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117 代理

読んで下さりありがとうございます。

「答えはそれしかねえよな?」


 思惑を言い当てると笑みを深めるロクスに、つい息を吐きそうになる。

 再戦の申し込み…想定はしていたけど、まさかという思いだった…ロクスが醸し出すまでは。

 

 スティーの介入により場の空気が流れ、俺との決着はつかず終い。

 中止に同調はしたけどロクスからすればお預けを食らったも同然。

 却って火を付けたまである。


 闘志を燃やしているロクスに比べ、拘りのないこちらは対照的。

 断ろうにも以前より説得するのには骨が折れそう。

 飢えた視線を受けながらどう対処したものかと考えていると、二つの影が間に割り込む。


「またセンお兄さんに突っ掛かる気ですか?」

「やっぱり消しておくべき」

「因縁つけちまったのは認めるが同意を得て戦ったからな? そっちは口封じって言ってたのにもう隠す気ねえな」


 表情の抜け落ちたシルムとスティーに迫られーースティーの方は素だけど威を放っているーーながらもロクスが怯まずに反論する。

 最初ロクスと会ったとき、手合わせするのが当然って調子だったのは怪しかったけど。

 

 まあ自分が先走ってると気付いてからは引き下がろうとしてたし、ポルドが差し向けて来た黒衣らとは違い分別がある。

 短絡そうな印象の割に考えてるのは、油断ならなくもある…闘争が主軸なのは確定でいいと思うが。


「ていうか、息が合ってて仲良いなあ、おい」


 次いで立ちはだかる二人に向けて茶化すように言う。 


「あはは、またまた…冗談キツイですよ?」

「本人も討たれるのを望んでるらしい」


 シルムはにこりと表情を形作っているが全く笑ってはおらず、スティーは両手を広げ臨戦態勢の構えを取る。


「お二人とも、あからさまですわね…ですけどロクスさん、今は対価になるような情報を持ち合わせてらっしゃらないのでは?」


 調整役として頼りになっているクランヌが肝心の部分を指摘。

 本人が裏の事情には疎いと話していたので、そこからの判断か。

 ロクスが流浪の立場を続けられているのは、詮索せず深入りしないからこそだろう。


 前に戦うことにしたのは証拠を押さえる為であって、現状は応じてもあちらの欲を満たすだけ。

 

(でも俺を場に引き出す、有益な情報を隠し持っている可能性も…)


 詳しいことは知らない振りをしつつ、再戦を実現するために。

 ロクスがニヤリとする展開を思い浮かべるが、当人は尋ねられて「あー…」と視線を彷徨わせている……そんなことはないらしい。

 流れは決した。だがロクスは表情を好戦的なものに戻し、 


「んなことどうでもーーはよくねえよな。うん」


 お構いなく押し切ろうとするが、シルムとスティーから無言の圧を受けて撤回。

 今度こそ大人しく諦めるかと思いきや、はっとして何か閃いた様子。


「なら俺が力を貸すってのはどうだ?」 

「それは…もしものとき加勢するってことか」

「ああ。ポルドのおっさんを食い止めたとはいえ、まだ裏には敵が潜んでんだろ。このまま相手が大人しく引き下がる…なんて呑気な考えはしてねえよな?」

「…流石にね」


 ポルドを尋問したときの反応…明言はしなかったがクランヌを狙っているのは別の人間。

 そのクランヌは、貴族で伯の位であるポルドと顔見知りで奴から敬意を払われていた。

 つまり彼女の立場は…。


 手を出そうと思ったら用意周到さを求められる相手。 

 敵には未知の力があるとはいえ、今回の強引な呼び寄せに楔を打つという発言ーー行使するには手順を踏まないといけないみたいだし。

 逆に言えば、潜んでるのは実行に移せるだけの地盤がある有力者……。

 

「アンタ一人ならどうにかしちまいそうだが…なあ?」


 シルム、クランヌへと順に視線を移して自信に満ちた問い…意地が悪いな。


「それは…っ!」

「……」


 口を開くが悔しそうに歯噛みするシルム、黙ったまま顔をこわばらせるクランヌ。

 騒動に俺を巻き込んでしまったのと、戦闘面では力が及ばない理解して負い目を感じているんだろう。

 俺としては凄惨な光景を見せずに済んでよかったし、あくまで悪いのは悪事を働く奴ら…言っても気にしちゃうよな。

 

 敵の規模は不明だが幅を利かせられるような存在…手は多い方がいいのはその通り。

 どのみちこの様子だと、躱し続けるのは無理そうだし。

 

「センさまは手を煩わせなくていい」

 

 結論を出したところで声。


「スティー」

「何だぁ?」

「私がセンさまの代わりを務める」

「自称従者が相手ねえ…悪くはなさそうだが、比べると物足りねーな」

「印象で力量を判断するつもり?」

「感覚で決めてるのは合ってるが、曖昧なもんじゃーー」

 

 侮ってるわけではなく根拠があると語るロクス。

 そこへ突如襲い掛かる、無数の極小な線。

 放ったのはスティーで至近距離、にも関わらず反応したロクスは後ろに飛び退いて事なきを得る。 


 更にスティーは手を振り、指先から幾筋も展開。

 時に角度を変えて変則的に伸びて迫るが、機敏な動きで対処するロクス。


「って、問答無用かよ!?」

 

 不意打ち含めて抗議するがそこに苛立ちはなく寧ろ、うきうきとした感じ。

 何だかんだ言いつつも干戈を交えることを喜んでいる。


「急に始めちゃいましたね…」

「ええ…スティーさんが扱ってらっしゃるのは糸、でしょうか? 細くて付近のしか視認できませんけれど…」

「みたいですね。魔法じゃなさそうですけど…私も薄らとしか見えません」


 俺たちは自然と並んで観戦する形になり、シルムとクランヌが目を凝らす。

 背景に溶け込みそうなほどに細く、距離が少しでも開くと同化しているよう。

 そして裏腹にも威力と耐久性を備えた針のごとき凶器。

 

