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19 贈り物

読んで下さりありがとうございます

 シルムが手作りした間食を堪能して、しばらく休憩を取った後に訓練を再開。

 一つの魔法に偏りすぎないよう、ファイヤボールを一定回数使用したら次はフレイムスピア重点的に、その次はフレイムシールド・・・といった風に魔法を入れ替えつつ回した。

 真炎を見て感化されたシルムは、ファイヤボールを集中してやりたそうにしていたものの、悪いが説得して我慢してもらった。


 魔法は臨機応変に使い分けた方が効果的で、有利に立ち回れる。

 ファイヤボールが有効打になる敵もいれば、そうじゃない敵も存在する。

 耐性を持った相手と対峙することになれば、必要以上に魔力を浪費してしまうし、複数対の場合は苦戦を強いられるのは必至。

 

 シルムが魔物を討伐するようになったら、基本それに同行してフォローに徹するつもりではいるが、ここは元の世界よりはるかに、何が起こってもおかしくない世界。

 一人で切り抜けねばならない局面に立たされることもあるかもしれない。

 手数が多く備えて対応力を高めておくことが大事、流石に死者を蘇らせるのは不可能だから。


 そうして魔法の訓練を進めて、途中に仮眠する時間を設けつつ、光属性の方も忘れずに練度上げを行った。

 結果的に光属性はこれといった進展もなく、火属性の方は新たに一つ魔法を使用出来るようになった。


 シルムが新しく習得したのは「エスタブマイン」という設置型の初級魔法。

 対象が範囲内に入る又は、任意でその地点を起爆することが可能で、設置した後でも自由に切り替えられる。

 設置できるのは自身の付近に限られるので、先読みして罠を張り巡らせたり、相手を上手く誘導する必要のある、扱いの難しい魔法だ。

 その分初級魔法とは思えないほど、練度が低くても素の威力が高く消費魔力も相応。

 活用すれば十分な対価を期待できる、潜在性を秘めた魔法と言えるだろう。


「センお兄さん?これ返しますね」


 今日の総括、というよりも考察に耽っていたところに、窺うようにしてシルムから声が掛かり、差し出されたのはネックレス。

 プレゼントする話をして以降、シルムは訓練により精を出すようになり、手放すことに対しての名残惜しさは無くなったようだ。


「確かに受け取った。代わりにこれを」


 昨日購入しておいたブレスレットを取り出して、ネックレスと交換する形で渡す。

 付与したのは『伝達』『スキルブースト』『鑑定阻害』

 『鑑定妨害』は相手にその類いのスキルを使われても、見抜けないようにできる。

 『スキルブースト』はシルムが自主練するとき用だ。


「これって、センお兄さんが着けてるのと似てますね」

「よく見てるね。模様とかは少し違うけど、ペアで売られてたからだいたいは一緒かも」


 俺はあらかじめブレスレットを装備していたが、そんな目立つ訳でもないし、観察眼が良いということか。


「お揃いみたいでいいですね。このブレスレットにも何か仕掛けが?」

「そうそう、不便さを改善してくれる効果が付与してある。身に付けて魔力を通して」


 シルムが了承して腕にブレスレットを装備、少しするとほんの数秒だけブレスレットが光った。

 もう俺のやつとはリンクを済ませてあるので、これで使用可能に。


「今のでシルム専用として登録されたから。それで効果だけど・・・はい、これで変化が起きたはず」

「そうですね、明るくなったり暗くなったりを繰り返してますが・・・」

「なら成功してるな。そうやって明滅してる時に確認するって意識してみて」

「はぁ・・・!?これ、画期的ですね!」


 イマイチ分かっていない様子だったが、少し驚いた後にどういうことか理解したようだ。

 多少のことでは動じないと言ったシルムが目を見開いていたし、よっぽど衝撃的だったのだろう。


「もう分かってると思うけど、これは相手に居場所と言葉を伝えられる。使い方は、伝える内容を思い浮かべて、ほんのちょっとの魔力を通せばいい。新着の知らせがあるとブレスレットが明滅するからさっきみたいに確認してくれ」


 その他にも、一言だけしか添えられない点や、明滅してるのは他人には知られない点、相手が確認したか分かるので折り返しは不必要といったことを説明した。




「これがあれば、急に誰かが体調崩したりしてもすぐ断り入れられるよ」

「そこも考慮してくれてたんですね・・・でも、それは大丈夫ですよ。私頼りなのもどうかと考えていて、この訓練を機に子供たちにも色々やってもらうことにしたので」

「そうだったのか。よく説得させられたな」


 シルムに対しても言えることだが、あの年代だと自制が難しくて自分のことを優先しがちだから、面倒くさがりそうだ。


「あはは・・・皆聞き分けがいいと言いたいところですけど、お金が入るようになったら、手伝ってくれた分ご褒美を出すことにしまして、そしたら喜んで引き受けてくれました」


 現金な話ですよねと、苦笑混じりに言うシルム。

 なるほど、対価を用意することで動機付けを図ったのか。

 まあでも有効な方法ではあるな、特に孤児院子のたちに対しては。

 シルム曰く、生活は問題なく送れているが、あれこれ欲しいものは流石に購入出来ないそうなので、そう考えたらシルムの条件は嬉しいことだろう。


「それはともかく、このブレスレットありがとうございますっ。名前まで彫っていただいて・・・大切にしますね!」

「うん。そうしてもらえると俺としては何よりだよ」

「はいっ。四六時中身に付けときますね」

「いや、濡れたら錆びるしそこまでは・・・」


 シルムって時たま心配になる発言をするよな。

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