表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/142

114 セリバーツェル

読んで下さりありがとうございます。

「ここは私のですっ」


 空間に入って腰を下ろす手前、シルムはわざわざ宣言して俺の右隣を陣取る。

 そしてスティーに向けて勝ち気にふふんと挑発。

 あからさまな喧嘩腰に、今までの流れから対立する展開が頭を過るが。


「…ベタベタしないなら、好きにすればいい」

「えっ」


 スティーは張り合わずに素気なく注意だけ告げる。

 想定した通りにならず間の抜けた声を出し、きょとんと固まるシルム。

 

 それを余所にスティーはシルムの右隣に移動すると、そのまま床に座った。

 出来上がった並びは俺、シルム、スティーの順。

 

「ど、どうしてこっちに…?」


 対抗して俺の隣を取ると思ってたのか、続け様の意外な行動にたじろいでいる。

 

「ここならセンさまに盛る不逞の輩を止められる」

「…ああそういう狙いですか。どちらかというと私の方が壁になって止める役なんですが?」

「「……」」


 調子が狂っていたが悪者扱いをされたことで取り戻し、身を乗り出して切り返す。

 スティーは最初からシルムのことを警戒してたから、本心を述べているんだろうけど、全てではない。

 俺が視界に入ると原因不明の暴走が起きるので、間に挟むのは遮るためでもあるはず。


 シルムがどう解釈してるかは不明。

 とりあえず互いに牽制するだけに留め、先に踏み入ろうとする気配はない。

 二人には話がしたい旨を伝え、了承を得てるから私情を押し通すまでは行かない。

 

 …済んだ後どうなるかはさておき。


「お三方はそちらということなら、私はこちらで」

「とっとと済ませちまおーぜ」


 クランヌは俺の、ロクスはスティーの対面に。

 全員が座ったのを確認すると、すかさず切り出す。


「じゃあ始めるけど、クランヌが最初に少し時間が欲しいらしい」

 

 子供たちとの時間を過ごす途中、伝達を介して送られて来た要望。

 内容は、ポルドの裏との繋がりを示す証拠について時間を設けて下さいとあった。 

 俺とシルムに異論はなく、後はスティーたち。


 二人は居合わせてるけど、話に付き合う義理がなく参加するしないは自由だから、こっちの都合だけで進行するのは勝手。


「ええ、センさんたちには承諾頂いたのですが…構いませんか?」

「センさまがいいのなら」

「好きにしてくれ」

「ありがとうございます」


 申し出に対し二つ返事の即答だが、織り込み済みの反応だったのかクランヌは微笑みを浮かべ会釈。


「まず持って来て下さった契約書ですが、正式に受理されました。なのでポルド伯は…確実に今の立場を追われ、復帰はもう叶わないでしょう」

「そうか…朗報だな」


 今まで権力と秘密の方法で追及をのらりくらり躱して来たみたいだから、今回ももしかしたら、なんて思ったが杞憂だった。

 確固たる証拠を掴まれしまっては


「わー! 収まるべきとこに収まったって感じですねっ」

「手間が省けた」

「ヘマしちまったんだ、しゃーなしだろ」


 棘のあるシルム、でも遭った事件を考えるとまだ優しい方。

 ロクスは一応組んでいた相手なのに平坦な言葉。

 おおよそ納得の行く発言…唯一気がかりなのはスティー。


 俺と同じ考え…いやまさか、代行するつもりだったのか?

