始まりの物語〜終結、そしてコンビ結成〜
気がつくと目の前にはいつもの目隠しをした瞳がしゃがんでいた。
「結局…何が起こったんだ??」
「んーと…まず私の…能力…は!!っと」
倒れこんでいる俺を起こしながら話す。
「ただの能力者ではないんだよ。ドッペルゲンガーって知ってる??」
ドッペルゲンガー…確か怪異の中でも一番有名と言えば有名な現象だ。
たしか自分と瓜二つの存在に出会う事…だっけ。
「ドッペルゲンガーにも種類があって…会ってしまったら見て見ぬフリをする『関わらない者』共に生きようとする『共存する者』本物は私だー!!って言って『殺しにかかってくる者』…」
「お前は…どれと会ったんだ??」
「んー秘密。でも…瞳を奪われて…瞳を与えられた…かな」
意地悪そうにふふっと笑って答える瞳。
「何だそれ??結局答えになってねーよ」
分かった…こいつ…相当な説明下手なんだ。
「何よ!!ちゃんと説明くらいできるわよ!!」
まるで心まで見透かされたように彼女は答える。
「私は目が見えない。でも貴方の見ている世界が見える。うーうん、皆んなが見ている世界が見える。生き物であれば私は今、彼ら彼女らが何を見ているのか分かるのよ。ただし、半径1km県内に限るけどね。私はこの能力を怪異能力って呼んでるわ」
怪異能力…ねぇ…でもこれで1つの謎は解けた。俺を公園で見つけた理由、こいつがそこまで来れた理由。
そう…彼女は今も目隠しをしているが…見えている…誰かの視界を…まるでテレビでも見るかのように…。
「あぁ、それよりも竜二。貴方さっき私が起こしてあげる際どさくさに紛れて私の胸元見てたでしょ」
…あぁ見たよ…見えてしまったのだからしょうがないだろう…そう思いつつも。
「見てません」
嘘だ。
だけど霧音 瞳…お前は水野よりは胸は無い!!むしろ俺からしたら貧乳の部類だ!!
男たる者胸が大きい方が萌えるというのが当たり前だが…残念だ…お前はでは俺の心に火をつけることはできないよ。そう思いつつ次の質問をする。
「じゃあ…視界の話は分かった…後の…」
俺は倒れている雷の能力者に目をやる
「あぁ…それね。私はドッペルゲンガーの怪異に憑かれてるわけなんだけど目隠しを外すと相手からは私がドッペルゲンガーに見えるの。それはつまり…私は見て見ぬ側でも共存側でも…殺す側にでもなれるという事…じゃないかしら??今回は殺す一歩手前かなぁ。相手は雷の能力が使えた。私も彼になれば雷の能力が使える。ただし彼が私を見ていないとできないけどね」
成る程…つまり目隠しを外すと瞳は瞳見る者何にでもなれる。
だから雷陣だったとしても所有者である者になれば無傷で入って来られた…そして…
「最後、あいつが意識を失ったのはなんでだ??」
「ドッペルゲンガーって昔は魂を吸い取るために自分の死に際に現れる存在として恐れられていたの。その力…だと思うわ。私自身この力を100%知ってる訳じゃないし、使いこなせてるってわけじゃないの。ただ…この瞳を見ると意識を失うか…魂を…もってかれるのよ」
有耶無耶なかんじで話す瞳。
…確かに難はある…が。
「悪くない女だ…か??」
俺が思う前に彼女が話す。
「お前は心まで読めるのか??」
「読めるわけないじゃない貴方でもあるまいし」
そういうと笑って見せる。
「それよりも竜二…貴方…今プー太郎なのでしょ??だったら私達いいコンビになると思うの…まだ刑事として動きたいなら…共に怪異事件を追う探偵として働かない??」
だれがお前なんかと…と思うはずだった自分の心には既に別の答えがあった。
「そうだなぁ〜少女性的暴行未遂もあり刑事をクビにされたうえ、刑事として戻ったところで事件は内部で起こるようなこんな警察庁にいるのもなぁ〜…………」
じーっと瞳を見つめる。
「何かしら、自分を見ても私はあまり面白くないわ」
少しだけ頬が緩んだような気がした。
「いーや。刑事なんかで一人突っ走るより、こーんな可愛げもない冷徹な少女に飼い慣らされる人生も悪くないのかもなって思っただけだよ」
「それじゃぁ!!!」
瞳の顔が明るくなる。
「そうだなぁ。お前の事もちと気になるし、お前の目的も分からないまま俺の視界ばかり覗かれるのもたまったもんじゃない。いいぜ。組んでやるよ」
「ありがとー竜二!!」
初めて誕生日をプレゼントを貰った子供のように飛び跳ね抱きついてくる瞳にやれやれとポケットから携帯と取り出し佐々木に連絡を入れる。
「おー俺だ、今日から探偵やるわ。後、事件も解決した。瞳とも組む。今晩は豪勢な食事で頼むぜ〜」
連絡を終えると俺はその場からよっこらせと立ち上がる。
「あ、竜二…」
「どうした??行くぞ??」
モジモジとする瞳。
初めて見る仕草にちょっとだけ萌える。
「…おぶって…」
「…おぶらない…」
「なんでよ!!」
「こっちの台詞だなんでだよ!!」
俺はあくまで怪我人だ。瞳はピンピンしている。逆に俺がおぶって欲しいくらいだ。
「だって…ここの周り1km以内に貴方しかいないみたいだから私の道を示してくれるチャンネルが無いのよ。…ここに来るまでだって貴方、先走るから手探りで来たんだからね」
言われて見ると瞳の手は床を触ってだからだろうか黒く汚れていた。
「…あぁ…なんかすんません」
俺は仕方なく瞳をおぶり警視庁を後にした。
こうして竜二と瞳の探偵コンビは結成された。