 シルムの見解通り魔法で生成したものではなく、かといって道具でもない。

 考えられるのは能力によるものくらいだが…執着に糸の組み合わせ…あまり考えないようにしよう。


 …見学するのも刺激になる、手を加えて分かりやすくしよう…『コール』

 

「センお兄さん?」

「そちらは?」

「これは『露呈』…一言で言うと視認しやすくなるんだ」


 範囲内にいると視認性が向上。見辛いものが強調されて、罠があったら分かる効果も。

 実演した方が早い、距離だけ変更して地面に発射。


「おー、はっきり見えます!」

「仰る通り判別できるようになりましたわ…あら? 使用した糸、消えずに残留してますけれど…」

「はい、何か意味があるんでしょうか?」

「いいところに気付いたね。はったりの可能性もあるけど、警戒すべき」


 ピンと敵に向かって宙を走った後、弛緩して床に落ちてそのまま。

 スティーの匙加減というなら、残してるのは理由がある。


「それにしても…お二人とも過激ですわね。全く目で追えませんわ」

「…今の私じゃ、敵いそうにないですね」

「こればっかりは場数だからなあ」

 

 休みを与えない猛攻のスティと、ずっと回避を続けているロクス。

 繰り出される糸は数と速さが合わさり脅威、死角からの奇襲も織り混ぜられている。

 

 しかしロクスはそれらに危なげなく対応。 

 全身を使って安定した立ち回り…前は力に振り回され辿々しかったのに。


「ちょこまかと逃げてばかり」

「お話続きだったからな、ちょっとした準備運動だって」

「…調子に乗るな」


 首を回しながらの挑発にスティーが冷たく返すと、扱っている糸に変化。

 一つ一つ独立していたのを集約して帯を形作ると、鞭のようにしならせて振るう。

 ロクスが傾いて躱すと、床に叩きつけられた帯が衝撃を発し威力を物語る。

 

「へえ」


 平然と感嘆の声を漏らすロクス。

 点から面への攻撃に変わったことで、さっきみたいに避けられなくなったが…さて。

 スティーは両指とも同じようにして、左右から上下に分けて挟撃。


 間のロクスは止まったまま余裕を崩さずに、


「重そうな一撃だけどよ…屁でもねえって!」  


 勢いのついた横殴りを体で受け止める。


「しかもさっきより掴みやすいじゃねえか?」


 それからすかさず腕に当たった帯を掴むーー先に通じてるのはスティーの指。

 ロクスがぐいっと引っ張り、釣られてスティーが前に出される…そう思いきや。


「…っ!?」


 予想していた抵抗がなく、力を込めて引いたロクスが体勢を崩して目を見開く。

 スティーの指先と帯はまだ繋がって見える…瞬時に切り離したわけではなさそうだけど。

 

「残念、そう見せてるだけ。隙あり」


 淡々と言い放ち、帯と放っておいた糸を総動員。

 ロクスの上半身と膝あたりまで巻いて拘束。

 

「頑丈なのは知ってる。掴むように誘導した」

 

 明かしつつスティーは付近の宙に多量の糸を出し、螺旋を描いて先端を尖らせ槍の形状に。

 わざわざ指先から出してたのは騙す為だったよう。

 見入っていたシルムとクランヌが口を開く。


「勝負ありですかね?」

「身動きが取れそうにありませんものね」

「いや…」


 拘束されたのは想定外だったみたいだけど、スティーに思惑があるのは読んでいるはず。

 

「…なるほどな。こりゃ一本取られたわ」 

「降参するなら止めるけど」

「必要ねえ。搦め手使う相手には慣れてるからな…はっ!」


 ロクスが気合を発すると巻き付いていた糸が一斉に弾け飛び、瞬く間に自由の身に。


「あからさまだったからな、俺も備えておいたのさ。でもまさか捕まるとは思ってなかったから、そこは褒めてもいいぜ?」

「…手加減しすぎた」

「! 面白え…」


 スティーは殺意を具現化したような槍を増やし、ロクスは闘志を剥き出しにする。


「センお兄さん…」

「センさん…」

「うん、分かってる」


 片や段々と刺々しさを増し、片や熱を帯びて来ている。

 続けさせては大事に至る。

 それにこの空間は頑丈な方だけど、孤児院の裏を借りてるからな。


「スティー、止まって」

「! 了解」

「おいおい! またいいところでーーおおっ!?」


 抗議が来るのは想定済。ロクスに向けて出しておいたハンドガンで発砲。

 すると、着弾したロクスが吹き飛ばされる。

 

 使ったのは『吹飛』の魔弾…文字通り見ての通り吹き飛ばす。

 これ自体に殺傷力はないが、壁へ地面にぶつかれば当然怪我をする。

 まあ壁に激突して無傷のロクスなら、これくらい平気だろう。


 落ちる前に二の弾三の弾と放って浮かせ、お手玉状態にする。 


「ちょ、まっ…俺で遊ぶなーーっ!」


 空中を蹴って突っ込んで来たところを迎撃して打ち止めに。

 見事に着地したところで、先んじて口を開く。


「戦うの引き受けるよ。今のは挨拶と落ち着いてもらうためにやった」

「…あー、色々と言うつもりだったが、それなら構わねえ」


 あんな目に遭いながら溜飲を下げて笑ってみせる。

 自分でやっておいて何だけど気前がいい。

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