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102 曲折

読んで下さりありがとうございます。


(共鳴の追跡が途絶えるか…弱ったな)


 当初の計画は、黒衣らが場を移して留まった所に奇襲をかけ撃破。

 ポルドとの関係を示す物証、あわよくば他所との繋がりも掴めたら上々というもの。

 しかし実際は一斉に消息不明、最初の段階で躓くことに。


 反応が消えたのは対策された、または落命。

 前者だとすると、逃れる術があるのに最初から施さないのは不可解だし、それに…変遷が妙なんだよな。

 

 黒衣たちは移動を続け、止まったと思ったら、すぐに動き始めてその直後ロスト。

 出発点から大して離れておらず、消える地点もタイミングも変。

 秘密の抜け道とかでも使ってない限り、あっちも不測の事態に直面したんじゃ…


 それが後者、端的に言って死。

 個人的な願望が含まれているのは否定しない、逃げられるくらいならその方がマシ。


 場所が場所だから、高ランクの魔物にでも出会したか、不興を買って待ち構えていた者に始末されたか。

 こっちこっちで奴らが容易に、しかも全員ほぼ同時に倒されるのか疑問ではある。


 どう転んだのやら。

 転移で近くに行って、現場へ急いで確認に向かっても徒労に終わるだろう。 

 狙いは破綻してしまった。


 となると…

 直前に別れを告げようとした相手、俺との戦いを望む戦闘狂の方を向く。


「なんだよ、止まって。俺に対する当て付けか? 行くなら行けばいいじゃねーか」


 素気無い応対に押しても無駄だと悟ってか、快活だった口振りがいじけたものに変わっている。

 すっかり邪魔者扱いだな…まああれだけ強硬にあしらえば当然か。 

 

 クランヌとポルドの応酬によれば、証言のみでも罪を問うには十分らしいけど…あっちには自信満々でいられるような謎の術がある。

 追い詰めるため、裏付けるものは多いに越したことはない。

 

 自信の領域下にあり、シルムたちを保護する『聖域』は俺と繋がっていて、侵入も破られてもおらず未だに健在。

 実際に無事かどうか確認したい所だが、この機会を逃せば次はなさそうだ。

 何だかんだ、意に沿う結果になったな…。 


「調子いいのは承知だが…さっきの言ってた契約書の在り処、教えて貰っても?」

「…なんだって? おいおい、それは」

「対価に一戦交えるんだろ。分かってる」

「さんざん撥ね付けてのに、どういう風の吹き回しだよ?」

「必要になった、それだけ。言ったように調子いいのは理解してる、嫌ならーー」

「ま、願ったり叶ったりだ、構わねーよ。んじゃ、やり合おうぜ」


 断られる覚悟をしていたが、黒衣は口角を吊り上げていそうな軽い調子で水に流す。

 俺としては助かるからいいけど…細かくブツブツ言う感じではないか。


「分かった、とりあえずーー」


 折角のやる気が冷めないよう快諾してから、周囲を見回す。

 気絶したままのポルド、複数の死体、流れ出た血。


「場所を変えようか」




「さーて、準備はいいか?」

「そっちこそ、取り決め守ってくれよ」

「わーってるって」


 いい加減な…抜け目なさそうだし大丈夫だろうけど。

 

 俺たちは玄関のホールへと移り、距離を置いて向き合っている。

 外だと広大な敷地内とはいえ、人目につくなどの懸念があるので結果、室内で広い空間の此処になった。

 他にも移動中に黒衣と協議し、戦闘の規則について簡単に決めた。

 

 互いに殺しは無し。

 報酬の情報を伝える側と聞く側、どちらも相手が欠けては成り立たなくなるので当然。

 黒衣は「アンタならそれでも楽しめそうだ」と言っていた。


 戦闘が継続出来なくなったら終了、勝敗に関わらず提供する約束。

 これといった強制力のない口約。

 不用心だが、反故にする卑怯な展開は想像がつかない。


「素手…格闘か」

「身体を振り回すのが性に合ってるからな。そっちは…見覚えのない道具を使ってたな。能力か?」

「そんなところ」


 生みの親は別にいて借り物だけど、ややこしいので濁しておく。

 言葉を交わし終えると、示し合わせたように空気が形成されて行く。


「ああ…これだよ…アンタに気を向けられたときに一瞬感じた、そして戦いぶりに上がった高揚…」


 恍惚とした雰囲気を滲ませ声と身体を震わす黒衣。

 感動とも取れる姿を前に俺は、 


(…油断ならないな)

 

 そう静かに集中する。


 構えもせず間抜けに映るが、挑んで来るだけあって感覚は危険だと訴えている。

 それに…誤解で一人乗り気になってたときより、程度が増してる…。

 はっきり言って、さっき戦った奴らとは比べものにならない、強敵ーー

 

「悪い、一つだけ断り入れとくわ」


 何故か、歩いて斜めに位置取りずつ、今度は申し訳なさそうな態度の黒衣。

 ころころ調子が変わって忙しい…一体なんだ?


「加減、できねーかも」

「…!」


 足を止めてそう口にした直後、合図もなしに突撃を仕掛けてくる。

 脅威の速さ、一部除いた弾丸の上を行く、まるで人間砲弾ーー。

 反射的に横へ飛んで距離を取る。


 すると、黒衣は止まる事なく勢いそのまま壁に向かって突っ込み、


 ズン!!


 壁を破壊、屋敷全体に響いてそうな衝撃を齎し、向こう側へ消えた。


「ええ…」


 強敵のはず、なんだけどな…。

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