【占い人形えーてるちゃん!】
【占い人形えーてるちゃん!】
朝の占い、見ます? わたしは欠かさず見てます! 1限に遅れようが関係なしです。1限眠くて出られません。大学当局は早急に1限を廃止してください。何人留年させるつもりですか。
そんなわたしの占い好きにも理由があります。まあ生まれつきなんですけど。でも今回の書き物は全部フィクションでいいよーってことだったんで、嘘をつきます! それは今から書くこういうエピソードがあったからです! 嘘です! 本当は嘘をついたらいけないんですよ! でも嘘か本当かで言うとどちらかというと人間って嘘にカテゴライズされそうじゃないですか? だから仕方ないですね!
さて何から話しましょう。って、やっぱりタイトルにもしたえーてるちゃんの話ですよね。何歳くらいのころにしようかな。じゃあ10歳! やっぱり8歳! そのころわたしはお人形遊びにハマりこんでいました。いや別に家計を圧迫するとかそういうレベルの話ではないんですけど。ところで8歳でお人形遊びってどうなんですか? 実際8歳のころ何してたんだっけ……。何してました? 思い出せなかったのでこのまま進めますね。
で、えーてるちゃんなんですけど。
えーてるちゃんっていうのはお人形の名前なんですけど。
えーてるちゃんはすごいお人形で、お腹を喋ると押しました。間違えました。お腹を喋ると押しました。あれ? お腹を押すと喋りました。よし。
どんな言葉を喋ったかと言えば、
『チョコレート美味しい』
『今日も良い天気だね』
『好きな人の名前を書いた消しゴムを使い切ると恋が叶う』
とかそんな感じで、もう思いつかないので他にも色々喋ったことにします。えーてるちゃんの外見については、書こうと思ったけど上手くいかなかったので書きません。でも見た目より中身が大事だって教科書とかに書いてあるから何の問題もないですよね!
わたしは毎朝、小学校に行く前にえーてるちゃんのお腹を押して何か喋ってもらうのが日課でした。わたしは日課を欠かすと落ち着かなくなってしまうタイプの人なので、もしも本当のことだったら確かに毎日欠かさず押したことでしょう。
だけど、わたしは一度もえーてるちゃんが同じことを言うのを聞いたことがなかったのです。すごいですね、えーてるちゃんの会話バリエーション。お話上手。だいたい人間だって1年もすれば同じようなことを2回以上喋るものだと思うんですけどね。会うたびに同じ話を繰り返す人とかいません? 迷走中なのかなっていうかそこまでいくと執念みたいなものを感じますよね。
そんな高性能お人形を与えられたら普通の子供は台詞被りが出るまでお腹を押しそうなものですけど、わたしは自制心の強いお子様だったので1日1回しか押さないで頑張っていました。自制心の強い人は1限に出席できる。はい。
あっ、もうオチになっちゃう。もっと日常とか生活をねっとり描写をしておけばよかった。そうすればこのへんでミョーに長ったらしくオチまでもったいつけるのもできたんだけど、うーん。でもせっかくここまで書いたんだしいまさらなあ。
えー、オチです。
あ、やっぱちょっと待った。関係ない話をして尺稼ぎします。
犬を飼ってたんですけど。
今のが伏線で、まずは図書館の話なんですけど。みなさんは図書館の本とかに書き込みするタイプの人ですか? もしかしたら今まで図書館の落書きとか見たことがないって幸運な人もいるかもしれませんし、わたしがありえないほどモラルのない人って誤解されないために言っておくと、割とうちの図書館の本には書き込みがされています。
蛍光ペンばっしばしで段落わけされてるやつとかふっつーにありますからね。信じられます? しかもその段落わけがまた下手で。わたしこの間取ろうかどうか迷ってる講義の教科書を図書館で借りて概要チェックしようと思ったんですけど、運悪くこれに当たっちゃって。そしたら全然話が理解できなくて突然頭が悪くなったのかと焦りました。新品の教科書買ったらなんてことなくわかりました。なので講義には出ていません。よくあんな読み方してて勉強できるなーとかえって感心する思いでした。嘘です。許しませんからね。
すっごい脱線しちゃってるんですけど、いや脱線してはいないんですけど、さっきのは普通にただの恨み言で、本題は別のタイプの書き込み本の話なんです。
蛍光ペンとかじゃなくて、普通に、いや普通ってなんだって話なんですけど、ボールペンの書き込みの話です。論文テーマなんだかレポート作成中なんだか知らないですけど文章中で疑問に思ったところにアンダーライン引いて『?』とか書き込むのやめてください。こっちが『?』です。あ、この話でもないです。
ポエムですよ! ポエム! ポエム書き込むのやめてください!
ピンとこない人もいるかもしれないですけど、あれです。学校の机とかに書いてあったやつ。ピンときました? 図書館の机とかにも書いてあるんですけど、『もうダメだ』とか『天国に行きたい』とか『死』とかそういうやつです。今これ実際図書館にいながら書いてて、近くの机うろちょろしてそのまま写したんですけどこの大学ろくな人いないような気がしますね。あとこの間その字のへこみの上にうっかりルーズリーフ直置きしちゃって致命的な破れ方しちゃってすっごい頭に来たんですけど、ところでこれ書くときって何を使ってるんですか? 彫刻刀? 普通そんなの持ち歩きます?
