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121 新居

読んで下さりありがとうございます。

俺は目線を上の方に向けながら難しい表情を形作り、隣にいるクランヌに尋ねる。


「えっと…家が見つかったから案内するって言ってたけど…もしかしてこれ?」

「こちらがご要望の住まいです。センさんの条件に適ってると思いますわ」

 

 顧客が望んだものを用意できたばかりの鷹揚さで頷く。

 こういったとき冗談を言わないとはと思ってるが、つい聞いてしまった。

 確かに、後々のことを考慮して広めがいい、ってお願いしたけどさ……


「とっても立派ですね! お掃除のしがいがありそうっ」


 もう片側にいるシルムは俺と違って目を輝かせ素直に称賛する。

 そう、先にある家屋は立派だ…想定してたのより数回りも。


 塀に門、本格的に園芸が可能な伸びた庭、続くのは窓が多数ある重厚な二階建てーー平たく言えば大きな屋敷。 

 今俺らがいるのは一般街、貴族街ではない。

 散策でこっちの方にも邸宅があるのは知ってて、住宅地から離れて行くから案内の道中引っ掛かってたんだが…本当にそうだとは。



 宿を出て孤児院に寄寓して数日。

 これといった事件も不穏な気配もなく日常を送っていた。


 家事手伝いに子供たちと遊び、訓練にギルド、クランヌとロクスとの取引の履行、シルムとスティーの競り合いーー

 繰り返しの中でどんどん移り変わって行ってる。


 訓練ではやっぱり気合の入っているシルムとクランヌ。

 魔法の反復で着々と魔力と練度を上げ、模擬戦では判断や挙動に鋭さが出てきた。

 

 特にシルムは成長促進により加速。

 魔法展開や身体強化の運動、ダガー捌きなどの上達ぶりが如実に現れている。

 現にギルドでは一人前とされるDランクに昇格、ロクスがシルムを見て「へえ」と興味を示してもいた。


 祝いの場を設けた際は表情を崩して大層喜んでいた。

 その一方、名声が上がり注目が増えたことには無関心。


 クランヌの方は習得を目指している上級魔法、エシュトラールセの完成はまだ先だが近付いている。

 浄化水はすぐ在庫切れになる好調ぶりで増産決定、販売は宣伝を兼ね、転移請負の拡大と併せ商会の売上も好調らしい。


 ロクスとの手合わせしたのは2回。

 目撃されたとき弁明が面倒なので、場所は人気のない蒼然の森。

 強固にした空間を構築して実施。


 素手対銃、持ち前の頑丈さは魔弾で対応できるのでロクスにとって相性は最悪。

 ただ、距離を取ってくる相手に慣れているようで、惑わす動作を自然に交えながら詰めてくる。

 それに能力で上乗せされる力がだんだん馴染み、反映されるので前後に驚かされる。


 まあ変化に一番驚いて興奮してるのは本人なんだけど。

 はしゃいでる姿はちょっと子供ぽかったり。

 

 宿泊まりで、お金は自身の稼ぎと黒衣たちのを資金で潤沢だとか。

 裏の仕事かつ、嗜好にお金を掛ける面々じゃないと納得。


 スティーは……ちょこちょこ顔を出しては俺とシルムの間に入り接近の妨害。 

 滞在できる時間に限界が来た後は、抑圧された反動でシルムが逆に密着。

 スティーもそれに比例して…そんな悪循環。

 

 歯止めが無くなったら今すぐにでも苛烈な争いに発展しそうな調子。

 とまあ、誘拐事件による影響は落ち着きつつある中、クランヌから連絡があった。

 家の規模には驚かされたが、理由を聞かないことには始まらない。


「どうしてこの屋敷を?」


 外壁は綺麗だし持ち主が経年劣化で手放したとかではなさそう。

 最初から目を付けていたというのも薄そうだし。


「実はこちら…ポルド伯が所有されていた物なのです」


 浮かべていた微笑を引き締め、意外な事実を明かす。


「されていた?」 

「ええ、一先ずですが沙汰が下されまして。爵位の剥奪に財産の没収…その一部が功労者として私に譲渡されたのです」

「この屋敷は一部に含まれてたってことか」


 状態の良さとか時機が今になった事情も分かった。


「でも、詳しいことは知らないけど、随分と処罰が重くないか? 他に証拠が見つかったのか?」

「いえ…ですがあの契約書は強制力を伴っていて、本来は国を通す必要がある書類です。それを個人で使用するだけでも重罪になる上、契約を交わした相手が極めて悪質だと判断されたのですわ。処遇はまだ決まっておりませんが…復帰はもう叶わないでしょう」


 俺とクランヌも正式な契約を交わしてるが、行動を制限される作用はない。

 無法地帯といえる裏社会では、特別な契約書が裏切りを抑止、法の代わりを務めているって感じか。

 クランヌは名言を避けてるけど、復帰が叶わないというのは…そういうことだろうな。


「同情の余地なしです。悪いことをしたんですからね」


 無表情のシルムがきっぱりと断ずる。

 正論だし同意見。奴は力を持っていて、自分でその使い道を決めたんだ。

 全て自信が招いた結果でしかない。


 クランヌも重々しく頷いて賛同すると、


「解決はセンさんのお陰ですし、必要ではありませんのでこちらはお譲りします。家を用意する代わりに家具の手配と清掃を施させて頂きましたので」


 既に中の方も用意されてるのか…入居する前提だな。

 でも拠点は必要だし、広くても特に困らないし。

 今回に関して受け取るのは理に適っていると思える。

 

「ありがたく使わせて貰うよ」

「では、中を案内致しますわ」

 

 クランヌ満足そうに微笑み俺たちを先へと促す。


メリークリスマス!


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