食事中に
「ありちゃんごめんね‥‥僕になにも力がなくて‥‥」
俺はこの言葉をアリスに向けたあと、気を失い、それ以降はもう覚えていなかった。
「我ながらなかなか酷い昔話だな‥‥」
一人で笑う俺。
「なに笑ってんの?気持ち悪いよ?」
突然俺の部屋のドアを開けて姉さんが入ってきた。
せめてノックくらいしてほしい‥‥。
「ノックはしてくれ」
この言葉ももうたくさん言っているが学習してくれなかった、いや聞いてくれなかった。
「はいはいー」
いつも姉さんはそうやって返事をする。
この家は俺と姉さんの二人暮らしだが、昔の事件もあって金がたくさん入ったのだ、まあ、口封じのためでもあるのだろう、何かを隠そうとしていたからな。
「今日はあんたの好きなからあげだぜ!食べるかい?」
エプロンをかけたまま、そしてしゃもじを持ったまま俺の部屋に来ていた、そして用件は結局ごはんの報告。
「そっか、ありがとう、行こう」
俺は立ち上がり、部屋の電気を消し姉さんと下の階に向かった。
「そう言えば、いのりちゃんとはどうなのかしら~?」
姉さんはよくこの話題を口に出す。
いのりとは何もないのに。
「まあ、幼馴染み程度。」
悲しくも幼馴染み程度だ。
まあ、何もない。
「そっかぁ~」
姉さんは残念そうな顔をして、
舌打ちをした。
「ちゃっかり舌打ちすんなし
てか、姉さんこそ学校どうなんさ?」
姉さんは今、大学3年生だ。
俺が今、高校1年生だからまあ、それなりの年の差がある。
「楽しいよ~、けれどやっぱ魔女の動きが活発になってきてるみたいだから魔女授業には力いれてるみたいかな」
魔女授業には、やっぱり最近力を入れている学校が多いようだ。うちの学校もその一つだ。
魔女授業とは魔女の生態、魔法、そしてその対策などの研究を含めた授業だ。
「魔女だって普通の人間なんだから仲良くできないのかねぇ~」
姉さんはゆういつ魔女の事を差別しない人の一人だ。
まあ、その理由とはアリスと会ったことがあるからと言った。
「アリスちゃん本当に残念だよね
生きていれば私、絶対仲良くなれると思うのになぁ~」
俺が姉さんを逃がしたとき、アリスに俺の居場所を聞かれたそうだ、そして姉さんは俺の場所を答えた。
そしたらアリスは姉さんを安全なところまで飛ばしてくれたそうだ。
テレポートみたいな感覚と姉さんは言っていたが。
「まあ、アリスがいなくなってから急にいのりちゃんが来たからねぇ~」
そう、いのりとはずっと小さい頃からいたわけではなかった。アリスがいなくなってから少ししてから引っ越してきたのだ。
「てか、今回の唐揚げは当たりだね、姉さん」
たまに、姉さんの唐揚げは外れを引く、
その1‥‥醤油を入れすぎるため。
その2‥‥生姜を入れすぎるため。
こんなところかな?
「いつも外れってわけじゃないよ?まったく
食わせてやってるんだから文句を言わない!」
まあ、その通りかもしれないな。
食わせてやってるんだから。