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123 改変

読んで下さりありがとうございます。

日が下がり夕方に差し掛かる頃。

 クランヌから譲渡された屋敷の戸口、その手前を右に曲がり俺は外周に目を向ける。

 敷地が大きい此処の庭は、花壇の部分を除いても空き場所に余裕がある。


 体を動かす、ゆったりと過ごす、宴会を行う…用途は複数考えられるけど、どう活用するか予定を立てに来たんじゃなくて、規模を確認しにこっちへ足を向けた。

 目測で幅、それから奥行きを見て……うん、大体の長さは分かった。  


「おーい」


 そこへ入口の方から気の抜けた呼び声…最近耳にするようになった口調。

 向くと、手を挙げた状態で近い付いてくるロクスと、顔を背けているスティーの姿。


「勝手に入っちまったけどいいよな? この屋敷センのもんなんだろ?」

「そうだけど、何で知って…ああ、スティーか」


 案内するってクランヌの伝達はこの二人には行っておらず、家に関してまだ説明してないのに。

 そう疑問を抱いたが、スティーには俺の場所や状況を把握する術があるから納得。


「そういうこった」

「センさまは新居にいるって言ってたから…あの小娘は?」

「…シルムなら子供たちの様子を見に行った。後からこっちに来る」

「そう。妨げられなくて残念」

「…くれぐれも、手は出さないでくれよ?」

「センさまの言い付けは守る。あっちが一線を越えない限り」


 スティーなら一度言っておけば良さそうだけど念押ししておく。

 妨げといっても作業の邪魔はしてなくて、シルムが俺にくっつくのが気に食わなく、近付くのを阻止することに努めてる。

 

 俺が口を利けば止められる。でもそれは実質命令になるのでしたくない。

 それに、スティーは滞在時間が限られ元から不自由な状態。

 シルムも分かってるのか俺に対応を求めて来ない。


 でもシルムに意地悪してるから、子供たちに少なからず反感を持たれてたり。

 当たりが強いまでは行ってなかったけど…今後は基本こっちで過ごすからそれはまあ。

 

 逆にロクスの方は裏表がなくゆるい応対なので、警戒を与えずに馴染んでた。

 さすが張り詰めた裏社会で飄々と渡り歩いているだけある。

 

「にしても、随分と立派な家を選んだんだな」

「いや、この屋敷はクランヌから譲り受けた」

「譲り受けたぁ? …ま、如何にもなあのお嬢様ならあり得るか」


 渡された事実に素っ頓狂な声を発するが、クランヌに裁量がある点に関しては当然とばかりに納得してる。

 ポルドとの遣り取りを見てたのかどうか、どんな立場か勘付いてそう。


「んで? こんな何もないとこで何してたんだ?」

「広さの確認をしに来たんだ。外敵に備えて仕掛けを施すために」


 感知、妨害、迎撃、撹乱ーー

 屋敷の外側から内側にかけて、自動で作用する罠を複数用意するための目測。 

 

 襲撃の可能性が出て来たからには対策は必要。

 家を得たときに取り掛かれるよう、前もって構想は練ってある。

 だから後は実行するだけ…というのが当初の予定だったが。


 想定よりも広大だったので内容を合わせたものに変更する。

 思い通りにはならなかったけど、広いぶん仕掛けを増やせるので守りを固められる。

 

