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13 訓練2

お待たせしました。読んで下さりありがとうございます。

「次のステップは魔法を使っていこう。でもその前に…あった。これを身につけてくれ」


 革袋の中から目的のものを取り出して、シルムの目の前に差し出す

 キラキラ輝く純金と、それ以上の煌めきを持つ大粒ダイヤモンドのネックレス。


「わぁっ…とっても綺麗ですっ!でも、どうしてこれを?」


 孤児院の年長者でしっかりものだけど、目を光らせる様をみると年相応の女の子という感じがする。

 

「それには能力が付いてて、装備するだけで恩恵があるんだ」


 華美で絢爛な装飾品に付与されているのは「スキルブースト」「魔力消費軽減」「不変」の3つ。

 名前からだいたい察せられるが、「スキルブースト」は一部を除いて能力を1.2倍強化。

 「魔力消費軽減」は魔法行使による魔力の消費を25%カット、1.2倍されて30%。

 「不変」は物の劣化や破損を防止する為、衝撃に弱いダイヤモンドは心配いらず、ということを説明。


「見た目だけじゃなくて実用性もあるんですね。恐れ多いですが…」


 差し出したネックレスを真剣な面持ちで受け取り、ガラス細工を扱うように、ゆっくり丁寧に自分の首に掛けるシルム。

 そんな神経質にならなくてもいいが、雑にするより物を大事にする方が百倍マシではある。

 

「何だか…重みがありますね。金自体の重みもそうですが、こんな高価そうな物を一介の人間が身に付けているのが…」

「そんな卑下しなくても、すごく似合ってるから大丈夫」

「本当ですか?お世辞でも嬉しいです」


 お世辞じゃなく、本心からの言葉なんだけどな…。

 ドレスみたいに派手ではないので、服には合わないが、男に言い寄られることもあるくらい容姿。

 

 その可憐さと装飾品による美しくさとの両立、そして対比が印象的で魅力的でもあるので目を引かれる。

 上手いこと釣り合いが取れていて、お互いを高めあっているような感じ…といろいろ前向きな感想湧いてくるくらい似合っている。

 まあ口に出して語ると口説いているみたいだから、このまま次に行くとする。


「着けてもらったことだし、魔法やっていこうか。3属性同時進行にして…魔法は偶に利用するくらいなんだよね?」

「そうですね、数日おきに少しだけです」


 うーん、だとすると無理があるか…いや、シルムなら可能性はゼロじゃない。


「今からやることを見てて欲しい…火の玉」


 短い詠唱から繰り出したのは、手のひらの上に拳大の火の玉、火属性魔法初級のファイヤボール。

 

「これと同じことをやってみてくれ」


 シルムの目の前で使ってみせたのは、魔法を発動する上で大切な要素であるイメージを鮮明にする為。

 

「不発に終わりそうですけど…火の玉」


 手のひらを上にして身体の前に出し、自信なさげに詠唱するシルム。

 発言とは反対に魔法しっかりと発動し、発動しないと踏んでいたシルムは、表れたファイヤボールに身体を仰け反らせ、すぐ我に返り顔がほんのり紅潮して恥ずかしそうにしている。


「成功するとは思ってなくて、自身がした事なのにビックリしちゃいました…」

「小さな火しか出した事ないなら、そう思って無理はないよ。それもう少し大きく出来そう?」

「…ちょっとやってみますね」


 目を瞑って集中すると徐々に大きさを増して、直径10センチ程になるとピタッと拡大は停止する。

 最低限しか魔法を使用してないのに、ここまで大きく出来るのは上々。

 

「ここまでが限界ですね」

「そこまで拡げられれば十分過ぎるよ。やっぱシルムは器用値高いから伸びが良いな」

「器用値とはなんでしょう?」

「ああ、器用値って言うのはーーー


 器用値は習熟速度、コツの掴みやすさなどに影響のある重要な値で、魔法上達に大事な要素の練度にも効果がある。

 筋力や魔力量などと比べ唯一伸びにくく、明確な伸ばし方は判明しておらず、推測の域を出ない。


 魔法は魔力、イメージ、詠唱がしっかり揃っていても行使できないことがある。

 その時は特に難しい理由はなく、単純に具現化させる力の不足…練度が足りていない。

 

 魔法を繰り返して行くことにより練度は上がり、器用値があるほど上昇率は高い。

 そして属性ごとに練度があるので、一つを極めたとしても他は最初から進めなければならない。


 難解な魔法式などを理解しなくてよくシンプルだが、故にその道は遠い。


「器用値の話ついでに練度についても説明したけど、ちゃんと伝わったかな?」

「つまりその器用値のおかげで、まともに魔法を使っていない私でも、ファイヤボールを出すことが出来たってことですね」

「理解が早くて助かる。スキルがあれば別だけど、魔法に近道は無いから、どんどん使っていこう」





「そろそろ魔力切れしそうです…」


 数分後、ずっとファイヤボールを使っていたので流石に限界が来た。

 ただ使うだけでは勿体ないので、簡易な作りの的を狙うこともした。

 

「じゃあ一回中止してくれ。あー…これでいいか。シルム、この杖を握って」

 

 ちょうどいい時に、ネヴィマプリスを倒した際に手に入れた杖があるので、それを橋渡しにして無属性魔法の「魔力譲渡」を行う。

 膨大な魔力量を利用して、シルムの魔力を何度も満たし、一気に向上を図る。

 魔力を送っている最中にシルムを見ると、何か物言いたげな顔つきをしている。


「どうかした?」

「…これって、この杖必要なのかなーって思いまして」

「いや、無くても魔力譲渡は行えるけど、その場合は触れないと駄目なんだよね」

「センさんのこと信頼してますから触られても平気ですよ。というか、距離感あるみたいで、何か、嫌です」


 俺のことを信頼してくれるのは素直に嬉しいし、シルムが問題ないのならその通りにするか。

 杖を革袋の中に収納して、どうしようか迷ったが、最終的には以前した握手をする形で落ち着いた。

 朗らかに、うんうんと頷いて満足そうで何より。

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