 法が機能せず、もし裁かれなかったときにはーー

 …そうならずに済みそうでよかった。


「このような事になり残念ではありますが…罪を償って頂くとして。こちらが本題なのですが…あの契約書はどちらで?」

「蒼然の森とかいうのを東に抜けた先の砦町」

「俺らが拠点として使ってた邸宅があんだよ。おっさんに提供されたのがな」

「それは妙ですわね…あちらにポルド伯の土地は無いはずですが」

「持ち主は別だぜ。色々と取り込んで顔が利くとか自慢してたな」

「そう、ですか」


 口元に手をやって思案顔になるクランヌ。


 ポルドには女性を手籠めにしていると噂があった。

 シルムとクランヌを狙って黒だと判明した今、信憑性は十分。

 得た伝を利用して裏での活動も行っていたということか。


「あちら側は…」

「何か思い当たる点が?」

「いえ、ただあの町は国境の近く…砦は魔物が跨ぐのを防ぐために設けられ、隣国からたびたび視察が訪れるのです。その隣国がどうにも…」

「隣国って、セリバーツェル国でしたっけ」

「そうですわ」


 セリバーツェル国…書庫で概要を目にした記憶がある。

 確かーー


「広大な土地に豊富な資源。特に鉱石が有名で、大半の武具はセリバーツェルで作られてる。それと相当な規模の軍隊を率いてるみてえだな」

 

 すらすら特徴について話したのは意外にもロクス。

 当人は独り言のつもりなのか、膝に肘をついて顔を支えてだらけている。

 一拍おき、周りから無言で視線を向けられることに気付く。


「なんだよ?」

「いやー、詳しいと思ってなかったので」

「見掛けによらない」

「そうでもねえだろ。武闘場があるんだからよ」

「あー、言われてみればそうですね」


 武闘場は名称から察せられるが、人同士で戦って武を競う施設。

 強い相手と戦うのが好きなロクスが把握しているのは当然と言えるか。

 武闘場は興行も兼ねていて盛況みたいだけど…ロクスが拘ってないのは、試合は出来ても死合いは出来ないからだろうな。


「大まかな内容はロクスさんが仰った通りです。問題なのは近頃、軍拡を推し進めているのです。ただでさえ規模があるにも関わらず…有事に備えるのは正しくはありますが…」


 クランヌのことだから、これは客観的な危惧。

 誰から見ても目に余るほどで指摘もあるだろう、しかし止めようとしない。

 軍、か……明言しないがクランヌも思っているはず。


「…戦争でも起こしそう?」

「ええっ! それが本当なら…」

「憶測ですわ。ですがセリバーツェルの不穏な動きと、偶然かもしれませんがポルド伯の手が及んでいるのは、気掛かりですわね」


 そう言ってクランヌはロクスの方に視線を向ける。

 有益な情報を持っていないか期待しての行為。

 意図に気付いたロクスは首を振って応じる。


「当てが外れたな。おっさんが俺ら以外に繋がりがあるのを知ってるってだけで、詳しいことはさっぱりだ」

「使えない」

「もっと役立って下さい、センお兄さんの手を煩わせたんですから」

「お前ら…容赦ねえな」


 本当は仲がいいのでは? と思わせる連携にロクスは呆れ気味。


「まあ仕方ないんじゃないか? 裏では情報は命みたいなものだし」


 大体が非合法な組織であると同時に、余所からすれば脅威や目障りでもある。

 そんな中で情報が筒抜けだったら、排除されるのがオチ。

 情報漏洩に関しては表より厳重。


「おうおう、セン様の方は分かってんな」

「契約書と出所を頂けただけでも十分ですわ。続きの調査は本人と関係者を当たります…これで私の用は済みましたので、センさんにお渡しします」


 クランヌの締め括りの一礼。

 めぼしい進展がないどころか、新たにセリバーツェル国の存在が浮上してしまったが…魔の手から守れてよかったとしておくか。


「うん。早速だけど、スティーに聞きたいことがある」

「むっ」

「何でも聞いてセンさま」


 少し頬を膨らませるシルムと、心なしか声が弾んでいるスティー。

 予てからの疑問。ごたつきが一段落した今、ようやく尋ねられる。


「率直に聞くけど…どうやって俺のもとに至った? 追おうとしても追えないはず」


 ゲートを破壊する仕掛けを施してこちらにやって来た。

 仮に機能したとしても起動するのに膨大な魔力、行き先だって定かではない。

 でもこうしてスティーは俺の目の前にいる、それが事実。 


「一言でいうと、私の能力のお陰」

「能力…」


 不可能としか思えない条件を満たす、一体どんなものなんだ…?


「センさまを正確に追えたのもそう」


 視線を俺から逸らしたまま続ける。


「私の能力『執着』によって」

評価・感想お待ちしてます。

ブックマークも励みになるのでお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