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読んで下さりありがとうございます。

「競技祭って…詳しくは存じませんが、隣のセリバーツェルで開かれる、あの?」

「そうです」


 見覚えのある言葉あったから口にしてみたけど合っていたか。

 目にしたのはエストラリカに関する記述を読み進めてたとき。

 隣国であるセリバーツェルについて簡単に触れていて、そこに盛り込まれていた。


 気になる単語だったため印象に残ってて、限られた短い文中に採用されてるってことは目玉の行事なんだろう。


「競技祭は毎年数日の期間、諸国から参集なさる選ばれた方たちが各分野で技を競われる、方々からも見物にいらっしゃる方は多く、非常に盛況で規模の大きな行事ですわ」

「諸国というと、近隣以外からも?」

「ええ、少なくとも主要な国は例年参加なさってますわね」


 アベルさんから持ち掛けがあった時点で普通じゃないとは思ったが、各地から足を運んで来るのか…。

 これは想定よりも大層な催しかも。


「競技祭のこと聞いたことありますっ。お料理とかお絵描きとか、色んな部門で鮮やかに作られる過程を見られて、特色が出ている物もあって見応えがあるとか!」

「それは確かに、盛況なのも分かるな」


 腕利きたちが作品を仕上げて行く様は見ているだけでも面白いだろうし、人によっては参考になるから需要が高そう。

 複数で構成されていることは把握した。

 まあでも俺に求められてるのは…


「それで俺には、戦闘の部門に出てほしい、ということですか?」


 問いかけにアベルさんは頷く。

 隣に目を向けるとプリーネさんから小さい会釈。

 俺に頼むことにしたのは手合わせの手応えも踏まえての筈だから、買ってくれている。


「ロクスさん、出たことありそうですね」


 話を聞いて連想してか、シルムが隣のロクスに話しかける。

 うん、強者が集結するとなれば黙っていなさそうだ。

 

「いやねぇよ、試合形式は温くて窮屈だからな」


 意外…でもないか。

 セリバーツェルで平時でも開かれてる武闘場、そんな戦える環境があるのに関心がなさそうだし。

 相手に実力があろうと、制限が多い中で戦うのは気が乗らないのか。


「あー、気を使うこと多そうですもんね…だからって、センお兄さん相手だったら好き勝手していいわけじゃないですよ?」

「わあってるよ」


 いい加減な感じに答えてるが、実際にロクスは配慮してる…よく加減を誤ってるけど、それも徐々に減って来てる。   


「まー…どのみち、有力者の推薦が必要だしな」

「…有力者の推薦?」


 あくびを噛み殺しながらさらっと重要な情報がロクスから飛び出る。

 クランヌの方を見ると無言のまま首肯。

 さっき話していた選ばれたってこのことか…? てっきり予選でもして決めるのかと。

 

 その選ばれた者たち同士が各国から年に一回集まって競う…賞金や名誉のためみたいな、単純な話じゃなくなってきたような…。


「詳細の前に、質問しても?」

「勿論です」

「出場するにしても、素性は明かせないのですが」

「推薦する側が身元保証を請け負いますので、伏せて下さって問題ありませんよ。他国の条件と比べてこちらは緩い方ですから」


 何者か問わず裁量は当事者に委ねる、人と物の行き交いが盛んなエストラリカだからこそか。

 代わりに人選に問題があったときは、相応の処罰が待っているんだろう。

 それより、本来は条件に沿っている必要があるんだな…ますますこの競技祭……。


 正体を隠すのが許されるなら、ここに来て間もなくても大丈夫でもあるな。

 質問したのは疑問を解消したかっただけ、アベルさんは問題ないか確認を済ませた上で持ち掛けている。

 他に候補者を立てている筈だけど、そっちも話を付ける算段がある、もしくはもう済ませてるか。


 出場すること自体には何ら支障はない。


「分かりました…では、考えを聞かせて下さい」

「ええ…まず、センさんは察しているかと思いますが、競技祭は政治的な意図が絡んでいます」

「そうじゃないかとは」


 各国の権力者が関わってるとなれば流石にな…交流会ってわけでもなさそうだし。

 

