11 元凶
読んでくださりありがとうございます
『エンチャント』は魔力をコストとして、対象に魔法や能力などを3つまで付与することができる。
魔法は全般、能力等は限られたものの中から付与が可能。
所持品のいくつかは『エンチャント』の影響を受けており、革袋やモノクル、転移のアクセサリーもその一部。
今回の戦闘を例にすると、サブマシンガンは「ウォーターバースト」「増大」「維持」の3つ。
ショットガンは「スパーク」「伝播」「麻痺」の3つ。
「ウォーターバースト」は水魔法で、水球を破裂させての攻撃、威力は度外視なのでダメージは皆無だが、「増大」の効果で多くの水が降り注ぎ、「維持」によって水の状態をキープするため、地面に吸われず魔物には纏わりつく。
そこに水と相性のいい雷魔法の「スパーク」と、拍車を掛ける「伝播」によって瞬く間に水から伝導し、「麻痺」が行き渡り行動不能に陥る。
簡単に説明をすると、事の運びはこのような感じ。
さて、魔物の壁が瓦解したことによって塞いでいたものは取り除かれた。
先にある一つの反応、それに向かい進んでいき、最深部に居座っていたのはーーー
(ほー、そういうことね)
その姿を目にしてようやく辻褄が合い、懸念だったものが払拭される。
どんよりとした暗い空気を漂わせ、大柄で古ぼけた灰色のローブを身に纏い、手には大きな宝石を埋め込んだ上質な杖を構え、全身むき出しになっている骨と、人魂のように青く揺らめく目。
ネヴィマスカルという名前でランクはA、『支配強化』のスキル持ちである。
スキルの効果は名前通り、格下の魔物を自分の支配下に置いて強化を施す。
水面下で勢力を伸ばして力を付け、機が熟すと手下を率いて表に現れ跳梁跋扈するとか。
ようは魔物たちの異変を起こした元凶がネヴィマスカルで、放置してたら後々面倒になる。
「後顧の憂いは断っておくべし、だな」
あちらさんも配下を無力化されて、目の炎から激情が迸り、やる気のようだ。
Aランク相手取ることになると、魔弾も出し惜しみ出来ないかもな・・・。
そう考えながらも、ネヴィマスカルから魔力の高まりを感じる。
書物にもあったが、見た目通り魔法攻撃が強力らしいし、注意して立ち回るとするかーーー
戦闘の末、これと言って述べることは無かった。
魔法の詠唱速度や威力に目を見張るものがあったが、すでにネヴィマスカルは目の灯火を消失させ、バラバラになって事切れている。
前提条件が悪かったとしか言いようがない。
この魔物は人間で言うところの魔法士であり、前衛が機能しなくなった以上発揮できる実力は限られている。
移動しながらも詠唱できたようだが、止まっている方が当然早く、牽制で銃弾を放てば、回避のためそれだけ遅延が発生する。
情報収集目的で、魔法を何度かわざと使ってもらった。
ランクAと格付けされているだけあって、魔法は強力に違いなかったが、俺が知っているものばかりだったので、対処は難しくなかった。
これらを含め、魔法耐性は高いらしいが銃弾には関係せず、壁も無い以上苦を強いられることなく済んだ。
(意図せずして素材が大量だ・・・)
ネヴィマスカルが死んだことで、魔物たちの『支配強化』は切れ、ハンドガンで倒せるようになっており、処理したら回収量は尋常じゃないことに。
特に収穫だったのが杖で、魔法を増幅させる効果付きだ。
目的は十二分に果たせたし、帰還するとしよう。
自室に帰って来て、外を見ると日はだいぶ傾いてもうすぐ夕方。
まだ時間は残っているし、魔力を回復しつつ回収したものの整理をするとしよう。
魔力の回復方法はさまざまあり、その内の一つが自然回復。
睡眠中が一番速く、遅いのは動き回っている時、中間は休憩しているいる時に分類される。
そんな訳で革袋の中に手を突っ込んでガサゴサと漁って、自分の分かりやすいように選別していく。
・・・あ、そういえば杖をちゃんと鑑定していないな。
増幅の効果があると言ったのは、ネヴィマスカルが魔法を使った際に、エフェクトが生じていたのでそれを見てのこと。
武具系統はしっかり見ておいた方が発見があったりするので要確認。
(杖じゃなくて宝石自体に効果があるのか)
モノクル越しに見てみると、宝石に増幅の効果が付いていて、杖は木で作られており魔力を通しやすい良質な素材。
宝石は単に埋め込まれているだけなので、取り外して他のものに加工、杖は売却するか同じように加工するのもありだな。
整理整頓に時間を費やし、それ以降は変わったこともなく、昨日と同じように粛々と過ごして一日を終えた