「センさまなら対象を限定できる。巻き込まれる心配はない」

「ほー、そりゃ便利だな」


 追手を足止めするのに何度か罠も用いたし、スティーなら知ってるか。

 無関係の人が通っても平気なよう、条件を満たすと作動する仕様。


 当時の条件は、標的が俺であること。

 …それに倣うと事故が起きそうだから条件は別のものに。

 四人とも創造した空間の中に入ったことがある。それを利用して省くとしよう。


「今思い返すと捉えられるのはよかった。大半は避けて来たのが悔やまれる」

「その情報はいらん。てか追手が進んで引っかかりに行くのはやばいだろ」


 目を瞑って惜しむスティーへ、ロクスがごもっともな意見を述べる。

 動じることなく冷静に告げてるあたり、ずれた調子に順応してるな。


「そうだ、手を加えるってんなら、ここで手合わせ出来るようにはならねーのか?」

「無理」

「即答かよ!」

「譲り受けたといっても所有者自体はクランヌだからな、迷惑は掛けられない。続けるのが不味いってなったとき、ロクスが中断できるなら考えるよ」


 攻撃に破壊力のあるロクス。ポルドの屋敷の有様が頭を過る。

 戦闘で昂り勢い余って騒ぎを起こし、クランヌの立場に支障が出ては。

 悪目立ちするのを避けるため外観はそのままに仕掛けを巡らせる。


「あー、無理だな」

「センさまを煩わせないで」

「凄むなって、興味でちょっと言っただけだ。戦えるなら移動くらい喜んでするさ」


 指から糸をチラつかせるスティーを宥めつつ弁明。

 近場で済ませられるに越したことはないのはそう。

 ロクスの場合は早く戦いたいってのが本音だと思う。

 

「部屋ならいっぱいあるから、自室にして好きにしてくれていいけど」

「つってもなあ…別に必要じゃねえし、どのみち滞在できねーだろ」

「まあそうだよな…」


 どちらも定住せず流浪の身なため、宿の一室で事足りる最低限の所持品。

 物欲もない(スティーは甘味が好みだけど知れてる)し武器は自前で支出も少ない。

 ロクスは元から裏の仕事で稼いでいて、黒衣らの拠点にあった資金も加わり潤沢。

 

 ポルドと俺らが対峙してた頃、丁度こちら側に来たというスティーも余裕で賄える。

 ちなみに俺と同様に出現先は蒼然の森。

 あの場所が何か関係してるのか? そう思ったら単に俺の軌跡を辿ったからみたい。


 住む場所を移す理由は特になく、するにしてもロクスが言及した点…執着への対応が課題。

 スティーは俺の付近に居続けると衝動が強まって行く。

 同じ場所で生活するには、それをどうにかしないといけない。


「空間のやつを利用する手があるけど…動ける範囲が限られるし」


 訓練とロクスとの戦闘で使ってる空間創造。

 俺が中でスティーは外にいる位置関係の場合、距離自体は近くても、執着の方では遠く離れてる扱いになってるそう。

 声の主が言うには空間は俺の領域で、そこから締め出されてる状態だから、らしい。


 だから屋敷に境を作れば滞在は一応可能…不自由なのは言うまでもないけど。


「センさまに制限されるのは歓迎だけど、動き回れた方が役に立てるから今のままで。でもセンさまがそんな気遣ってくれるなんて……ところで」 


 スティーは身体をプルプルとさせ兆候を見せるが抑え込み、何やら話があるよう。


「小娘はセンさまに近い部屋を選んだ?」

「選んだよ」

「…従者である私を差し置いて許せない、撤去に向かう」

「待った待った色々と」


 部屋に乗り込もうとするのを止める。

 従者じゃないし荒らすのは駄目だし、部屋を選ぶ上でこうなることをシルムたちは予想済み。


「もう一部屋近いのがあるから、それで納得してくれ」

「…それなら許す」


 用意してあった答えを告げると実行を思い止まる。

 少し逡巡があったけど妥協したみたいだ。


「必要になったら使わせてもらうわ、そろそろ離れた方がいいんじゃねえか?」

「ん、供給は十分。センさま、またね」

「じゃあな」


 限界が近かったらしく足早に去るスティーにのんびりとロクスが続く。

 …執着の能力、どうにか出来ないか考てみたけど…力になれそうにないな。

 

 執着は能力の使用に対する干渉は受け付けない。

 俺の阻害が無視されているので事実。

 直接働きかけても徒労に終わるだろう。


 スティー本人は現状に満足そう。

 確かに組織に命令されるがままだったのと比べると、自分で動けるように、動くようになったのは大きな変化。

 でも望ましいのは今よりゆったりと過ごせる状態。


 信頼とかはおいといて、あちらが協力的な姿勢なので配慮する…けど現状維持か。

 …屋敷の作業に取り掛かろう。


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