「ご存知とは思いますが基本、他国とは交渉で折り合いをつけます。ですが内容によっては、双方譲らず膠着する場合があります」

「そこに関わって来るのが競技祭」

「はい、お察しの通りかと。結果が振るわなかった方に譲歩して頂くことになります」


 詰まるところ競技祭を催す目的は…戦争の代わり。

 元の世界でも要求を通すために戦争、類するものが度々起こされていた。

 停戦を結んでいるからこの方式を採用しているんだろう。


「ただ今回は国の為ではありません。むしろ辞退しようか迷ったくらいです、推薦側も同行が必須なので」


 身内が事件に巻き込まれたばかり、全貌が不明となれば行事を控えようとするのは自然。

 アベルさんたちだって安全とは限らない。


「その上で参加の結論を出したんですね」

「守勢に回ってしまうのは駄目だと判断しまして。そこで当事者のセンさんに出場して頂き、謎の人物を推薦した旨を故意に流そうかと」


 第三者の何者かによってポルドが失敗に終わり、黒服たちは壊滅したことを敵は掴んでいる。

 あからさまな正体不明を投じ、触発する狙い。  


「それから、功労者は先ほど話した権限の一部の行使が可能でして」

「権限…譲歩してもらうという?」 

「ええ、それにより他所でも大手を振って先の一件の調査が行えます」

「なるほど」


 確たる証拠もなしに他国へ調査に動いては内外から反発、問題になりかねない。

 だから獲得した権利を用い、活動を正当化してしまうわけか。

 

「センさんも私と同じ考えをお持ちでは? 甘えていることを承知で改めて…競技祭への参加、いかかでしょう?」


 こちらを見据えるアベルさんの双眸。

 聞き入れてくれる期待をしていることを隠さないんだな…。

 アベルさんの指摘は当たってる。


 備えはしているものの結局、後手に回ってしまうのは芳しくないと感じていた。

 それに…方が付くまで間、標的にされたクランヌは懸念を抱えて過ごすのを余儀なくされてしまう。

 仕事で移動が多いから尚更だ。 


 親しい間柄になったからには、伸び伸びと過ごしてほしい。

 父親であるアベルさんも同様だろう。 


「仰る通り、俺も動く必要があると思ってました」

「ということは…」 

「お話、引き受けます」

「ありがとうございます…!」

「センさん、よろしくお願いするわね」


 夫妻から頭を下げられ、会釈で応じる。

 

「これも私たちの平穏な生活のためですねっ」


 片割れでありクランヌを慕うシルムが、ぐっと自分のことのように意気込みを見せて、


「結局、引き受けてしまわれるのですね…私も心を決めましょう」   

    

 対照的に呆れを滲ませるクランヌは長めに目を瞑り…何かを覚悟した眼。

 …どうしてだろう、落ち着かない感覚を覚える。


「一つ言っておく」


 端の方で静観していたスティーの声が響く。


「不届きものに迫るのは同意。でも今後、センさまを利用するなら容赦しない」

「重々承知していますよ。そのような真似をしたら色々と失ってしまいますからね」

「そう」


 間を置かない返答にそれ以上言及せず口を閉ざす。

 色々と失う…俺も身の振り方には気を付けないと。


「時に、シルムさん」

「えっ、私ですか?」


 急に呼ばれきょとんとするシルム。 


「はい、シルムさんは料理に精通されていると見受けました。またの機会になりますが、料理部門に興味ありませんか?」


 何の用だろうと思ったら、シルムも競技祭へ勧誘か。

 分析の内容に見込みがあると判断したっぽい。

 つまりシルムの言っていることが適当である証。


 どう答えるんだ…?

 シルムは特に悩むことなくぺこりと頭を下げる。


「ごめんなさい。私は食べてもらいたい人のために料理したいので」


 …特定の相手に、って拘りがあったんだな。  

 その一員に含まれ、頂けるというのは名誉なことだ。

 

「こちらこそ失敬を…これは確かに、大変そうだ」

「そうでしょう?」


 詫びを入れ、アベルさんは面白さと困惑が混ざった様子で言い、プリーネさんが愉快な相槌…何か引っかかる。


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