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17 閑話

読んで下さりありがとうございます

「ようやく無属性も上級の方に漕ぎ着けられたか」


 英雄としての役目を終え数ヶ月、国の追手から逃れるために各地を転々としながらも、魔法の行使を繰り返して練度を上昇させ、今日ようやく無属性上級魔法の「空間創造」に至った。

 誇張抜きにここまで辿り着くのはとても長く感じた・・・同じ上級の光属性と闇属性よりも。

 とはいえ使った回数を記憶してはいないので、正確とは言えないが。

 多量の魔力に物を言わせた無属性の連続魔法と、補正ありきの高い器用値のおかげで早く習得することが叶ったが、普通だったらどれくらいと考えると、慄然としてしまう。

 

 さて、長いと思ってしまったのは、いかんせん無属性の種類の少ないことが起因かもしれない。

 身体強化から始まり、探知魔法、魔力譲渡など使う場面に困らない有用なものばかりではあるが、その代わりなのか他属性より魔法の数が少ない。

 

 そのせいで同じ魔法を使いがちになってしまい、ローテーションを組もうにも知れているので、簡潔にまとめるとワンパターンになって作業感が否めない。

 友人の一人や二人でもいれば、遊んだり会話したりしながら平行してやれるので、退屈せずにいられるだろうが、面倒事に巻き込んでしまうのは忍びないのでそれは望めない。

 しかしながら無属性は見た目に変化は起きない上に、周りに対して害が及ばない点に関しては助かっている。

 

 まあこれからは「空間創造」がおかげで、いちいち砂漠や更地といった人気のない場所を探さなくても、自由に試し撃ちや練度上げにいそしめるというものだ。

 条件を気にする必要がないのはとても大きなアドバンテージ。

 行動の幅が広がるとその分、今後の流れの想像もいろいろと膨らむ。

 

(あー、もう来たのか・・・)


 どの属性、魔法を使うか思案に耽って少し浮かれていたところに水を差すのは一つの視線。

 人に注目されることが多かったからか視線には敏感な方で、今俺がいるところは森の中にある湖のほとり。

 この辺りは魔物がほとんどおらず、人里離れた僻地なのでいつも閑静な結構お気に入りのスポット。

 湖はそれなりに広く綺麗なので見ごたえはあるが、周りには森しかなく、ここまで来る物好きを確認したことがない。


 つまり視線の主はこの地に用はあらず、別目的という可能性が高い。

 それに加えてこの全身を観察されているような感覚は身に覚えがある、というよりしかない。

 間違いなく正体は、国からの命で追手として派遣された暗部であろう。

 実は暗部の姿を目撃したことがあり、連中は布で全身を覆いつくしているため、素性は一切窺えない。


 連中の厄介な点は、転移を用いて長距離移動してもいずれは追い付いてくることだ。

 しかも日に日にその早さが増してきている。

 何故、正確にこちらの居場所を把握できるのか全くもって謎。

 

 追跡系統のスキルは確かにあるけれど、『エンチャント』をフル活用して魔力遮断や変装、鑑定妨害や認識阻害などのスキル対策をこれでもかと施してあり、効果のほどはスキルを生業としている他者の協力を得て実証済み。

 当初はこれでバレないと高を括っていたため、普通に見つかったときは結構驚いたものだ。

 考えてもしょうがないので、今では何か抜け道があるのだろうと納得している。


(謎・・・と言えば)


 最近は奴らの行動目的がイマイチよく分からない。

 前は暗部たち視線を複数感じ、刺客が差し向けられることも多かったのだが、今となっては接触を試みる気は無いみたいだし、追って来ているのは一人だけになった。

 刺客と言ってもハニートラップのように人を使ったり、物で釣ってくることばかりなので、危害を加えて俺が数を減らしたわけではない。


 相手をする必要が無くなったのは喜ばしいけれど、ただただ見られるのもいい気はしないため、転移で場所を変えているが近頃はその場しのぎにしかなっていない。

 早い内にこの世界からお別れしないとな・・・。





「はぁ・・・」


 宿屋で魔法についての回想をしていたら苦い記憶まで思い出してしまった。

 思い返してみると、もしかしたら引き込むのが困難だと判断して監視に切り替えたから一人だけになったのかもしれない。

 だとしたら対象の俺がいなくなったことで、晴れてお役目から解放されるというのは、あちら側としても好都合だった可能性がある。

 仕事とはいえ特に利益の出ない監視をしても時間の無駄だしな。


 この想像が間違っていたと認識させられる出来事が起きるのは、そう遠くない未来の話。

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