ」


 自分専用にするつもりだったので、コスト削減のため完全な『エンチャント』を施していない。

 埃や髪の毛などのゴミや汚れは残らないようにしてあるが、多少においは付いてしまっている。


「センお兄さんの匂いを不快に感じたこと無いので平気ですけど…ちょっとドキドキしますね、同じ寝袋で眠るのは」


 拒否反応が無くて色々助かったのはいいけど、そのドキドキは不要だよシルム。


「……俺は使ってくれとは言ったけど、一緒に寝ようとは言ってないよ」

「違いましたか?でも他に寝具は持ってないんですよね」

「そうだな。まあ俺は野宿は慣れてるし、安全が確保されてるなら地面でも何ら問題ない。むしろ仮眠を取らなくていいまである」


 仮眠の目的は魔法の行使によって生じる精神的な疲れの解消。

 俺は二人に比べて少ししか使ってないし、そもそも疲労が出るなんてよほどのことがある場合。

 最初の方はだるくなったりもしたが、練度を上げていたらいつの間にか無くなっていた。


 俺からしたら、仮眠をするのは魔力の自然回復が早いから、という理由が大きくなる。

 魔力があれば困らないが、今はそんな量を必要としてないしな。


「えー、持ち主のセンお兄さんそっちのけなんて気が引けます」

「いや流石に同衾は…クランヌからも何か言ってくれ」

「まあまあ、ここはセンさんのお言葉に甘えるとしましょう。あまり困らせては行けませんわよ」

「残念ですけど、そうですね。これからいくらでも機会ありますし」


 クランヌの助力で丸く収まったと思いきや、意味深な一言がボソリと聞こえた

 どうやら今回の一件はシルムに妙な影響を与えてしまったらしい。

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