で、ポエムなんですけど。
本当に何を考えてそういうことするかわからないんですけど、本にポエムを書く人がいるんですね。ポジティブなポエムならまだしも、いや我慢はできないですけど、人を馬鹿にしたネガティブなポエムとかに直面すると世界の意味とか考えちゃいますね。いや本当にびっくりするほど気が滅入りますよ。本当に。一日の気力根こそぎ奪われます。
この間もまあうっかり開いた本にポエムが載ってまして。『One, Two, Three, みずいろらいと あなたの瞳 粒子の香り 不思議と透明』みたいなやつ。
これ読んだの実家だったんですけど。夏で、夕立で、雷が鳴ってて、湿気がすごいときだったんですけど。
ひえーってなったわけですよ。せっかく集中できそうだったのに、こう、部屋にいきなりお母さんが入って来ちゃったみたいな? そういうテンションの下がり方で、しかたないから階段降りてリビングで犬のお腹を撫でることにしたわけです。
こいつ肥えたなー、と撫でて思いました。うちの犬不思議と夏肥ゆるんですよね。もう顎の下とかでぶでぶでぶーんみたいな。かわいいでしょう。かわいいけどこりゃダイエットさせないかんなあと思ったわけです。で、まあよく見ると首輪もきつそうだったんで、室内では外したるか、とかちゃーっと取ったわけですよ。
そしたら首輪の裏にも『One, Two, Three, みずいろらいと あなたの瞳 粒子の香り 不思議と透明』って知らない人の字で刻まれてたわけですね。
わはは、どうだ怖かろう。
嘘だから安心してください。
じゃ! えーてるちゃんの話に戻りましょうか! そしていきなりオチです!
えーてるちゃんはある日言いました!
『ラッキーアイテムは傘』
と! なのでその日は晴れてたんですけどわたしは傘を持って学校に向かいました。折り畳みじゃないですよ。折り畳まないやつですよ。
学校に行く途中でコンビニに寄ったんですけど、あっ!設定上の矛盾らしきものが生じてしまった!
えー、でもどうなんですか? 小学生って学校に寄るときコンビニとか寄ります? わたし高校生の頃は毎朝コンビニで紙パックのジュース買ってから学校に行ってたんですけど、小学生ってそういう習慣あるんですか? わたしについての話になるとまったくそんな習性はなかったんですけど。でもじゃあ何で休み時間とか喉を潤してたんですかね? 乾ききった喉、人間性? 愛のない毎日?
まあいいや、このまま生きます。行きます。いきます。ひらがなって便利。
わたしはハイカラOL小学生だったので朝から200円くらいするおっしゃー(オシャレ)な感じの飲み物を買って学校へと向かいました。
横断歩道を渡ろうとしたところで、はたと気付きます。晴れてるので普通に傘をコンビニの傘立てに置きっぱなしにしちゃったんですよね。雨の日なら最初から最後まで雨で通せやいってもんですよね。でもこの日は最初から晴れてたのでその雨ルールが適用されたとしてもなんら効果ないですね。大丈夫? このあたりちゃんと意味の伝わる文章になってるます? 人間が意味を理解できるというのは幻想。はい。
うわっちゃっちゃちゃー、とわたしは華麗なステップで踵を返します。後ろ髪を鉄の塊が掠めます。突風が吹いて制服のスカートがはためきます。ワーオ、セクシー。あ、この設定だと制服着てない。……制服のある小学校だったんです。
脱線に脱線を重ねてまったく何が何だかわからなくなっちゃったような気がするのでパッとまとめてしまうと、えーてるちゃんに言われて傘を持っていったら、忘れたそれを取りに戻ろうとしたおかげでものすごい勢いで右折してきたトラックを間一髪回避できたって話です。ダメですよー、みなさんも安全運転を心がけましょうね。
で、この話、えーてるちゃんの存在は嘘なんですけど。
あったこと自体は別に嘘じゃなくて。
高校2年くらいの頃だったかなー。夏だったのははっきり覚えてるんですけど。知らないアドレスからメールが来て。わたし迷惑メール設定かなりがっちりしてたんで珍しいなー、と思ったんですけど。別に業者とかそういうのじゃなさそうで、なんだろ、ボトルメッセージみたいな? わたしのアドレスかなり単純なやつだったんでたまたま当たっちゃったんですかね。知らない人から知らない友達あてのメールみたいなのが届きまして。なんとなくわたしもそれに返信してみたんですよ。今考えると迂闊ですねー。みなさん真似しちゃダメですよ。
で、ある日、ラッキーアイテムは傘、ってメールが来たわけですね。脈絡も何もなく。あとはさっき語ったとおりで。
言葉にしちゃえばなんてことないただの偶然に思えるんですけど、実際直面してみるとなかなかオカルティック?メルヘン?な気分になるもので。
それからぷっつり連絡の途絶えたそのアドレス、実はまだ携帯のメモリに残ってるんですけど。
どうするのがいいと思います?
(文:ダイエットとは体重を一時的に減らす過酷な追い込みではなく、自然とベストな体型を維持できる生活環境を整えること。そんなことはわかっているのだ……)




